サーモグラフィの欠点をカバー!導入・運用で失敗しない4つのコツ
対象に接触せずに温度分布を可視化できる「サーモグラフィ」
導入・運用している企業も増えていますが、サーモグラフィには注意すべき欠点があることをご存じでしょうか。
本記事は、サーモグラフィの導入・運用を検討している企業の経営者や担当者の方に向けて、サーモグラフィの欠点を解説する記事です。
さらに、サーモグラフィの欠点をカバーして、運用・導入で失敗しないためのコツを4つ紹介します。
サーモグラフィの導入方法についても言及していますので、サーモグラフィの導入・運用を具体的に検討したい方はぜひ参考にしてください。
目次
サーモグラフィとは?
サーモグラフィとは、物体から放射されている赤外線を検知して、対象の表面温度を可視化する装置です。
対象の表面温度を色分けすることによって、数字ではなく色で温度を確かめられます。
サーモグラフィの特徴がこちらです。
- ・一定の距離を保って非接触で測定可能
- ・広範囲に存在する複数の対象を、同時に測定できる
- ・対象の温度変化がリアルタイムにわかる
- ・対象の温度上昇(下降)をモニタリングできる
- ・暗闇や視界不良の現場でも運用可能
サーモグラフィの測定原理
サーモグラフィが検知する赤外線とは、温度のあるすべての物体から放射されている電磁波の1種です。
赤外線には熱を効率良く伝える性質があり、赤外線ヒーターや食品の殺菌などの日常生活にも活用されています。
サーモグラフィは、そのような赤外線エネルギーを検知し、温度に換算する装置です。
温度が高い箇所を赤色などの暖色、温度が低い所を青色などの寒色で色分けすることで、温度分布を数字ではなく色で映し出します。
その結果として、私たちはサーモグラフィを使用することで対象の温度分布を一目で確認できるのです。
サーモグラフィの活用事例
サーモグラフィの登場によって、対象の温度の高い箇所や低い箇所を、映像によって特定できるようになりました。
現在、サーモグラフィは電気設備の点検や建築物の不良箇所の特定、欠損部位の特定などに活用されています。
- ・外壁タイルの浮き
- ・断熱材の破損調査
- ・床暖房の液漏れの有無を調査
- ・屋根や外壁の漏水診断
- ・ソーラーパネルで作動していないパネルの特定
- ・分電盤の漏電
サーモグラフィは対象から離れた場所から非接触で測定できる装置です。そのため以下のようなシーンでも活用されています。
- ・医療現場での健診
- ・医療現場や公共施設などでの感染症対策
赤外線を検知して測定する仕組みは、光源がない暗闇での撮影も実現できます。
- ・国境や海岸の警備
- ・夜間や天候不良の現場監視
サーモグラフィの欠点
さまざまなシーンで活用されているサーモグラフィですが、4つの欠点があります。
- ・内部の温度を測定できない
- ・ガラス越しの測定は不可
- ・角度がついていると正確な測定が困難
- ・表面状態や材質によって結果が変わる
それぞれみていきましょう。
内部の温度を測定できない
サーモグラフィで測定できるのは、対象の表面温度までです。
例えば、人間の体温を測りたい場合は、衣服から露出している肌部分の温度測定は可能ですが、肌が露出していない体表面や体内部の温度までは測定できません。
また、外の気温が低かったり雨や雪によって体表面が冷えていたりすると、対象の表面温度が下がるため、正確な体温を把握できないといった欠点があります。
ガラス越しの測定は不可
サーモグラフィでは、ガラス越しの測定はできません。
なぜなら、ガラスや石英といった材質には、サーモグラフィが検知している赤外線の波長を通さない性質があるからです。
サーモグラフィは、赤外線の中でも電波に近い「遠赤外線」という赤外線を利用しています。
<赤外線の種類と波長>
赤外線の種類 | 波長 |
近赤外線 | 0.7~2.5マイクロメートル |
中赤外線 | 2.5~4マイクロメートル |
遠赤外線 | 4~1,000マイクロメートル |
サーモグラフィでは赤外線を検知できないと、対象の温度を測定できません。したがってガラス越しの測定は不可となります。
角度がついていると正確な測定が困難
観察対象が湾曲していたり対象の撮影に角度がついていたりすると、測定と関りのないエネルギーを検知しまって、観測結果に誤差が生じる可能性があります。
サーモグラフィが検知する赤外線エネルギーには、3つのエネルギーがあると考えられています。
- ・物体から放射された「放射エネルギー」
- ・対象から跳ね返ってきた「反射エネルギー」
- ・「対象を透過されてきたエネルギー」
ここで問題となるのが、サーモグラフィが全ての赤外線エネルギーを精密に測定できるわけではないことです。どの赤外線エネルギーが観察対象の赤外線エネルギーで、どの赤外線エネルギーが関係のない赤外線エネルギーなのかを精度よく測定することがむずしいのです。
表面状態や材質によって結果が変わる
サーモグラフィでは、対象の熱を検知し温度に換算する際に、「放射率」によって数値を補正しています。
しかし、放射率は測定対象の状態によって数値が変化してしまうため、表面状態や材質が異なると、測定結果が変動してしまい正確な結果を測定できないケースがあります。
放射率については、こちらの「サーモグラフィーとは?仕組みや原理、サーマルカメラとの違いなど」を参考にしてください。
サーモグラフィの導入・運用を失敗しないコツ4選
サーモグラフィの欠点を把握した上で、失敗せずに導入・運用するコツを解説します。
- ・導入目的を確認する
- ・用途に合った機種を選ぶ
- ・設置条件に気を配る
- ・データ解析ができる環境を整える
導入目的を確認する
はじめにサーモグラフィの導入目的を確認しましょう。
自社の課題や達成したい目標にとって、サーモグラフィの導入が適切かどうかを判断します。
サーモグラフィは高価な精密機械のため、1台あたりの価格が一般的なカメラに比べて高額です。
複数台のサーモグラフィを導入するとなれば、導入費用だけでも少なくない費用が発生するでしょう。
導入する前に、「サーモグラフィで本当に課題を解決できるか」「サーモグラフィ以外に解決できる方法はないか」といった議題について、再度検討することをおすすめします。
用途に合った機種を選ぶ
サーモグラフィは、測定温度の範囲や測定感度など、性能や大きさによって複数の機種が存在します。
サーモグラフィの用途に合わせて適切な機種を選ぶと、費用対効果が高まるでしょう。
サーモグラフィの機種選びで参考にしたいポイントがこちらです。
- ・熱画像解像度
- ・温度分解能
- ・フレームレート
- ・測定温度範囲
- ・形状
- ・画像モード
- ・その他機能
例えば、ショッピングモールやイベント会場などで感染症対策にサーモグラフィを活用したい場合なら、高速計測が可能な設置型のタイプを選ぶとよいでしょう。
機種に応じて本体価格も異なるため、用途に合わせたカメラを選んでください。
なお、サーモグラフィの選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「サーモグラフィ選びの重要ポイント7選!実施できる検査も紹介」
設置条件に気を配る
サーモグラフィを運用する際は、設置条件にも気を配りましょう。
もしも対象との距離が一定ではなかったり、周囲に熱源などがあったりすると、測定結果が変化してしまうかもしれません。
屋外に設置する際は、直射日光や外気温、天気などに注意してみてください。屋外に設置する際も、測定に影響をあたえる障害がないか確認してから測定を開始しましょう。
データ解析ができる環境を整える
サーモグラフィは、数値ではなく温度の色分布によってデータ分析ができるため、専門知識がない人でも運用できます。
しかし、サーモグラフィの特性に応じた撮影方法やサーモグラフィ本体の設定を適切に行えなければ、正確なデータを入手できないかもしれません。
サーモグラフィで入手したデータを解析できる人材や環境を整えておくと、運用後の解析がスムーズになります。
サーモグラフィの導入方法
サーモグラフィは「購入」または「レンタル」によって導入できます。両者のメリット・デメリットをチェックしましょう。
購入
サーモグラフィを購入するメリットは以下の通りです。
- ・レンタルで扱っていない機器も手に入る
- ・メーカー保証がつく
- ・中長期的に運用する場合、費用対効果を高められる
他にも、購入したサーモグラフィは自社の資産となるため、好きなタイミングでサーモグラフィを運用できます。
購入した場合のデメリットですが、導入費用が高額になることやメンテナンスの手間と費用が発生することが挙げられます。
商品が破損したりすれば、入れ替えにコストも発生するでしょう。
レンタル
サーモグラフィをレンタルするメリットは以下の通りです。
- ・用途に合わせた機種を選定してもらえる
- ・撮影方法について提案を受けられる
- ・撮影後の解析について相談できる
レンタルでサーモグラフィを導入・運用する一番のデメリットは、レンタル費用が発生することでしょう。
1日ごとにレンタル料金が発生するケースが一般的です。
仮に1日2万円とすると3日で6万円、10日で20万円になります。
また、レンタル会社が取り扱っている商品しかレンタルできないため、自社が望むような機種がないおそれもあります。
サーモグラフィの欠点を把握して適切な運用を
最後に、サーモグラフィの欠点を振り返りましょう。
- ・対象の内部温度を把握できない
- ・ガラス越しの測定はできない
- ・角度がついていると正確な測定が困難
- ・表面状態や材質によって結果が変わる
サーモグラフィを適切に運用するためには、以上のような欠点を理解しておく必要があります。
しかし、サーモグラフィには「非接触で温度測定ができる」「複数の対象の温度測定を同時にできる」といった長所があるのも事実です。
サーモグラフィ導入に興味のある方や現在検討している方は、ぜひ長所と欠点をそれぞれ確認していただき、自社に最適な運用につなげてください。
なお、スリーアールソリューションでは、高品質のサーモグラフィを複数提供しています。
壁掛けで利用できる「3R-TMC05 体表面温度測定サーマルカメラ」や高精度AIを活用し多人数の同時測定も可能な「3R-TMC04 体表面温度測定サーマルカメラ」。
手のひらをかざせば0.5秒で測定してくれる「3R-NCT02WT スグッピ 非接触温度計」など、さまざまな機種をご提供しています。
サーモグラフィの製品情報を確認したい方や検討段階の方は、ぜひ弊社までお問い合わせください。