アルコールチェッカーの運用ルールと安全運転管理者に必須の業務7つ
アルコールチェッカーを導入する際に「アルコールチェックをどのように実施すればよいのか?」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
事務所拠点や直行直帰といった就業スタイルによっても運用方法は変わってきます。
本記事では、状況別に合わせたおすすめの運用ルールや、安全運転管理者が行う7つの業務を解説してきます。
アルコールチェッカーの運用ルールに迷われている経営者や担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
アルコールチェッカーとはなにか
アルコールチェッカーとは、ドライバーの呼気から体内に残っているアルコール濃度を計測する機器です。
機器に直接息を吹きかけたりストローに息を吹き込んだりすることで、ドライバーが酒気帯びかどうかを判定します。
事業所側は、アルコールチェッカーを使用して従業員であるドライバーのアルコールチェックを実施。
顔色や呼気などを目視で確認してから、記録を作成します。
2022年8月現在、アルコールチェッカーの使用方法の基準に関して厳密な指定はありませんが、国家公安委員会が定めるアルコールチェッカーの基準として以下のように定められています。
「呼気中のアルコールを検知し、その有無またはその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器」
引用元:国家公安委員会告示第六十三号(※)
上記ルールがあるため、アルコールチェッカーを導入する際は「アルコールを検知できる機能」と「アルコールを検知したら警告音や警告灯その他の方法で知らせてくれる機能」の両方を備えている機器を選択してください。
※国家公安委員会告示第六十三号の規則に関して、2022年10月1日施行予定でしたが、現在延期となっています。
アルコールチェッカーの基本的な運用ルール
アルコールチェッカーの基本的な運用ルールを5つ解説します。
- ・チェックするタイミング
- ・目視等での確認について
- ・確認する者は安全運転管理者のみではない
- ・対面で確認できない場合はどうすればよいか
- ・アルコールチェック後に記録する内容とは
それぞれ詳しく解説していきます。
チェックするタイミング
アルコールチェックを行うタイミングは、運転前と運転後の1日2回が基本ルールとなります。
アルコールチェックは、必ずしも運転の直前直後に行う必要はありません。
出勤時に測定したり、運転業務に従事する前に測定したりしてもよいのです。
業務終了後は、運転業務終了後か退勤時のどちらかに測定します。
いずれの方法でも、アルコールチェッカーを使用したアルコールチェックに加えて安全運転管理者による目視等での確認が必要です。
アルコールチェックするタイミングについての基本ルールは、以下のとおりとなります。
- ・運転前と運転後の1日2回アルコールチェックを実施する
- ・アルコールチェッカーを使用してアルコールチェックを実施する
- ・安全運転管理者は目視等によりドライバーの様子を確認する
目視等での確認とは
ドライバーと対面して、目視等で酒気帯びを確認することが基本ルールとなります。
目視等で確認する内容は、以下の通りです
- ・呼気にアルコールの匂いがないか
- ・目が充血していたりアルコールを摂取している様子はないか
- ・応答する声はいつもと変わりないか
- ・その他アルコールを摂取している様子はないか
目視等での確認漏れを防ぐために、ドライバーの出勤時間や帰社時間などを事前に確認しておくのがおすすめです。
ほかにもアルコールチェックが終わっていないドライバーがわかるような仕組みをつくっておけば、確認漏れを減らせるでしょう。
確認する者は安全運転管理者のみではない
アルコールチェックを確認する者には、安全運転管理者のほかに「副安全運転管理者」や「安全運転管理者の補助者」が存在します。
道路交通法第74条の3第1項および第4項により、一定台数以上の自動車を保有する事業所は、安全運転管理者と副安全運転管理者を選任して設置することになっています。
アルコールチェックを確認するのは安全運転管理者です。
しかし安全運転管理者が不在の場合や確認作業が困難な場合は「副安全運転管理者」や「安全運転管理者の業務を補助する者」が代行できます。
「安全運転管理者の業務を補助する者」に資格要件などの指定はなく、各事業所で適任者を選任する形になります。
選任した補助者は安全運転管理者の指導下におかれ、安全運転管理者がアルコールチェックができない際には、その業務を補助者に委託してアルコールチェックを行うのです。
対面で確認できない場合はどうすればよいか
対面で確認できない場合は、対面に準ずる対応を実施します。
カメラやモニタ―等によって、安全運転管理者がドライバーの顔色などをみて酒気帯びを確認。
応答する声の調子も確認し、アルコール検知器の測定結果を報告させましょう。
対面による確認と同様の対応をとります。
アルコールチェック後に記録する内容とは
アルコールチェック後に記録する内容は、以下の8項目です。
- ・確認者の氏名
- ・運転者の氏名
- ・運転者の業務にかかる自動車ナンバーまたは識別できる記号番号
- ・確認日時
- ・確認方法
- ・酒気帯びの有無
- ・指示事項
- ・その他必要事項
2022年8月現在、記録様式や記録方法に特別の定めはありません。
事業所ごとに記録をとり保管します。
直行直帰におけるアルコールチェッカーの運用ルール
勤務時間が不規則なドライバーを管理する事業所では、アルコールチェックするタイミングと確認方法が重要です。
直行直帰に対応するための運用ルールをみていきましょう。
チェックするタイミング
直行直帰により対面での確認が難しい場合は、ドライバーにアルコールチェッカーを携帯させます。
直行直帰の場合、以下の運用ルールをドライバーに徹底してもらいましょう。
- ・業務開始前はもちろん、翌日にアルコールが残るような深酒をしない
- ・運転業務を開始する前と終了後に、アルコールチェッカーを使用させてアルコール濃度を測定する
- ・業務開始前と終了後は、携帯電話や業務無線その他の方法により安全運転管理者に連絡する
- ・安全運転管理者からの確認事項に正直に返答する
- ・アルコールチェッカーの測定結果を報告する
事業所が確認する方法
直行直帰の場合、対面での目視等の確認ができません。
しかしカメラやモニターによって、安全運転管理者(または代行者)が運転者の様子等を確認すれば「目視等の確認」に準ずる形となります。
そのために安全運転管理者は、カメラやモニターなどによって確認できる体制を整えておく必要があります。
例えば、スマートフォンやパソコンを使ったWebミーティングや、オンラインでの点呼作業を毎日の業務に組み込むことで、直行直帰のドライバーの点呼作業が可能になります。
会社や事業所が拠点となっている場合の運用ルール
会社や事業所が拠点となっている場合の運用ルールはこちらです。
チェックするタイミング
事務所に出勤した際か運転業務の開始前にアルコールチェックを行います。
業務終了後は、退勤時か運転業務終了後にチェックを行いましょう。
ドライバーが多く在籍している場合、アルコールチェッカーの台数が少ないと業務が滞る可能性があります。
ドライバーの人数から必要なアルコールチェッカーの台数を揃えておき、スムーズな業務推進を目指しましょう。
事業所が確認する方法
事業所内でアルコールチェックを行うことで、目視による確認や呼気の検査が効率的になります。
目の前でアルコールチェックする様子を確認できるため、「なりすまし」といった不正を予防できるのもメリットです。
安全運転管理者が不在または確認が困難な場合は「副安全運転管理者」や「安全運転管理者の業務を補助する者」が確認を行います。
安全運転管理者の補助者は、アルコールチェッカーの使用が義務化される前に選任、準備しておきましょう。
アルコールチェッカーの運用ルールに関するQ&A
アルコールチェッカー運用について、よくある質問をQ&Aにまとめました。
事務所と訪問先を往復する場合のチェック方法は?
車両を運転して一日に何度も事務所と訪問先を往復するケースでも、出勤時または業務開始前と退勤時または終了後の2回の確認で問題ありません。
チェック方法は、アルコールチェッカーによるアルコール濃度の測定と目視等による確認となります。
同乗者もアルコールチェックが必要か?
2022年8月現在、アルコールチェックの対象者は「業務で車両を運転する運転者」となります。
そのため、業務目的での運転をしない人は対象外となり検査の必要はありません。
メールで報告して問題ないか?
メールでの報告は義務違反となります。
対面による目視等の確認またはそれに準ずる方法で、ドライバーの酒気帯びを確認しましょう。
個別で購入したアルコールチェッカーは使用できるのか?
安全運転管理者の管理のもと、「アルコールチェッカーが正常に作動しており故障がないか確認されている」状況であれば使用可能です。
安全運転管理者が行う管理項目
安全運転管理者が行う管理項目を確認しておきましょう。
- ・安全運転管理者が行う7つの業務
- ・アルコールチェッカーを管理する
- ・アルコールチェックを怠った場合の罰則について
それぞれみていきます。
安全運転管理者が行うべき7つの業務
安全運転管理者に定められている業務は、全部で7つあります。
1.運転者の状況把握
自動車の運転に関する運転者の適性、技能や知識などの法令を遵守するための措置を行う。
2.運行計画の作成
最高速度違反や過積載、過労運転に注意して運行計画を作成する。
3.交代要員の配置
運転者が長距離の運転や夜間の運転に従事する場合、疲労などにより安全な運転を継続できないおそれがあるときは、あらかじめ交代できる運転者を配置する。
4.気象時の安全確保の措置
異常な気象、天災その他の理由により、安全な運転が確保できないおそれがあるときは、運転者に必要な指示その他安全な運転の確保を図るための措置を行う。
5.安全運転の指示
運転者に対して点呼を行うことで、自動車の点検の実施や飲酒、過労や病気その他の正常な運転ができない恐れの有無を確認する。
安全な運転を確保するために必要な指示を与える。
6.運転日誌の記録
運転者名や運転の開始と終了の日時、運転した距離その他自動車の運転の状況を把握するために必要な事項を記録する日誌を用意する。
運転を終了した運転者に記録させる。
7.運転者に対する指導
運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行う。
参考元:道路交通法施行規則第9条の10|安全運転管理者の業務
アルコールチェッカーを管理する
アルコールチェッカーを常時有効に使用するために、説明書に基づいた方法で保管を行います。
アルコールチェッカーに故障がないか定期的に確認することで、常時有効な状態を保つ業務も安全運転管理者の役目です。
アルコールチェッカーの種類によって、有効期間や検知回数は異なります。
有効期間切れや検知回数オーバーにより使用できない状況を避けるために、説明書は必ず確認しておきましょう。
アルコールチェックを怠った場合の罰則について
アルコールチェックを行わない場合、自動車の安全な運転が確保されていないとして罰則の対象となるおそれがあります。
自動車を使用している事業主などに対して、公安委員会から安全運転管理者の解任命令が出されます。
解任命令に従っていないと判断されると、事業主などに対して5万円以下の罰金が課せられるため注意が必要です。
健全な事業運営を継続するための運用ルール
法令を守り健全な事業運営を継続するために、以下の運用ルールを導入してみましょう。
- ・業務に即した測定方法の選択
- ・ダブルチェックの組織化と情報共有
- ・安全運転教育
具体的に解説していきます。
業務に即した測定方法の選択
早朝勤務や深夜勤務により事務所で測定できないドライバーには、アルコールチェッカーを携帯させましょう。
なぜなら事務所までの往復にかかる時間やガソリン代などのコストを削減できるほか、アルコールチェックにかかるドライバーの負担を軽減できるからです。
反対に事務所で測定できるドライバーには、事務所でアルコールチェックすることをルールとするのがおすすめです。
アルコールチェッカーを何台も用意する必要がなくなり、コスト削減になります。
目視等による確認が容易になるほか、不正防止にもつながります。
業務にあわせて適切な測定方法を選択しましょう。
ダブルチェックの組織化と情報共有
ドライバーと事業所側で、ダブルチェックするという社内ルールを設けます。
アルコールチェックした記録を、事業所側だけでなくドライバーも作成します。
記入する項目は少なくしたり、「はい」「いいえ」で答えられる書式にすればドライバーの負担は少なく済むでしょう。
ドライバー自身も記録するルールを設ければ、チェック漏れの防止につながります。
作成した記録があれば、事業所とドライバーとのトラブル予防にもつながるでしょう。
安全運転教育
アルコールチェックが本格的に義務化される前に、社内研修などでアルコールチェックの運用方法を確認しておきます。
特にアルコールが検知された場合の対処が重要です。
ドライバーが「運転に問題はない」「機械は信用できない」と不満を表してトラブルになる可能性もあります。
そのためアルコールチェッカーの性能や運用方法について、できるだけはやく周知することが大切です。
「アルコールチェッカーの適切な運用は、結果的にドライバーや事業所を守ることにつながる」と伝えれば、ドライバーも納得してくれるでしょう。
アルコールチェッカーの使用義務に備えて運用ルールを固めておこう
2022年10月1日から、アルコールチェッカーによるアルコールチェックの義務化が予定されていました。
しかし、アルコールチェッカーの生産が間に合っていないことなどから「アルコールチェッカーの使用義務化にかかる規定の実施を延期する」方針が発表され、現在は検討段階にあります。
いつアルコールチェッカーの使用義務化が実施されても大丈夫なように、あらかじめ自社の運用ルールを固めておきましょう。
ドライバーと事業所とで意思の共有ができていれば、実施後もスムーズな事業運営が可能になります。