2,000倍のデジタル顕微鏡で見えるものとウイルスが観察できる倍率
デジタル顕微鏡は機器の構造から、高い倍率も実装することができる顕微鏡です。
デジタル顕微鏡は10倍程度の低倍率から1万倍程度の高倍率まで幅広い倍率が実装可能なため、観察用や業務用だけでなく研究の分野でも使用されています。
そこで本記事では、2,000倍のデジタル顕微鏡で見えるものや見えないもの、ウイルスが観察できる倍率について解説します。
併せて、2,000倍の倍率が実装されているデジタル顕微鏡の価格相場やデジタル顕微鏡の倍率の選び方についても紹介しますので、デジタル顕微鏡の導入を検討されている業者様は参考にしてみてください。
目次
デジタル顕微鏡の倍率の選び方
デジタル顕微鏡を選ぶ際には、目的や用途に合わせて選ぶことが大切です。
趣味で昆虫・花を観察する場合と、はんだづけなどの業務で使用するデジタル顕微鏡は必要な性能や倍率が異なってきます。
観察に必要な倍率を持ったデジタル顕微鏡を購入しないと、思うような観察結果が得られない場合も。
昆虫や花の構造を見る場合には、200倍程度の倍率があれば細かな部分まで観察でき、花粉なども確認できます。
はんだづけや、小さな部品のメンテナンスなどの業務にデジタル顕微鏡を使用する場合には、100倍〜1,000倍の倍率を持ったものがおすすめです。
回路基板の大きさや部品の大きさによって必要な倍率が異なってくるので、使用できる倍率の幅が広いものを選ぶようにしましょう。
研究用に使用するデジタル顕微鏡の倍率は、観察する対象・観察する場所を明確にしてから慎重に検討する必要があります。
微生物程度の肉眼でも存在が目視できるレベルであれば「100倍」、ミドリムシなどの非常に小さな生物であれば「200倍」、細胞や染色体などを見るためには「1,500倍以上」の倍率が必要になってきます。
また、検体を採取して室内で観察する場合にはデスクタイプのデジタル顕微鏡、屋外でそのまま観察したい場合にはハンディタイプのデジタル顕微鏡を選ぶ必要があります。
デスクタイプのデジタル顕微鏡は高倍率レンズが実装されているものも多いです。
ハンディタイプの場合は、デスクタイプと同等の性能を追求しようとするとコストが高くなりやすい傾向にあります。
それぞれの特徴をよく理解した上で、目的や用途に沿ってデジタル顕微鏡の倍率を選ぶようにしましょう。
デジタル顕微鏡の倍率2,000倍で見えるもの
デジタル顕微鏡の倍率2,000倍では、実際にどのようなものを観察できるのでしょうか。
2,000倍で見えるサイズは、0.2μm(20,000分の1mm)までとされています。
2,000倍のデジタル顕微鏡を使用すると、大腸菌などの細菌類から非常に小さな微生物・肉眼で目視しにくい細い蜘蛛の糸も観察できます。
今回紹介する倍率2,000倍で見えるものは以下の通りです。
- 大きさは約0.2μmまでのもの
- 細胞・染色体
- 細菌
それぞれみていきましょう。
大きさは約0.2μmまでのもの
0.2μm〜10μmの大きさをもつ生物やモノの例は次の通りです。
- ブドウ球菌などの原核生物(0.8μm)
- 大腸菌(1μm)
- 染色体(1μm〜2μm)
- ミトコンドリア(2μm)
- 黄砂(4μm)
- 蜘蛛の糸(5μm)
- 葉緑体(5μm)
- 赤血球(8μm)
- 毛細血管(5μm〜20μm)
小さい微生物から、毛細血管のような人・生物の構造まで見ることができます。
特に、ミトコンドリアのような細胞の構造は2,000倍の倍率をもつデジタル顕微鏡が観察に適しているのです。
細胞・染色体
上で紹介したように、2,000倍の倍率では細胞や染色体の構造まで確認することができます。
比較的大きな細胞では、全体像ではなく細胞の構造まで観察が可能です。
ミトコンドリアや葉緑体も細胞の構造の一つになります。
2,000倍の倍率を使用することで、遺伝子に関わる染色体の全体も観察できます。
細胞の構造や染色体の形は一般的な顕微鏡では確認することがむずかしいですが、2,000倍のデジタル顕微鏡を用いることで観察することができるのです。
細菌
大腸菌などの細菌類も観察できます。
一般的な最近の大きさは1μm〜5μmのため、特別小さいものでなければ細菌類は2,000倍のデジタル顕微鏡を用いることで観察が可能なのです。
他の細菌の大きさは次のとおりです。
- 結核菌 (0.2μm)
- ジフテリア菌 (6μm)
- 赤痢菌 (2μm)
- チフス菌 (2μm)
- 百日咳菌 (0.2μm)
- ブドウ球菌 (0.8μm)
- コレラ菌 (3μm)
細菌の大きさにも個体差はあるものの、病気につながる細菌も見れることがわかります。
ウイルスは2,000倍のデジタル顕微鏡で見えるのか
デジタル顕微鏡の倍率2,000倍では見えないものもあります。
2,000倍で見えるサイズは、0.2μmまでだったので、0.1μmよりも小さいものは観察が難しいです。
今回紹介する2,000倍の倍率で見えないものは次のようになります。
- 大きさ約0.1μm以下のもの
- ウイルス
- DNAの構造
それぞれみていきましょう。
大きさ約0.1μm以下のもの
倍率2,000倍のデジタル顕微鏡では、大きさ0.1μm以下のものは基本的に観察することができません。
0.2マイクロメートルの半分のサイズでは、全体像を捉えることも難しくなってきます。
0.1μm以下の生物やものは次のようなものが挙げられます。
- ウイルス
- ナノ粒子
- 分子・原子
- DNAの構造
昨今では「ナノテクノロジー」という単語を耳にすることも増えてきていますが、ナノレベルで小さい世界のテクノロジーを指している単語です。
1,000nm=1μmのためナノレベルで小さいものは観察が非常に難しくなってきます。
反対に、2,000倍の倍率をもつデジタル顕微鏡はミクロンレベルでの観察に適していると言えます。
分子は1nm、原子が0.1nm程度の大きさのため、2,000倍のデジタル顕微鏡では観察することができません。
2,000倍のデジタル顕微鏡では0.1μm以下のものは観察できないと覚えておくようにしましょう。
ウイルス
ウイルスは細菌とよく間違われる微生物ですが、大きさが異なります。
細菌が1μm程度の大きさに対し、ウイルスはそれよりも小さい0.1μm以下の大きさのものが多いです。
例を挙げると、次のようになります。
- ノロウイルス(30nm)
- インフルエンザウイルス(100nm)
- コロナウイルス(100nm)
ウイルスの種類によっても大きさが異なりますが、多くのウイルスは100nm以下のものが多いため、2,000倍のデジタル顕微鏡では観察できません。
例えばコロナウイルスを観察しようとするなら、100nmは1万倍してやっと1mmの大きさになります。
電子顕微鏡で観察するとなると、5万倍や10万倍、それ以上の倍率が必要になります。
DNAの構造
2,000倍のデジタル顕微鏡では、染色体を確認することができるものの、DNAの構造まで見ることができません。
染色体をほどいていくと1本のDNAになりますが、DNAは細い紐状で直径2nmです。
DNAを確認するには、10万倍程度の倍率をもつ顕微鏡を用意する必要があるのです。
2,000倍のデジタル顕微鏡の価格相場
この項目では、2,000倍が観察可能なデジタル顕微鏡の価格相場を紹介していきます。
販売会社 | 価格 |
A社 | 53,873円 |
B社 | 39,780円 |
C社 | 32,000円 |
参考価格以外にも、数十万円〜数百万円を超えるようなハイスペックな顕微鏡もありますので、用途や予算に合わせて検討が必要です。
本体と別で高倍率のレンズを購入するケースもありますので、メーカーのカタログや資料請求、問い合わせなどで確認してください。
また、モニターの性能や機能の多さによっても価格が左右されるため、使用するデジタル顕微鏡に必要な機能やモニターの大きさなどを明確にしてから選ぶようにしましょう。
2,000倍以上のデジタル顕微鏡について
2,000倍以上の高倍率のデジタル顕微鏡はどのようなものがあるのでしょうか。
2,000倍以上の倍率をもつデジタル顕微鏡を以下に示します。
販売会社 | 価格 | 画素数 | 最高倍率 |
A社 | 178万円 | 500万画素 | 7,000倍 |
B社 | 772万円 | 記載なし | 8,220倍 |
デジタル顕微鏡を開発しているメーカーでは、5,000倍以上の倍率を持つデジタル顕微鏡が販売されています。
中には、1万倍近い倍率をもつデジタル顕微鏡もあり、その分価格も高くなっていることがわかります。
5,000倍では0.1μm程度のもの、1万倍では50nm程度のものをみることができます。
例えば、インフルエンザウイルスなどのウイルス類は0.1μm程度の大きさのものが多いため5,000倍の倍率で確認でき、ノロウイルスのような小さいサイズのウイルスも1万倍の倍率を持つデジタル顕微鏡では確認できるのです。
このような高性能のモデルでは、高い倍率をもつだけでなくさまざまな機能が搭載されているため、気になる方はぜひチェックしてみてください。
まとめ:2,000倍のデジタル顕微鏡を購入検討する際は用途を明確に
今回は、デジタル顕微鏡の倍率2,000倍で見えるものや価格相場について解説してきました。
2,000倍の倍率をもつデジタル顕微鏡はミクロンレベルでさまざまなものを観察することができますが、購入する際には目的や用途を明確にすることが大切です。
低倍率でしか確認できないものもあるため、必ずしも2,000倍のような高倍率が良いとは限らないのです。
高倍率が実装されているデジタル顕微鏡は高価なものも多いため、コストパフォーマンスの面を考えても慎重に検討してから選ぶようにしましょう。
今回解説した2,000倍で見えるもの・見えないものの情報を参考に、観察対象の大きさをはっきりさせることでデジタル顕微鏡選びの参考にしてみてください。