コンクリートの非破壊検査とは?種類や方法、測定機器について解説
コンクリートは、長年の経年劣化や自然災害などによって損傷が生じてくるため、コンクリート損傷を早期に発見し修繕することが大切です。
そこでコンクリート構造物の劣化や老朽化を早期発見するため必要になるのが、非破壊検査です。
今回は、コンクリートの非破壊検査の種類や方法、そして測定機器について紹介します。
コンクリートにおける非破壊検査では
- ・検査のための許可を得る手続き
- ・適切な測定機器の選定
- ・正確な結果を得るための測定方法
など、さまざまな注意点もありますので本記事で理解を深めてください。
目次
コンクリートの非破壊検査の種類
コンクリートの非破壊検査にもさまざまな種類があります。
ここでは、コンクリートにおける非破壊検査の種類について紹介していきます。
検査方法についてお悩みの方は参考にしてください。
目視・打診調査
建物の経年劣化診断の一次診断として取り入れられることが多い目視・打診調査があります。
目視によってコンクリートのひび割れや劣化状況を確認します。
同時に目視では見えない内部の劣化状況を確認するために、打診棒やハンマーなど壁に当て、その反響音の違いにより調査を行う方法です。
まず、おおまかな状況を把握したい場合によく利用されています。
反発硬度法
反発硬度法は、構造体を傷つけたくない場合によく利用される方法です。
リバウンドハンマーやコンクリートテストハンマー、シュミットハンマーなど使用して調査します。
調査のやり方は、コンクリート表面を打撃し反発強度を測定することでコンクリートの強度状況を調べていきます。
構造体を解体することなく効率的に強度を推定していくことができるのが特徴です。
電磁波レーダー法
電磁波レーダ法とは、送信アンテナから電磁波を放射し、コンクリート内部の電気的性質(比誘電率)の異なる材質(鉄筋、空洞、非金属管)の境界面での反射波を利用してコンクリート内部を探査する方法です。
電磁波レーダーを用いた検査は物体を壊すことのない非破壊検査であり、エックス線検査のような危険な放射線も使用しない為、幅広く使用されています。
電磁誘導法
電磁誘導法とは、鉄筋に電流を流して発生する磁場の変化を検出することで、コンクリート中の鉄筋の位置や厚みを検出する非破壊検査方法です。
コンクリートの内の配筋やかぶり、厚さを調べることができます。
超音波探傷法
超音波探傷法は、超音波を用いてコンクリートの内部欠陥を検出する方法です。
超音波をコンクリート内部に送信し、反射波を観測することで欠陥の位置や深さを特定します。
超音波探傷法はコンクリートの欠陥検出に非常に有効であり、早期に欠陥を発見することが可能です。
非破壊であるため、コンクリートの損傷を最小限に抑える特徴があります。
ラジオグラフィー法
ラジオグラフィー法は、X線を用いてコンクリートの内部欠陥を可視化する方法です。
この方法では、X線を照射してコンクリート中の異常部分に反応させます。
その反応を検出し画像化することで、コンクリート内部の欠陥を見つけていく仕組みです。
ラジオグラフィー法は、コンクリートの厚さや密度の異なる部分を見分けることができ、補修箇所の特定や耐久性評価にも利用されています。
衝撃弾性波法
衝撃弾性波法とは、コンクリートの厚みや欠陥などを非破壊的に調査する方法です。
コンクリート表面に鋼球やハンマーなどで打撃を与えて弾性波を入力し、加速度センサで観測した波形の特徴から推定します。
コンクリートの物性や損傷の程度を評価するのに有効です。
自然電位法
自然電位法とは、コンクリート内の鋼材の腐食の程度や発生を推定する電気化学的方法です。
鋼材表面の電位を照合電極と比較して測定します。
コンクリート構造物の腐食劣化の初期段階での診断に効果的です。
圧縮強度試験
圧縮強度試験とは、材料や製品がどれだけの力に耐えられるかを測定する試験です。
コンクリートの場合は、硬化したコンクリート試験体に圧縮荷重をかけて破壊することで強度を求めます。
圧縮強度試験はコンクリートの品質や性能を評価するために使用される方法です。
ソフトコアリング
ソフトコアリングとは、建築構造物のコンクリート強度を測定するために、直径20mm程度の小径コアを抜き出して圧縮試験を行う方法です。
従来の100mm程度のコアに比べて構造物への影響が少なく、調査工期やコストも削減できるという利点があります。
振動や騒音が少なく構造物への負荷も少ないのが特徴です。
中性化深さ試験
中性化深さ試験とは、コンクリートの中性化の程度を測る試験です。
中性化とは、コンクリートが二酸化炭素や水分などによってアルカリ性が低下する現象です。
中性化が進むとコンクリート内の鉄筋が腐食しやすくなります。
中性化深さ試験では、構造物から採取したコアにフェノールフタレインを噴射し、中性化深さを測定していきます。
鉄筋腐食度調査
鉄筋腐食度調査とは、コンクリート構造物の鉄筋の腐食状況を評価する調査です。
鉄筋の腐食は、コンクリートの中性化や塩害などによって引き起こされます。
鉄筋腐食度調査には、代表的なもので「自然電位法」と「はつり法」があります。
自然電位法では、鉄筋の電位を測定することで腐食の有無や程度を測定。
はつり法では、コンクリートを削り取って鉄筋を露出させ、その表面状態を観察します。
付着力引張試験
付着力引張試験とは、塗装材やビスなどの付着強さを測定する試験方法です。
引張試験器という機器を使って、被試験物に一定の荷重を加えて引っ張ります。
そのときに発生する応力やひずみを記録し、材料の特性や品質を判断する方法です。
塩化物含有量測定試験
塩化物含有量測定試験とは、コンクリートなどの材料に含まれる塩化物イオンの濃度を測定する試験です。
塩化物イオンは、鉄筋の腐食を促進する原因となるため、品質管理や耐久性評価に重要です。
測定方法には、湿式分析法とEPMA法があります。
湿式分析法は、コンクリートコアをスライスして粉砕し、塩化物イオン濃度を滴定法で測定スル方法です。
EPMA法は、コンクリートコアの断面に電子ビームを照射して塩化物イオン濃度分布を測定します。
コンクリートの非破壊検査の測定機器
コンクリートの非破壊検査には、超音波探傷器、ラジオグラフィー装置、インパクトエコーテスター、電気インピーダンス計などの測定機器が使われます。
それぞれの機器には特性があり、測定する項目や目的によって適した機器を選択する必要があります。
測定機器の正しい取り扱いや適切な校正、保守管理が重要であり、信頼性の高い測定結果を得るためには適切な測定機器の選択と適切な取り扱いが必要です。
以下でコンクリートの非破壊検査で主に使用する測定機器について紹介します。
超音波探傷器
超音波探傷器は、コンクリートの内部欠陥を検出するために使用される測定機器の一つです。
超音波を発生させ、コンクリート内部を伝播する音波を検出することで、コンクリート中の欠陥や割れなどの異常部分を探知することができます。
この機器は、非破壊検査の分野で広く使用されており、建築物や橋などのコンクリート構造物の維持管理や修繕に役立っています。
超音波探傷器による検査は、短時間で行えるのも特徴です。
破壊的な検査ではないため、コンクリート構造物の寿命を延ばすことができます。
ラジオグラフィー装置
ラジオグラフィー装置は、X線を用いてコンクリートの内部欠陥を可視化する測定機器です。
コンクリートの内部には、鉄筋や配管などが埋め込まれており、それらの位置や状態を確認するために使用されています。
ラジオグラフィー法は、被検査物にX線を照射し、その透過像を観察することで欠陥部分の位置や大きさを把握します。
コンクリートの内部欠陥だけでなく、鉄筋の腐食状態や位置なども確認することも可能です。
ただしX線を使用するため、放射線被曝による健康被害が懸念されます。
そのため、適切な装備や技術を持った専門家による適切な操作が求めらることがあります。
インパクトエコーテスター
インパクトエコーテスターは、コンクリートの強度を推定するための非破壊検査測定機器です。
この測定機器は、インパクト(衝撃)を与え反射波を測定することで、コンクリートの強度を推定します。
機器の先端にあるピストンをコンクリートの表面に押し当て打撃を与えます。その後、反射波を検知し、測定機器が反応するまでの時間を計測する方法です。
この時間から、コンクリートの強度や表面の欠陥の有無を推定することができます。
インパクトエコーテスターは、建築物や橋梁、道路などのコンクリート構造物の非破壊検査に広く利用されています。
コンクリートの表面に傷をつけることがなく、素早く正確な結果を得ることができることが特徴です。
電気インピーダンス計
電気インピーダンス計は、電極をコンクリートに接触させ、電気の通り方を測定することでコンクリートの状態を推定する測定機器です。
コンクリート中を伝わる電流の周波数や位相角の変化から、コンクリート内部の欠陥や水分量、強度などを非破壊的に評価することができます。
また、測定結果はグラフや数値として表示されるため、解析しやすいのが特徴です。
電気インピーダンス計は、コンクリート構造物の診断や品質管理に広く利用されています。
コンクリートの非破壊検査の注意点
コンクリートの非破壊検査を実施する際は、いくつかの注意点があるので紹介していきます。
以降の注意点を考慮し、コンクリートの非破壊検査に取り組んでみましょう。
検査範囲を正確に把握すること
コンクリートの非破壊検査を行う際には、検査範囲を正確に把握することが重要です。
具体的には、検査対象物の範囲や構造を事前に把握し、検査方法や検査機器を適切に選定する必要があります。
また、検査の精度や信頼性を確保するためには、検査範囲を過剰に広げないように注意することが必要です。
特に検査範囲を決定する際には、コンクリートの性質や材料の種類、構造物の目的や使用状況、維持管理の歴史などを考慮することが大切です。
検査範囲を正確に把握することで、非破壊検査の精度を高め、コンクリートの劣化や欠陥を早期に発見することができます。
検査のための許可を取得すること
コンクリートの非破壊検査は、建物や施設の所有者や管理者などから許可を得て行う必要があります。
許可を得るためには、検査の目的や範囲、期間、検査方法などを明確に説明し、事前に相手と調整することが重要です。
場合によっては、法令や規則に基づいた手続きが必要になることもありますので、事前に確認することが必要です。
検査の許可を得ることで、不必要なトラブルや訴訟などを避けるよう注意しましょう。
測定機器を適切に使い、正確な結果を得ること
コンクリートの非破壊検査において、適切な測定機器を使用し、正確な結果を得ることが重要です。
測定機器を選ぶ際には、検査対象物や検査目的に合わせて適切な測定機器を選定する必要があります。
また、正確な結果を得るためには、測定機器の取扱説明書に従って正しく操作することも大切です。
しかし、測定機器の精度や性能によって測定可能な範囲が異なるため、それを把握して測定することが大切です。
測定機器を正確に使うためには、適切な訓練や技能が必要になる場合もあります。
また、測定機器を定期的に校正することで、正確な結果を得ることができます。
正しい測定を行うために、測定機器の使用方法や取り扱い方法について確認し、正確な測定を行うように心がけましょう。
まとめ:コンクリートの非破壊検査には適切な測定機器が大切
コンクリートの非破壊検査は、建物や構造物の安全性や維持管理に欠かせない重要な作業です。
適切な検査方法を選ぶためには、目的や範囲、状況に合わせて検査計画を立てる必要があります。
コンクリートの非破壊検査で正確な結果を得るためには、適切な測定機器を選び、正しく操作することが大切です。
測定機器の精度や性能によって、測定可能な範囲が異なります。
事前に、測定機器の特性を把握してから測定することも大切です。
今回お伝えした内容を参考に、コンクリートの非破壊検査に役立ててみましょう。
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お客様の検査目的や状況に合わせて、最適な測定機器を提供し、正確な測定をサポートしています。
測定機器関連でお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。