【水質検査の義務】11項目はどのような時に行うのか?16項目との違い
水質検査は、飲食店や温泉などの商業施設をメインに実施されています。
食中毒や水を介した感染症などを未然に防ぐ目的で実施されることが多いです。
法律でも義務化されているため、事業者の方は十分に注意しなければいけません。
しかし、水質検査では最大51項目からなる細かな検査を実施されており、水質検査に関する法律を理解できずに困っている事業者の方もいるのではないでしょうか?
水道法の内容や11項目・16項目との違い、51項目の水質検査内容を理解することで、今後も安全に事業を展開していけます。
一方で、水質検査の概要を理解せずにいると、行政指導や行政処分などで事業停止命令を突きつけられることも十分に考えられるでしょう。
今回は、水道法に関連する11項目の水質検査や、16項目との違い、義務化などの内容について詳しく解説します。
水質検査についての知識を理解して、安全に事業を行なっていくための参考にしてください。
目次
水質検査とは
水質検査は、飲料水を扱う飲食店、百貨店、企業の事務所、学校、図書館、商業店舗などの水道水を扱う幅広い業種が検査対象です。
大きく分けると、「飲用井戸水の水質検査」「生活衛生の水質検査」「ビル管理法に基づく水質検査」「水道法に基づく水質検査」があります。
特に検査対象事業者が多いビル管理法に基づく水質検査では、特定建築物に指定されている、以下の施設が主な検査対象です。
- ・百貨店
- ・映画館、ミュージカルなどの興行場
- ・事務所、学校、図書館などの各種公共施設
- ・結婚式場、イベントホールなどの集会場
- ・ホテル、旅館
- ・飲食店舗
- ・美術館、博物館
- ・遊技場
など
各用途部分が、延べ床面積3,000㎡以上ある建築物が特定建築物と呼ばれ、対象事業者に対して水質検査の実施命令を出しています。
主な検査対象場所は、飲料水として利用される水道がメインです。
その他、各種施設の「中水雑用水検査」「貯水槽掃除」「レジオネラ属菌検査」温泉施設や銭湯、健康ランドの「貯水槽掃除」「害虫掃除」「プール水」「浴槽水」などがあげられます。
上記のように、水質検査にはさまざまな種類が存在しています。
水質検査の検査項目について
水質検査の検査項目はには、以下の項目があげられます。
- ・水質基準項目:51項目
- ・要検討項目:47項目
- ・水道原水検査:39項目
- ・ビル管理全項目:51項目
- ・水質基準項目:21項目
- ・消毒副生成物:12項目
- ・飲用井戸等:11項目
- ・食品製造用水:26項目
- ・学校環境衛生:10項目
など
11項目・16項目・39項目・51項目などの水質検査項目がある
上記で一例を紹介したように、水質検査にはさまざまな項目で検査が実施されます。
なお各水質検査では、以下のような項目を検査して安全を守っています。
<検査する項目の一例>
一般細菌 | セレンおよびその化合物 | クロロホルム | 水銀およびその化合物 | 濁度 |
大腸菌 | ジェオスミン | 臭素酸 | フェノール類 | 塩素酸 |
カドミウムおよびその化合物 | 四塩化炭素 | 鉛およびその化合物 | 有機リン | ヒ素およびその化合物 |
亜硝酸態窒素 | 塩化物イオン | 蒸発残留物 | 六価およびその化合物 | シアン化物イオンおよび塩化シアン |
トリクロロ酢酸 | ブロモホルム | ベンゼン | PH値 | 臭気 |
水質検査の対象事業者は、上記のようなさまざまな有害成分が水道内に混入していないかを検査しながら、利用者が安心して水道を使えるように管理しなければいけません。
受けるべき水質検査内容は対象事業者によって異なる
先述したように、水質検査は以下の検査対象範囲ごとに、検査項目、検査基準、検査エリア、要項が異なります。
- ・水道法に基づく水質検査
上水道、簡易水道、専用水道などが検査対象場所
- ・生活衛生の水質検査
浴槽水(公衆浴場における水質基準等に関する指針)、レジオネラ属菌検査、プール(学校環境衛生基準)などが検査対象場所
- ・ビル管理に基づく水質検査
飲料水質検査、害虫駆除(建築物環境衛生基準)、中水雑用水検査、貯水槽清掃などが検査対象場所
- ・飲用井戸の水質検査
飲用井戸等衛生要項対策要項など
いずれも、さまざまな水質検査を実施して水道水を衛生的に保ったり、プールや温泉などを安心して利用したりできるように、定期的に水質検査を行う必要があります。
水質検査の義務について
水質検査は、水道法第4条の水質基準で規定・義務化されています。
管轄する省庁は、事業者によって異なりますが、一般的には厚生労働省が担当省庁です。
一部、学校で利用している水泳用プールの水質検査には、文部科学省も関係しています。
いずれも、学校環境衛生基準や遊泳用プールの衛生基準、建築物環境衛生基準など複数の指針や水質検査基準に基づいて、定期的な水質検査が国から義務化されています。
定期的な水道水の水質検査は、いち早く水質の変化や異常を把握できるため、利用者の安全を守るために欠かせません。
対象事業者は水質を把握するために、臭気、変色、濁度、pH値、味、消毒の残留効果などのさまざまな項目の検査が義務付けられています。
以下では、検査対象の広い「水道法に基づく水質検査」と「ビル管理法に基づく水質検査」について解説します。
水道法に基づく水質検査が義務付けられている
水質検査は、厚生労働省令の水道法第二十条の規約により、定期的または臨時に水質検査を行わなければいけないと義務付けられています。
主に上水道、簡易水道、専用水道が検査対象のエリアであり、水道事業者から供給されている水道水を検査します。
検査項目は、水質基準項目51項目、水質管理項目26項目、要検討項目47項目、定期水質検査などです。
また水質検査を実施した際は、検査の結果(記録)を書類に取りまとめて、検査実施日から換算して5年間、保管しておかなければいけません。
日々の業務が忙しくて定期的な水質検査ができない場合は、地方公共団体が定めた機関や厚生労働大臣から認定されている水質検査の専門業者に委託しましょう。
水質検査に関する内容をさらに詳しく確認したい方は、以下の「水道法に基づく水質検査」をご確認ください。
参照:水道法に基づく水質検査
ビル管理法(ビル管法)で義務付けられている
ビル管理法は「建物における衛生的環境の確保に関する法律」により、水質検査が義務化されています。
検査対象の事業者は、延べ床面積が3,000㎡以上の一定の規模で建てられている以下の建物および事業者です。
- ・学校
- ・店舗
- ・図書館
- ・遊技場
- ・百貨店
- ・旅館
- ・興行場
- ・事務所
など
ビル管理法では、飲料水質検査、中水雑用水質検査、貯水槽清掃などの水質に関連する検査・作業を実施しなければいけません。
またビル管法では、水質に関連する検査・作業以外にも、空調環境の調整や害獣・害虫駆除などを行い、微生物を媒介する生き物を駆除して水道環境を衛生的に保つ必要もあります。
ビル管理法は、以下の厚生労働省「建築物衛生のページ」でも詳しく解説されているので、さらに詳しく確認したい方はご参照ください。
水質検査で確認する内容
水質検査は、水質検査基準や建築物環境衛生基準などのさまざまな検査基準によって検査する範囲・内容が異なります。
例えば、水道法に基づく水質検査は「上水道・簡易水道」や「専用水道」などが検査対象です。
上下水道・簡易水道では、水道水として使用できるかを検査するために、水質基準項目(51項目)による検査が実施されます。
ほかにも水道水を管理する際に留意すべき項目として、水質管理項目(26項目)や要検討項目(47項目)などの検査を実施。
ビル管理法にもとづく水質検査でも、「中水雑用水質検査」や「飲料水質検査」の項目ごとに、さまざまな項目を検査して、有害な物質が水道に紛れていないかを確認します。
水質検査を実施する方法
水質検査を実施する方法は、大きく分けると以下の2とおりがあげられます。
- ・専門の水質検査業者に依頼
- ・自身で水質検査キットを購入して実施
なお、不特定多数の利用者が出入りするビルは、高い専門性がなければ検査できません。
同じように利用者の多い、商業施設、温泉施設、旅館、公共プールなども同様です。
基本的には、水質検査は専門業者やビル管理士の資格を保有している専門性の高い業者に依頼しましょう。
水道業者に依頼
水質検査を実施する場合、多くは水質検査の専門業者に依頼します。
水質検査は、「公衆浴場における水質検査等に関する指針」や「学校環境衛生基準」「ビル管理法に基づく水質検査」などの、さまざまな項目に分かれていて複雑です。
また、厚生労働省が定めた水道法で水質検査が義務化されているほかにも、事業者は検査実施後に各管轄の保健所に検査結果の報告書も提出しなければいけません。
ビル管理法に関しては、行政の指示に従わずに水質検査を実施せずにいると、30万円以下の罰金に処せられる可能性があるので注意しましょう。
参照:厚生労働省「特定建築物の所有者や占有者などで維持管理の権限を有する方へ」
水質検査キットを購入して自社検査
水質検査の実施が義務付けられていない、小規模な一般企業の事務所などでは、市販の水質検査キットで簡易的な検査を実施できます。
しかし小規模事業者でも、飲食店や旅館を経営している事業者は、水質検査を実施しなければいけません。
水質検査の専門業者に依頼する方法のなかでも、水質検査キットや採取した水(検体)を郵送して検査を実施する方法を選択することも可能です。
水質検査業者は、11項目での水質検査プランや、16項目プラン、51項目プランなどによる検査を実施してくれます。
郵送による簡易的な水質検査もできるので、忙しい事業者の方は郵送でやり取りする方法もおすすめだといえるでしょう。
水質検査のやり方
ビル管理法の対象事業者が水質検査を専門業者に依頼する場合、事業者側は作業することは基本的にありません。
検査キットや、採取した検体の水道水を郵送でやり取りする場合は、以下の方法で検査を実施しましょう。
- 1.水質検査の実施を依頼する専門業者に連絡・予約
- 2.水質検査の専門業者から届いた検査キットの受け取り
- 3.検査キット用の容器で水道水や温泉水などを採取
- 4.検体である水を採取したら容器を専門業者に郵送
- 5.検査結果が出るまで待機
- 6.検査結果が手元に届いたら保管
詳細な流れは専門業者によって異なるため、水質検査を依頼する際には、企業サイトを確認したり電話で具体的な流れを聞いたりすると安心です。
水質検査を実施している業種
水質検査を実施しなければいけない事業者は、飲用水として水道水を提供したり、ビル管理法に該当したりするすべての事業者です。
厚生労働省が定めた水道法に基づいているため、検査が義務化されています。
規約に違反することのないように十分に注意しましょう。
食品製造・加工工場などに関連する業種
食品製造業や加工工場業などは、「食品製造用水(26項目)」やその他の複数の検査を実施します。
具体的には、以下のような製造業者です。
- ・惣菜製造業者
- ・菓子製造業者
- ・添加物製造業者
- ・調味料製造業者
など
井戸水などの水道水以外の水を使用している食品関連業者が対象です。
水道水を使用している場合でも、貯水槽使用水(タンク水)を使っている事業者の方は、水質検査の対象者になることがあります。
飲食・旅館・サービス業に関連する業種
飲食店や旅館、その他サービス業において、飲用水として水道水を提供している場合、水質検査を実施しなければいけません。
飲料水の水質基準は「水道水または専用水道水から供給する水のみを水源として飲料水を供給する場合」と定められています。
なお、主な水質検査内容は「水質検査(16項目)」であり、6ヶ月以内に1回の検査が求められています。
温泉施設・プールなどに関連する業種
学校で利用されている水泳用プールは、学校保健安全法で水質検査が義務化されていたり、不特定多数の方が利用する温泉や銭湯などでも水質検査は実施されたりします。
浴槽水の水質検査によって検査項目が決められており、具体的な対象事業者は以下のような事業者です。
- ・フィットネスクラブ
- ・スーパー銭湯、銭湯
- ・保養所、老人ホーム
- ・旅館、ホテル
など
特に浴槽水の水質検査では、感染症を引き起こす恐れのあるレジオネラ属菌の発生を防止する目的があります。
いずれの水質検査でも、定期的な検査の実施が義務化されているので、安全に事業を運営できるように、しっかりと内容を確認してください。
水質検査を実施する際の注意点
水質検査を実施する際には、ご自身が実施すべき検査内容を確認するところから始めましょう。
自分がどの水質検査を実施するのかわからない場合は、管轄の保健所で確認できます。
また、検査自体は専門業者に依頼したり、ビル管理士の資格を保有している業者に依頼したりしてください。
飲食店や温泉施設、旅館などのサービス業で、飲用水として水道水を提供している場合、専門の業者に水質検査を依頼するのがおすすめです。
なお、ビル管理法に該当している場合は、ビル管理士の資格を保有している業者でなければ水質検査ができません。
その他、水質検査の実施後に受け取る検査結果は、5年間保管することも義務付けられています。
水質検査を実施しなかったとき同様に、保管義務を怠った場合でも30万円以下の罰金が課せられる可能性があるため十分に注意しましょう。
まとめ:水質検査の実施には11項目や16項目の違いを理解した上で実施すること
水質検査には、さまざまな検査基準が設けられており、幅広い業者が水質検査を実施する対象となっています。
検査内容・項目には51項目や11項目、16項目などの検査が用意されており、さまざまな成分を検査。
基本的には専門の水質検査業者に依頼して、実施するのが一般的です。
業者によっては、郵送で検査実施・検査作業などを行なってくれるため、自身で手を動かしながら水質検査を実施したい方に向いているといえるでしょう。
なお、水道法で決められている定期的な水質検査を実施しなかったり、水質検査の結果を規定の期間保管していなかったりすると、30万円以下の罰金に課せられる可能性があります。
水質検査は、私たちの生活に欠かせない水質を衛生的に管理するための作業です。
検査基準が細かく分類されていて複雑なため、分からないことがあった場合は管轄の保健所に連絡しましょう。
今回の内容を参考に、安心・安全に事業を運営していくための参考にしてください。