顕微鏡には9つの観察方法がある!それぞれの観察対象についても解説
顕微鏡は、肉眼では確認することができない小さな世界を映しだしてくれます。
現在は小学校の授業や、研究・開発の現場で活用されている機器が一般的です。
業種内容によっては、高い性能の顕微鏡や手軽に検査できるタイプなど、用途に合った機器の導入を検討している方もいるのではないでしょうか。
各顕微鏡の観察方法をしっかりと把握することで、業種に応じた機器を導入できます。
今回は、顕微鏡に関する観察方法や適している観察対象物などについて解説。
管理方法や活躍している業種などについても解説するので、ご自身の職場に導入する際の参考にしてください。
目次
顕微鏡とは
顕微鏡は、検査対象物によってさまざまな種類に分類されます。
金属を専門に観察する「金属顕微鏡」や、生物の観察に適している「生物顕微鏡」などです。
検査物によって種類が分類される顕微鏡ですが、基本的には透過光によって観察を行います。
顕微鏡を使うことにより、人間が肉眼では確認することのできない世界を覗き見ることができるようになりました。
昨今では、教育現場や医療、医薬品開発の研究・開発、病院の検査、精密機械の部品を開発するシーンなどで導入されています。
顕微鏡は一般的に活用する機会は少ないものの、医薬品や精密機械などに使われているため、私たちの生活に広く浸透しているといえるでしょう。
顕微鏡の原理:対象物に光を当てて観察する
顕微鏡の原理は、基本的には透過光を利用して観察物を確認します。
金属顕微鏡や生物顕微鏡などによっても、機器に使われる部品は細かく異なりますが、対物レンズ、接眼レンズ、反射鏡などを調整しながら観察します。
観察対象物は、ステージと呼ばれる部位にセットされ、接眼レンズや対物レンズを通して拡大。
皮膚細胞の働きを拡大しながら確認したり、精密機械の組み立てや創傷の確認をしたり、肉眼での作業をサポートしてくれるのです。
関連記事:顕微鏡で物体を拡大して観察できる仕組みとは?基本原理から詳しく解説
顕微鏡の構成:接眼レンズ・ステージ・鏡筒など
顕微鏡には一般的に、対物レンズ、接眼レンズ、ステージ、反射鏡、鏡筒などのパーツが使用されています。
デジタル顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡などの場合、液晶モニターや短波長レーザー光源などの専属機器が利用されている違いが見受けられます。
しかし基本的には、観察物をステージに設置し、対物レンズや接眼レンズなどを調整して観察する方法は大きく変わりません。
顕微鏡の種類
顕微鏡と一言でいっても、検査対象物によってさまざまな種類に分類されます。
代表的な顕微鏡は、以下の種類です。
- ・デジタル顕微鏡
- ・生物顕微鏡
- ・金属顕微鏡
- ・実体顕微鏡
- ・その他顕微鏡など
デジタル顕微鏡
デジタル顕微鏡は、光学レンズを使用している光学顕微鏡と同じジャンルの顕微鏡です。
複数の対物レンズを使用することにより、単レンズ型の顕微鏡に比べて観察対象物の拡大性が飛躍的に向上しました。
この光学レンズを使用することにより、従来の顕微鏡と比較して100倍、200倍、場合によっては300倍以上も拡大できるようになったのです。
また、デジタル顕微鏡は液晶モニターを見ながら観察することができます。
従来の光学顕微鏡や生物顕微鏡は、接眼レンズを覗いて観察するスタイルが一般的でした。
しかしデジタル顕微鏡は、接眼レンズを覗かなくても大きな液晶モニターで簡単に確認できるため、作業効率も向上します。
生物顕微鏡
生物顕微鏡は、細胞の働きや細胞の破片を観察したい場合に最適な機器です。
光学顕微鏡の一種であり、複数の対物レンズを活用しながら10倍〜1,000倍以上もの拡大観察を可能にしました。
実体顕微鏡とも精通しているポイントがいくつかありますが、生物顕微鏡は小学校・中学校の理科の授業で広く導入されています。
主には、植物の細胞や動物の細胞、プランクトンなどをの観察に使用されることが多いです。
金属顕微鏡
金属顕微鏡は、一般的な顕微鏡と同じように、観察対象物をステージに設置して上方から観察するタイプの機器です。
レボルバーによりレンズ倍率を中倍率〜高倍率に変更できる顕微鏡であり、観察対象物は金属組織以外にも対応可能。
解像度が高いため、細かな観察作業を行いたい職種に向いています。
また、さまざまなフィルターが取り揃えられている関係から、観察できる範囲にも定評があります。
ほかの顕微鏡と比較して、1台あたりの値段が100万円〜300万円台とやや金額が高価な傾向もありますが、観察性に優れたタイプです。
その他顕微鏡
上記以外にも測定顕微鏡や立体顕微鏡、蛍光顕微鏡、実体顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、共焦点蛍光顕微鏡などのさまざまな種類が販売されています。
例えば共焦点レーザー顕微鏡は、レーザー共焦点光学系と呼ばれレーザーを用いることで高コントラストでの観察を実現したタイプ。
高い安定性と、クリアな解像度が特徴的な顕微鏡となっています。
そのほかAFM(Atomic Force Microscope)と呼ばれる、日本語では原子力顕微鏡と呼ばれるタイプも存在します。
このように顕微鏡は、観察対象物や用途によって、さまざまな種類に分類されるので各機器の特徴をしっかりと把握してから導入を検討しましょう。
このほか顕微鏡の種類についてさらに詳しく知りたい方は「顕微鏡の種類や特徴を徹底解説!用途や顕微鏡選びのポイントも紹介」の記事も参考にしてください。
顕微鏡の観察方法と観察対象
前述のように顕微鏡は、観察対象物によって検査機器や検査方法が異なります。
以下では、顕微鏡を代表する9つの観察方法を紹介。
併せて主な観察対象物も解説しますので、導入する際の参考にしてください。
- ・明視野観察法
- ・分散観察法
- ・蛍光観察法
- ・反射照明観察法
- ・偏光観察法
- ・変調コントラスト(レリーフコントラスト)観察法
- ・微分干渉観察法
- ・位相差観察法
- ・暗視野観察法
明視野観察法
明視野観察法は、生物顕微鏡を活用した一般的な観察方法です。
観察対象物を直接光で照らした後に、反射光や透過光によって詳しく観察作業を行います。
プレパラートに動物や植物などの組織破片をセッティングします。
観察対象物を照らす光や、波長、強度の差によって観察するため、ほかの観察方法と比較して明るいのが特徴です。
なお、明視野観察法による一般的な観察対象物は、動物や植物などの細胞、生体です。
分散観察法
分散観察法は、観察対象物をインデックスオイルと呼ばれる専用薬品に浸けてから観察する方法です。
インデックスオイルにしっかりと浸して封入した後は、オイルに対する光の屈折率の違い活用。
光がオイルを通過して、どのくらい分散するのかという現象を利用して観察します。
具体的な活用シーンとしては、アスベストを検出する現場などで活用されています。
分散観察法の検査対象物はアスベストであり、アスベストの種類を同定する際に用いられるのが一般的です。
蛍光観察法
蛍光観察法は、観察対象物をGFPや蛍光化合物などの蛍光タンパク質で染めて、観察時に蛍光する部分を観察する方法です。
検査対象物の分子に、蛍光観察法に不可欠な特定の光(励起光)を当てることにより、観察したい部分を強調して映しだしてくれます。
検査対象物が蛍光タンパク質の光に当たることで、光エネルギーを吸収するため、励起状態になる現象を利用。
その後、元の基底状態に落ち着く過程で、蛍光して光を放つ現象を活用して観察する手法です。
蛍光観察法の対象は、蛍光色素を塗布した物体、組織、細胞です。
または、自家蛍光する生体などが検査対象となります。
反射照明観察法
反射照明観察法は、透過光を利用せずに、反射光を用いて観察する手法です。
類似する観察方法には、反射暗視野観察法、反射微分干渉観察法、反射明視野観察法などが挙げられます。
反射照明観察法は、鉱物や岩石、コンクリートなどのように光を通しにくい性質を持つ検査対象物に有効的な観察方法。
主な検査対象物は、岩石、鉱物、コンクリート、金属類などです。
偏光観察法
偏光観察法は、偏光と呼ばれる光の振動方向が偏る性質・現象を用いた観察方法です。
偏光する専用の照明を活用して観察対象物を照らしながら、偏向板を回転させることで詳しく観察。
一般的にはポラライザー、アナライザーの2種類の偏光板、専用体対物レンズを用います。
偏光観察法では、岩石、鉱物、結晶、高分子、繊維、骨組織、半導体などの幅広い観察対象物の観察に対応可能です。
変調コントラスト(レリーフコントラスト)観察法
変調コントラスト(レリーフコントラスト)観察法は、色彩を持たない透明な観察対象物の観察に適した観察方法です。
部分干渉観察方法や位相差観察法などと同じように、特殊は方法により観察します。
変調コントラスト観察法の場合は、観察対象物の高低差を明暗コントラストで変調させて、その差異を観察。
なお、変調コントラスト観察方法は、プラスチック容器の細胞、精子、卵細胞の観察に適しています。
微分干渉観察法
微分干渉観察法は、変調コントラスト観察法や位相差観察法と同様に、無色透明の観察対象物を観察するのに適した観察方法です。
微分干渉観察法の具体的な観察方法は、光の進行方向の違い(光路差)を明暗コントラストで変調させて観察します。
一方の位相差観察法の場合は、光が屈折・回折する現象を利用して観察。
なお、対物レンズに「DIC」と表記されている場合は、微分干渉観察法が効果的です。
比較的厚みのある観察対象物に向いている関係から、生きている細胞や、無色透明の観察物を観察できます。
位相差観察法
位相差観察法は、光が回折する現象を利用した観察方法です。
位相差と呼ばれる光がズレる現象が発見されたことで、位相差観察法は誕生しました。
無色透明な観察対象物の観察が可能な具体的な理由は、無色透明な細胞や生物組織でも部分的な厚みや屈折率が異なるため、明暗のコントラストを変えることで観察。
このことにより、従来は暗視野で観察していた細胞も、明視野で詳しく観察できるようになったのです。
なお、位相差観察法で観察できる対象物は、無色透明の物体や生きている細胞などです。
暗視野観察法
暗視野観察方法は、光の透過・反射・回折・散乱する現象を捉えて対物レンズで観察する方法です。
具体的には、光が観察対象物にあたって回折・散乱した光を対物レンズに入れこんで観察します。
また、光学顕微鏡の解像度を超える、微小な部分の観察にも適しているのが特徴。
明視野での観察では、識別が困難な無色透明な検査対象物や、生きた動植物の細胞観察に適しています。
顕微鏡が利用されている業種
顕微鏡が利用されている業種は、研究機関や医療機関、教育機関など多岐にわたります。
現役で活躍している事例を把握することで、それぞれの職場に導入する際にイメージが沸きやすくなるのではないでしょうか。
顕微鏡の導入を検討されている場合は、ぜひご参照ください。
研究機関
研究機関によっては、高性能な顕微鏡を導入しているところも珍しくありません。
国内外の研究所や大学から、一般的な顕微鏡での観察が難しい観察対象物が多く持ち込まれるケースもあります。
研究機関では、主に細胞内小器官の研究やバクテリアに関する研究、細胞内のオートファジーに関する研究など、あらゆる検査を実施。
研究機関では、光学顕微鏡をはじめとしたさまざまな顕微鏡が活躍しています。
大学・医療機関
大学・医療機関では、治療レポートの作成、細胞内の超微形態の観察、手術に用いる顕微鏡などが活躍しています。
また、大学や医療機関によっては、最先端設備や特殊な顕微鏡、特徴的な機器も数多く完備。
そのほか医療分野以外にも、原子分解能電子顕微鏡の開発や、金属、セラミック、デバイス、磁石などの精密機械類に特化した顕微鏡を取り扱っています。
教育機関
小学校や中学校で広く導入されている顕微鏡は、一般的には生物顕微鏡と呼ばれる機器です。
学生時代、理科の授業で学校の池の中で採取したアオミドロや昆虫、植物の細胞などを観察した方も多いのではないでしょうか。
教育機関では、扱いやすいタイプとしてスタンダートな形の顕微鏡が導入されていることが多く、現在でも顕微鏡が活躍する代表的な現場の1つです。
顕微鏡を使用する際の注意点
顕微鏡は精密機械なので、取り扱い方法や保管場所、メンテナンス方法などを誤ると故障の原因になります。
高性能な機器になるほど価格帯も高くなるため、特殊な顕微鏡については特に取り扱いや保管場所に注意しなければいけません。
顕微鏡は、基本的にどのタイプでも湿気やホコリ、振動などが多い場所での保管に注意してください。
例えば電車の本数が多い沿線の事業所や研究所、現場の場合、朝から晩まで軽い振動にさらされます。
定期的に起動して、正常に機能するかをチェックして対処しましょう。
また、保管する環境によっては、カビが生えたりレンズ類が腐食して観察作業に支障が出たりします。
そのほか、ステージの破損や各種部品の劣化、光軸の狂いなども考えられます。
顕微鏡は湿度が安定していて、比較的清潔な場所で保管するのがベスト。
取り扱い時や持ち運び時も、主軸と顕微鏡の底の部分を両手で抱えながら、大切に扱うことを心がけると、長期的な使用が可能です。
まとめ:顕微鏡は種類によって観察方法がさまざまなので用途に応じて選びましょう
顕微鏡は、観察する対象物や観察する方法によってさまざまな種類を選択できます。
代表的な観察方法には、位相差観察法、明視野観察法、暗視野観察法などを含む9種類が存在。
顕微鏡機器の種類にも、デジタル顕微鏡や金属顕微鏡、生物顕微鏡、実体顕微鏡などのさまざまな種類に分けることができます。
研究開発機関、医療機関、教育機関の場で活用されるケースが多く、医薬品開発や医療以外に精密機械の部品開発の場でも活躍。
顕微鏡は、どのタイプでも高温多湿な環境や振動が継続する場所での保管に弱いです。
湿度が安定している清潔な場所で保管してあげることにより、本来の性能を長期的に発揮してくれます。
検査対象物や検査方法によってそれぞれの業種に適した顕微鏡が異なります。ぜひ今回ご紹介した顕微鏡を参考に、各事業所に最適な1台を選ぶ参考にしていただければ幸いです。