工業用内視鏡とは?使用用途や機能を解説!
工業用内視鏡とは、細い箇所や狭い部分など、人の目では目視できないような箇所の状態を確認できる機器のことをいいます。
工業用内視鏡は航空機や自動車のエンジン内部、発電所のタービン内部など、人が入ることができない箇所の確認を担い、重大事故の防止に一役を買っています。
これから工業用内視鏡の導入を検討されている企業様の中には、どのような種類の内視鏡を選べばよいのかわからない方や、そもそも工業用内視鏡が必要かどうかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
本記事では、工業用内視鏡の概要や、使用用途、種類を解説します。
工業用内視鏡とは?
世の中の様々な仕事を支えている工業用内視鏡。
工業用内視鏡とは、人が直接見ることができない場所の状態を確認して問題箇所を発見できる機器のことをいいます。
内視鏡というと、医療用で使用する胃カメラなどの内視鏡を思い浮かべる方も多いかもしれません。
工業用内視鏡の場合は、一般的には線の一端にはカメラを、もう一端からはカメラの映像を確認することができるスコープのことを指します。
各分野によって使用される種類は様々ですが、工業用内視鏡は主にファイバースコープ、ビデオスコープ、硬性鏡の三種類に分類されます。
モニタ画面でリアルタイムの映像を確認できる現在主流のビデオスコープが普及するまでは、肉眼で見るファイバ―スコープが内視鏡の代名詞でした。
しかし現代では技術の進化も進み、超小型撮像素子をスコープ先端に配置ができるようになったため、主流がファイバースコープからビデオスコープに移り変わっています。
ファイバースコープの「ファイバー」は光ファイバーのことで、光を内視鏡の先端から反対端まで通すための素材です。
ファイバースコープは柔らかくて曲げることのできることが特徴で、このように柔軟性をもった曲げることができる内視鏡を「軟性鏡」といいます。
それに対して、曲げられない素材を使用した内視鏡のことを「硬性鏡」といいます。
現代の内視鏡は、本体に高画質のカメラが設置され、動画を確認できるものであったり、スマートフォンなどの画面に映像を映すことができる、現代機器に沿ったものも存在します。
工業用内視鏡は、主に自動車のエンジン部分の点検や、発電所のタービン内部、航空機内部、発電機など、重大な事故を未然に防ぐための設備点検に使用されることが一般的で、わたしたちの生活の安全を守る一役を買っている道具といえるでしょう。
工業用内視鏡の種類
工業用内視鏡は、「ファイバースコープ」「ビデオスコープ」「硬性鏡」の三種類に分類されていると先述しましたが、この三種類にどのような違いや特徴があるのか、下記で見ていきましょう。
ファイバースコープ
一つ目にご紹介するのは、ファイバースコープです。
透過性の高い石英ガラスやプラスチックで作られた光ファイバーを束ねて、一端にレンズを、もう一端には接眼レンズを取り付けたものの総称をいいます。
ファイバースコープは、先端から取り入れた画像を、もう一端から見ることができる器械です。
光ファイバーは管が細く柔軟であるので、見る対象の内部が曲がっていても、隙間から挿入をして内部の画像をカメラを通して見ることができることがメリットとして挙げられます。
光ファイバーの一本一本がカメラの目の役割となる為、六角形のハニカム構造状の画像として確認可能です。
ファイバースコープは主に、配管やダクトの内部や建築物の構造上目の届かない場所、他には検査を目的として用いられる胃カメラなどの医療機器として使用されています。
ビデオスコープ
続いては、ビデオスコープです。
ビデオスコープは、個体映像素子CCD(Charge Coupled Device)を使用したビデオカメラを内視鏡に取り入れた装置のことをいいます。
ファイバースコープでは、光の伝達限度があったため光ファイバーの長さに限界がありました。
しかし、ビデオスコープはケーブルを使用して映像を伝達することから、ファイバースコープ以上の長さを実装することが可能となり、内視鏡の使用用途が増えるきっかけとなったのです。
スコープにビデオカメラを搭載することで、モニタでリアルタイムの映像を確認できるほか、静止画像や動画の記録もできるようになりました。
また、これまで主流だったファイバースコープではハニカム構造の画像を確認できますが、画素が荒いのが難点でした。
ビデオスコープは、取り付けられているCCDの解像度がファイバースコープの数十倍から数百倍あり、より高画質で詳細に観察できます。
医療分野において、ビデオスコープが主流となる以前は、熟練の医師が患者の臓器内部を確認するしか方法がありませんでしたが、ビデオスコープにより、装置を操る医師以外も確認することができるようになりました。
医師一人しか臓器内部を確認できなかった頃は見落としなども発生しうる状況でしたが、複数人が確認できるようになったことで診断の精度が上がるきっかけになったのです。
ビデオスコープが開発されたことにより医療業界がより発展し、また、多方面で応用がなされるきっかけとなっています。
例えば、10m以上離れた箇所のパイプや空洞の検査、目視では確認できない機械の内部の調査などには、ビデオスコープの使用が適しています。
2005年頃からは、ランプを使用した代わりにLED証明を搭載することで、バッテリーの消費を抑えることができたり、耐久性が増したりするなどより機能性も向上しています。
硬性鏡(ボアスコープ)
最後に、硬性鏡(こうせいきょう)です。
硬性鏡はボアスコープとも呼ばれ、ファイバースコープなどの軟性鏡に対して、硬く、曲がらない内視鏡です。
具体的には、金属チューブの中に映像を伝達するリレーレンズと呼ばれる光学系と、光を電波するライドガイドの双方を配置した光学レンズで構成された内視鏡です。
スコープの先端から光を出すために外部の光源装置が必要です。
そのため、映像を確認する場合には、ライトガイドケーブルを通してスコープ先端に光を送ります。
太さは小さいもので1mm以下、長さは1mを超えるものなど多岐に渡ります。
視野方向は多様で、チューブから真っ直ぐ先を見る直視型や、チューブの斜め前方を見る前方斜視型、チューブの横方向を見る側視型、チューブの斜め後方を見る後方斜視型などがあり、状況に応じてカスタマイズすることが可能です。
硬性鏡は光学レンズがついているため、ファイバースコープに比べて光を通す量が格段に増えるのが特徴です。
ファイバースコープのような軟性鏡は、柔軟性に富んでいるので、狭く入り組んだ箇所を観察するのに適していますが、対して硬性鏡は、曲がらない性質を持っているため、広い空間を全体的に確認するのに適しているのが特徴です。
工業用内視鏡の使用用途について
工業用内視鏡は、製造業界や食品業界、設備業界など多方面で使用されています。
使用用途の具体例を弊社スリーアールソリューションの導入事例をもとに説明します。
製造業界
- 生産技術課……
先端可動式の内視鏡が使用され、消火器の内部の溶接面の確認に好んで使用されています。ピンホールなどがよく見えることが特徴です。 - 金属製品製造メーカー……
缶内の異物混入のチェックや機械間の計器の点検に使用されています。モニターと内視鏡本体を別々に使えることが特徴です。 - 車両技術を取り扱う部署……
トラックのフロント部分の液漏れを確認するために使用されています。
食品業界
- 飲料メーカーの品質管理部……
先端可動式の内視鏡が使用され、蒸留タンクから排出タンクまでの管内の汚れを確認するために使用されています。可動式を使う事で、スムーズに管内へ挿入できるため時間の短縮につながっています。 - 醤油メーカーの品質管理部……
醤油を入れたタンクの中の点検に使用されています。LEDライトを補助的に使うことで、タンク内部を明るく確認することが可能となっています。
設備業界
- メンテナンス部署……
先端可動式の内視鏡が使用され、低圧電動機(モーター)内のメンテナンスに活用されています。異音発生時の原因特定。異物などの除去が目的です。 - 鉄鋼系企業 製造部……
約3mの高さがあるタンクの底にあるバルブにゴミが詰まっていないかどうかの点検に使用されています。 内視鏡の先にLEDライトを取り付けることでバルブ奥のフランジまでしっかり見ることができることが特徴です。
上記以外にも、工業部品内部の点検、溶接個所の裏側の点検、航空機や自動車のエンジン内部、発電所のタービン内部など、人が入ることができない箇所の確認に内視鏡が役立てられています。
内視鏡を使用すれば、材料の破断・ひび割れ確認、さびの発生、不具合など非破壊で検査が可能です。
人々の裏側で安全を守ってくれている道具の一つであるといえるでしょう。
工業用内視鏡の機能
工業用内視鏡の概要や種類を確認しましたが、内視鏡の中にはどのような特徴を持つものがあるのでしょうか?
続いて、工業用内視鏡の機能面について見てみましょう。
工業用内視鏡には、ただ一端から画像や映像を確認するものだけでなく、スティック操作で先端を360度湾曲させることができるものがあります。
一方向しか映像を確認できなかったのが、先端を可動できることによって、機械の内部や隙間など様々な箇所でフレキシブルに観察することが可能となります。
また、ズーム機能が備わっていたり、先端部に高輝度LED照明が搭載されていてライトの明るさを任意に設定できたりするものも存在します。
中にはスマートフォンに取り付けられるものや、持ち運びができるようアルカリ乾電池やバッテリが搭載されている種類もあります。
多くの製品では、PCやTVモニタへの映像データ出力も可能なので、映像を共有することが可能です。
工業用内視鏡の多様性
つづいて、工業用内視鏡の多様性について述べていきます。
工業用内視鏡はどのような業界で使用され、活用されているのでしょうか?
下記で確認していきましょう。
①自動車、航空機、鉄道、船舶分野
エンジン、油圧部品、噴射ノズル、タービンなどの内部検査に使用されています。
②電力分野
原子力、火力発電所の復水器、配管、タービンなど目視で確認できない部分の保守点検に使用されています。
③インフラ分野
水道パイプ、ガス設備の配管の錆、腐食、詰まりの点検など、配管検査に使用されています。
④土木・建築分野
橋梁のメンテナンス、鉄骨診断、人が入れない床下や天井裏の観察に使用されています。
わたしたちの生活を支えている工業用内視鏡
わたしたちの身近なインフラや自動車、航空機などは、様々な検査を繰り返し重ねることによって成り立っています。
細部や、狭い空間など人間の目視では確認できない箇所の点検は、工業用内視鏡によって点検が行われています。
様々な生活の安全は、工業用内視鏡による安全検査によって守られているといっても過言ではありません。
日々の業務の中で、点検やメンテナンスなど工業用内視鏡を必要とする企業様は、この機会に用途や目的に合わせた内視鏡選びをしてみるのもいいかもしれません。