ファイバースコープとは?使用用途や機能を解説!
現在、様々な分野やジャンルで取り入れられ、活用されているファイバースコープ。
「ファイバースコープ」という名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
ファイバースコープとは内視鏡の一種であり、細いガラスの繊維を多数束ね、カメラを取り付けたものの総称をいいます。
ではファイバースコープはどのような現場で活かされ、どのようなメリットを持ち合わせるのでしょうか?
本記事でファイバースコープの概要や、誕生までの歴史、使用用途や機能を解説しますので、ファイバースコープに関しての理解を深めてください。
また、ファイバースコープ以外を検討されている企業様への選択肢も補足します。
ファイバースコープとは?
ファイバースコープという名称を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
ファイバースコープとは、内視鏡の一種です。
透過性の高い石英ガラスやプラスチックで作られた線を束ねて、一端にレンズを、もう一端には接眼レンズを取り付けたものの総称をいいます。
ファイバースコープは先端のレンズから取り入れた画像を、もう一端の接眼レンズから見ることができます。
管が細く柔軟であるため、見る対象の内部が曲がっていても、隙間から挿入して内部の画像をカメラを通して観察可能。
レンズには広角レンズが使われていることが一般的ではありますが、広角レンズの代わりにカメラが接続されることもあります。
さらにファイバースコープの特徴として、光が途中で屈折しても、繊維の内部で全反射を繰り返しながら進めるため、光源の像の伝達が正確に行えます。
ファイバースコープには光源一体タイプがあり、通常のペンライトよりも明るいものもあるため、目視ではできない隙間や内部を観察することに適しています。
ファイバースコープ誕生までの歴史
柔軟性を持ち、光源の伝達を正確に行うことができるファイバースコープ。
どのような経緯を経て、誕生し、現代の様々な職場や業務で親しまれているのでしょうか?
ファイバースコープを取り扱う専門家であれば、ファイバースコープ誕生までの歴史も押さえておきましょう。
内視鏡のはじまりは紀元前
ファイバースコープは内視鏡の一種です。
内視鏡の起源をたどると、古代ギリシア・ローマ時代まで遡ります。
紀元前一世紀に存在したとされるポンペイの遺跡からも、内視鏡の原型とみられる医療器具が掘り出されているのです。
紀元前の時代から、医療において人の内部を見ようとする概念が存在し、人々が技術の発達にすぐれた知恵を活かしていたことが読み取れるでしょう。
内視鏡の原型は19世紀に完成
現代で主に使用されている内視鏡の原型となった機器は、19世紀に登場したと言われています。
管を通して生体内の観察を初めて試みたのは、ドイツのボチニという人で、1805年に導光器を製作し、尿道や直腸などの身体内の観察を行いました。
さらに1853年、フランスのデソルモが、尿道や膀胱を観察する特殊な器具を製作しました。この器具に世界で初めて「内視鏡」と名付け、その名称が普及していったのです。
1868年になり、世界で初めて生体の胃の観察を行ったのが、ドイツのフライブルグ大学内科学教授のアドルフ・クスマウル博士です。
「硬性胃鏡(こうせいいきょう)」と呼ばれる内視鏡を使用し、当時、刀を飲み込む芸を行っていた大道芸人に向けて検査を行ったといわれています。
「硬性」と言うだけあり非常に堅いのが特徴で、長さ50cm弱、直径15mm弱ほどもある「杖」のような棒状の金属管の両端に鏡が取り付けられたような構造であったようです。
胃内を照らすための光源は、現代では主流となっている電球やライトなどではなく、ロウソクの火に頼るものでした。
その後、日本の外科医師とカメラ技師が連携を行い、1950年に柔らかい管の先端に照明と極小カメラを付けた胃カメラが、日本が誇るオリンパス社にて開発されました。
当時、一端に付けられていたのはカメラであったため、リアルタイムで胃の中を見ることができませんでした。
そのため、フィルムを現像して、内部を観察した画像を取得していたといわれています。
世界初の胃カメラは日本で誕生し、その後、世界へと広がっていくのです。
いよいよファイバースコープが生まれる
1960年代、光ファイバーを使用したファイバースコープが開発されました。
胃の中全体を照らしながらリアルタイムで観察することができる、画期的な器具です。
ファイバースコープは光が途中で屈折しても、繊維の内部で全反射を繰り返しながら光源が進むので、光源の像の伝達を正確に行うことが可能となったのです。
例えば、胃カメラで人体の内部をリアルタイムで見ることができるようになり、身体内で異常がある部分を正確に発見することが可能となりました。
リアルタイムで内部の映像を確認できるようになったことにより、開発当初、撮影したフィルムを一つ一つ現像していたものと比べて、格段に医療が発展したといえるでしょう。
その後、現在の内視鏡の原型となる、経口のスコープ径よりも小さなスコープの開発が可能となったことで、現在の経鼻内視鏡検査が一般的となったのです。
器械の小型化がますます進み、より詳細な箇所を確認できるようになったことに加えて、近年は光学技術の発展も伴い、より鮮明に詳細に画像で確認できるようになりました。
レンズ系の内視鏡では到達できない範囲まで内視鏡の目が拡大されるようになり、画像伝送や細かい業務が発生する宇宙開発、更には遺跡発掘などにも利用されています。
1990年代には光ファイバーの束で映像を投影するファイバースコープから、超小型撮像素子をスコープ先端に付けたビデオスコープがより一般的になっています。
一般的にビデオスコープの解像度はファイバースコープの約10倍であるといわれており、より精密な検査が出来るようになりました。
ビデオスコープは映像をケーブルで電送するため、ファイバースコープ以上の長さをつなげることができ、使用用途が大きく広がっています。
また、2005年頃からLED照明をスコープ先端に付けることで、低消費電力バッテリー駆動が実現しています。
このようにして、ファイバースコープが生まれたことにより、様々な内視鏡の発展や進化に多大な影響を与えています。
ファイバースコープの使用用途
様々な歴史を重ね、様々な器械の発展に影響を与えたファイバースコープ。
ファイバースコープには、どのような使用用途があるのか気になる方も多いのではないでしょうか?
ファイバースコープは、柔軟性に富んだ細長い光ファイバーをまとめ、その一端にカメラを使用することで狭い箇所の点検や確認が可能になる装置です。
そのため、機械分野においては、高密度に実装された人間の手には届かないところや目視では分からない装置の内部を点検するために使われています。
例えば、医療用内視鏡ではファイバースコープを使用することで、患者の負担を軽減するような胃カメラの実装に役立っています。
ファイバースコープが開発されるまでは、医療用胃カメラは口から挿入するものであったため、患者に嘔吐感を催してしまうものでした。
しかし、ファイバースコープを使用することで胃カメラの小型化を図ることができ、鼻から挿入することができるものが開発されたのです。
また、災害救助用スコープなどにも、ファイバースコープによる応用がなされているのはご存じでしょうか。
災害等が発生すると、建物の倒壊により下敷きになった要救助者や隊員が、濃煙等で進入不可能な状況が発生してしまう可能性があります。
そのような災害時にも、ファイバースコープが活かされています。
要救助者を早期に発見するために、人が入れないような隙間で役立ったり、水害が起こった際に水中でも使用できるようなカメラも開発されています。
その他、機械加工の現場や、コンピュータの修理、錠前業、金庫破りなど、細かい作業が必要な業務に対して、身近なところでファイバースコープが役立っているのです。
現代では、スマホ用のファイバースコープといった、個人が使用できるファイバースコープも入手が可能です。
個人が家庭で行う所有車の整備や排水溝やエアコンの整備など、家庭でも役立つ場面は多々存在するため、今後は個人所有でもより身近になっていくことでしょう。
ファイバースコープを使用するメリット・デメリット
様々な特徴を持つファイバースコープ。
日々の業務のなかでファイバースコープを利用するメリットやデメリットは何があるのでしょうか。
ファイバースコープのメリット
ファイバースコープは、細い管を通して一端の画像を確認できる装置であり、柔軟性に富んでいます。
例えば、極小サイズのカメラと自在に曲げることができる先端部を活かし、身体内で腸内や胃の検査などをするための医療用内視鏡としても使用可能です。
狭く入り組んでいる臓器の場合は、カメラやチューブの直径が大きいと内臓の壁などに当たってしまい、細胞を損傷してしまう可能性も考えられます。
しかし、ファイバースコープのカメラは極小サイズで先端部分も自在に可動できるので安心して使用できるのです。
また、現在では医療用のような高価な業務用だけでなく、個人が日常で使える様に実装されているものも販売され、比較的手に入れやすい価格で販売されています。
日常生活では掃除や整備などの細かい業務が発生する際、ファイバースコープの使用は大変便利であるといえるでしょう。
ファイバースコープのデメリット
また、ファイバースコープには以下のようなデメリットがあります。
- ・細いファイバーを束ねたハニカム構造のため、境界線の影が若干映ってしまう。
- ・負荷をかけすぎると折れてしまうことがある。
- ・ファイバーの中を通して映像を見るため、長くなるほど暗くなる。
- ・ファイバーを長くしようとすると、その分費用がかさむ。
メリット・デメリットを把握した上で、用途に合わせた製品を選んでください。
ファイバースコープ以外の内視鏡について
ファイバースコープ以外には「ビデオスコープ」「ボアスコープ(硬性鏡)」があります。
ビデオスコープは先端にカメラがついていて、ファイバーではなく電線でできています。
そのためファイバースコープのデメリットである「ハニカム構造の影が映る」「折れる」「長くなるほど暗くなる」などを解消してくれます。
しかし、小型化するほど解像度が悪くなったり接近しすぎると焦点が合わなかったりというデメリットもあります。
ボアスコープは、ステンレス管の先にカメラがついており、主に下記画像のような形状をしています。(3R製品)
ファイバースコープよりも画質が鮮明で、接近した対象物もピントを合わせられます。
一方、管がステンレス製のため曲げることはできません。
また、一般的なビデオスコープよりはコストがあがることがあります。
それぞれ用途に合わせて選んでください。
目的・用途に合わせてファイバースコープかそれ以外かを選ぶ
ファイバースコープは、もともと医療用胃カメラの発展を促した人々が生み出した便利な機器です。
現代では医療用だけでなく、工業用や日常生活でも利用されています。
しかしファイバースコープ以外にもビデオスコープやボアスコープといった内視鏡もあります。
それぞれ目的、用途に合わせて、ファイバースコープの導入にするか、それ以外にするかの検討は必要でしょう。