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非破壊検査が可能な浸透探傷試験(PT)とは?種類や検査方法など

一般的に認知されている非破壊検査の一つに、空港の搭乗口やイベント・コンサートなどで行われている手荷物検査があります。

ほかにも自動車や航空機などの製造業界や、土木・建築業界でも検査物を破壊せずに検査できるため、広く活用されている方法です。

しかし、一口に非破壊検査と言ってもさまざまな種類が存在します。

各事業に最適な検査機器を購入するにも、非破壊検査の概要を把握していなければ最善の選択はできません。

なかには、作業効率の向上を図るために新たに非破壊検査を導入しようと検討しているが、種類がわからずに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

非破壊検査の一つ、浸透探傷試験(PT)は汎用性に優れた検査です。

本記事では、広い分野で活用できる非破壊検査方法として、「浸透探傷試験(PT)」に関する内容や種類、検査手順について解説するので、業務を効率化させるための参考にしてください。

非破壊検査導入ガイドブック

非破壊検査できる浸透探傷試験(PT)とは

非破壊検査の一種である浸透探傷試験(PT)とは、Liquid Penetrant Testingの頭文字を取った略称で、浸透性に優れた検査液を検査物の表面に塗布し、亀裂や細かな傷創跡を検出する検査方法です。

浸透探傷試験(PT)による非破壊検査の大きな特徴は、検体を破壊する必要がないため、廃棄物を減らせる点。

主に金属品を検査する際に用いられますが、非鉄金属や一部プラスチックなどの金属以外でも対応できる汎用性も持ち合わせています。

以下で、非破壊検査が可能な浸透探傷試験(PT)の種類や装置などについて解説します。

さまざまな種類の探傷剤(探傷液)がある

浸透探傷試験(PT)では、さまざまな探傷剤が使い分けられています。

具体的には、以下のような探傷剤(探傷液)が使用されています。

  • ・染色浸透探傷剤
  • ・分離型浸透探傷剤
  • ・漏洩検査剤
  • ・蛍光浸透探傷剤

浸透探傷試験(PT)は、検査物の表面に浸透率に優れた検査剤を塗布し、表面の傷創を確認しやすくするための方法であり、金属素材から非金属まで幅広く使用できます。

また、乳化剤や速乾式現像剤、除光液(洗浄液)湿式現像剤などを併用することで、さらに幅広い分野での検査が可能になる汎用性の高さも特徴的です。

複数の規格の探傷装置がある

浸透探傷試験(PT)が導入されている場面は、自動車や鉄道、航空機、化学プラント、原子力プラントなどの幅広い諸工業業界がメインです。

また非破壊検査である浸透探傷試験(PT)には、探傷剤による試験のほかに、大型の探傷試験装置を用いての高精度な検査を行う場合もあります。

なお、浸透探傷試験による非破壊検査では、以下の規格が採用されています。

  • ISO規格 : (International Organization for Standardization:国際標準化機構)
  • JIS規格 : (Japan Industrial Standards:日本産業規格)
  • ASTM規格 : (American Society for Testing and Materials:米国材料試験協会)
    など

なかには、高い検査技術が求められる航空機産業などでは、浸透探傷試験(PT)や磁気探傷試験(MT)による航空機検査資格取得のための訓練装置として使用されているケースもあります。

非破壊検査「浸透探傷試験(PT)」のメリット

浸透探傷試験(PT)の大きな特徴の1つは、検査物を壊すことなく調査できるため、検査後にもそのまま使用できる点にあります。

該当箇所を破壊して内部構造を確認する検査方法だと、破壊(解体)作業と修復(修繕)を行う工程が発生するため、作業時間も増えてしまいます。

しかし、浸透探傷試験(PT)による非破壊検査であれば、破壊・修復作業の必要がないため時間効率も向上します。

その他にも非破壊検査で傷創を確認した場合には、修復のみで作業工程が済むため、産業廃棄物の量を抑えて環境にも効果的だといえるでしょう。

浸透探傷試験(PT)では、比較的スムーズに検査が終わるケースもあり、難易度が高くない点もメリットです。

浸透探傷試験(PT)の検査方法や流れ

非破壊で検査可能な浸透探傷試験(PT)には、主に大型機器を使用する方法と、探傷剤(探傷液)を用いる方法との2種類の検査があります。

以下で、広く一般的に実践できる探傷剤を用いた検査方法の流れを解説しますので、各事業内容に導入できるか想定しながら確認してください。

  1. 1.事前準備
      検査前に簡易的な清掃作業を行い、検体の表面に付着した汚れを除去する

  2. 2.探傷剤(探傷液)を塗布
      浸透性に優れた探傷剤が、検体表面の亀裂や傷創に浸透するまで待機する

  3. 3.検体表面の傷創に浸透した探傷剤の除去作業
      溶剤除去性浸透剤を使用した検査の場合は、除去剤を染み込ませたウエスで拭き取る

  4. 4.水洗浄による検査剤の除去
      検体の傷創に浸透せずに表面に付着した、余分な検査剤をシャワーなどで洗い流す

  5. 5.現像剤(感光剤)を傷創部分に塗布
      水洗浄後、光などに反応して傷創部分を目立たせる現像剤を検体に薄く塗布

  6. 6.観察作業
      傷創に浸透した探傷剤が、現像剤に吸い出されるので肉眼で細かく確認する

注意点として、金属素材やプラスチックをはじめとした非金属素材など、さまざまな材料に広く活用できる浸透探傷検査(PT)ですが、スポンジなどの吸収性の高い多孔質素材には使用できません。

また、探傷剤の塗布によって一部プラスチックには腐食や変色などの悪影響が生じる可能性があるため、検査前に必ず確認するようにしましょう。

浸透探傷試験(PT)が活用される場面

非破壊検査が可能な浸透探傷試験(PT)は、作業工数や検査費用を抑えたり環境への配慮もできたりします。

社会的メリットがあることからも、幅広い業界で用いられている検査です。

私たちの日常生活にも、深く関わっている検査方法でもあるため、以下の利用シーンを参考に、各事業所での導入を想定して確認してください。

輸送機器製造業界

浸透探傷試験(PT)は、自動車や船舶、航空機、宇宙産業機器、鉄道など人が移動するために使用する、あらゆるビークル産業で活用されています。

輸送機器などを製造する業界では、小さな欠陥でも大規模な事故へとつながりかねません。

最悪の場合では、軽微な傷創が人命に関わる重大な事故へと発展する可能性もあるため、効率よく細かな検査に適している浸透探傷試験(PT)が広く用いられています。

インフラ業界

輸送機器の製造業界に関わらず、道路や橋梁、水道、その他建築物などのインフラ業界においても、非破壊で詳細な検査が行える浸透探傷試験(PT)は重宝されています。

特に土木・建築業界では、工事期間中に排出される排気ガス量などが長年問題視されてきました。

非破壊検査の導入により、少なからず産業廃棄物やガスの排出量が抑えられるため、SDGsの観点からも効果的だといえます。

また、橋梁部分の骨組みやコンクリート内、水中、土中などのあらゆる検査箇所でも、非破壊検査であればPT以外にも幅広い検査方法で対応できます。

その他

輸送機器業界や土木・建築などのインフラ業界以外にも、非破壊検査による浸透探傷試験は私たちの生活に深く関わっています。

例えば、アミューズメントパークのジェットコースターや観覧車などの各種アトラクションの点検時にも適しています。

簡易的に検査できるほか、細かな部分まで確認できる浸透探傷試験(PT)は、さまざまな業界で活用されているため、ぜひ各事業所でも導入を検討してみてください。

非破壊検査「浸透探傷試験(PT)」の種類

探傷剤(探傷液)を使用する浸透探傷剤試験(PT)には、除光剤や乳化剤などを併用した検査方法があります。

それぞれの用途や検査場面などを把握することで、各事業所に最適な浸透探傷試験(PT)方法が把握できるため、導入する際の参考に以下の試験方法をご確認ください。

水洗性染色浸透探傷試験

水洗性染色浸透探傷試験は、検体の表面に赤色浸透剤を塗布し、除去剤で拭き取った後に傷創の有無を確認する方法です。

コンクリート建築物のように表面の仕上がりが粗くゴツゴツした検体や、船舶などの大型の検査物を調べる際に適しています。

水洗性蛍光浸透探傷試験

水洗性蛍光浸透探傷試験は、検査物の表面に蛍光浸透剤を塗布した後に、シャワーなどで水洗除去して傷創の確認作業を行う検査方法です。

量産型の細かな部品や、大型の検査物、表面の凹凸や模様が複雑に製造されている検査物を調べる際に向いています。

自動探傷による、検査作業の効率化を図りたい事業者にも適しているといえるでしょう。

溶剤除去性染色浸透探傷試験

溶剤除去性染色浸透探傷試験は、検体の表面に赤色浸透剤を塗布した後、除去剤で拭き取りながら部分的な細かい焦燥や亀裂を検査する方です。

また、ほかの試験とは異なり、比較的明るい場所でも検査できるほか、電気設備や水洗作業の必要がないため現場検査などに適しています。

浸透探傷試験(PT)のなかでも、広く行われている検査方法です。

溶剤除去性蛍光浸透探傷試験

蛍光浸透剤を検査物の表面に塗布し、除去剤で拭き取りながら傷創などを確認する検査方法です。

検査物の表面にできた、目視確認が困難な細かい傷創や亀裂を確認したい場合に用いられています。

後乳化性蛍光浸透探傷試験

後乳化性蛍光浸透探傷試験とは、後乳化性蛍光浸透剤を検査物の表面に塗布し、傷創箇所を細かく確認する作業です。

肉眼での確認が困難な、検査物の表面に発生した細かな傷創を見つけ出すのに向いています。

検査作業を行う一部の業界で採用されている方法であり、一例を挙げると、航空機器部品などを検査する際に用いられています。

浸透探傷試験(PT)以外の非破壊検査の種類

非破壊検査のなかには、浸透探傷試験(PT)以外の検査方法もあります。

それぞれの違いを把握して各事業所に適したタイプを選ぶと作業が効率化されます。

試験種類

検査方法

超音波探傷試験

(UT:Ultrasonic Test)

超音波を利用して、反射速度や範囲をもとに傷創の度合いを確認する試験方法

磁気探傷試験

(MT:Magnetic Test)

磁気を利用して、検査物の表面上の細かな傷創を確認する試験方法

放射線透過試験

(RT:Radiographic Test)

物体を透過するX線やガンマ線を利用して、欠損部分などを確認する検査方法

電磁誘導探傷試験
(ET:Eddy Current Test)

電気回路コイルを利用して、交流回路の変化をもとに欠損部分を発見する検査法方法

スンプ法

(SUMP:Suzuki's Universal Micro Printing Method)

金属顕微鏡試験を行った後、検査物の表面をアセチルセルロース膜に写して光学顕微鏡で傷創などを確認する方法

アコースティック・エミッション

(AE:Acoustic Emission)

金属の弾性波を利用して、検査物の亀裂位置などを検出する方法

まとめ:PTかそれ以外か、状況に応じて非破壊検査の種類選択を

非破壊検査によって、環境面に配慮しながら作業できる浸透探傷試験(PT)は、比較的スムーズな検査が可能なため広く活用されています。

浸透探傷試験(PT)が導入されている主な業界は、輸送機器業界、土木・建築業界、インフラ・エネルギー業界など。

また、非破壊検査には、今回解説した浸透探傷試験(PT)以外にも超音波や磁気、放射線などを活用したさまざまな検査方法があります。

それぞれ非破壊検査方法の特徴や用途を把握することで、それぞれの事業所に適した検査法を採用できるため、作業効率の向上にもつながるといえるでしょう。

ぜひ今回の内容を参考に、生産性を高めてくれる最適な非破壊検査方法を導入検討してみてはいかがでしょうか。

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