放射線測定器の校正が定められた法令について|校正周期や期間・費用も解説
※本記事は一般的な内容を元に作成しております、詳しくはご利用のメーカー等にご確認ください
測定器の校正とは、測定器の器差(精度)を確認することで、使用している測定器が正しく動作しているかを調べることです。
測定器の値と標準器の値を比較し、差異がないかを確認します。正確な測定を行うにおいて必要不可欠な作業で、法令でも実施することやその方法・周期などが指定されています。
この記事では放射線測定器の校正が定められた法令や校正周期、および費用を解説していきます。
目次
放射線計測器の校正の重要性
放射能・放射線測定器の正確性や精度を確保するためには、測定器のメンテナンスとして定期的な保守点検や校正が必要です。
信頼できる校正は、国際標準または国家標準につながる計量標準により実施されています。
日本では計量法に基づき、事業者や個人の様々な活動を支える基盤インフラとして、幅広い分野における正確な計量を維持するため、計量の標準となる特定標準器や特定標準物質を国家計量標準として定めています。
国際計量基準について
国際軽量基準とは国際協定の署名者によって承認され、世界中で用いることを意図した測定標準です。
国際測定標準、および国際標準とも言われています。
主要な量ごとの国際計量標準については、国際度量衡委員会下の各諮問委員会が最上位に位置づけられるものを決めています。
計量諮問委員会は長さや質量、時間をはじめ測温や測光、放射線など多岐に渡ります。
国家計量標準は、計量計測トレーサビリティの経路と測定不確かさの記述が必須とされており、品質マネジメントシステムが試験所および校正機関の能力に関する一般要求事項に沿っていなければなりません。
代表的なものに、重さの単位であるkgの国際基準として、国際度量衡局に保管管理されている国際キログラム原器があります。
また、国際原子力機関から配布されている、安定同位体の物質量比の差の測定のためのウィーン標準平均海洋水も国際計量標準です。
JCSS 計量法トレーサビリティ制度について
JCSS(Japan Calibration Service System)は計量法に基づく計量法トレーサビリティ制度です。
JCSSは「計量標準供給制度」と「校正事業者登録制度」の2つから成り立っています。
JCSS登録の審査は事業所からの申請に基づき、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が行います。
具体的な審査基準としては
- ・事業者の品質マネジメントシステムが適切に運営されているか否か
- ・校正方法および不確かさの見積もり
- ・設備などが校正を実施する上で適切であるかどうか
など。
国内で使用されるあらゆる測定器の精度を維持するため、必要な校正制度の一つです。
なお、日本において測量法に基づき国(経済産業省)に認められた会社は8社しかありません。
放射線計測器の校正の法令で定められている内容について
放射線測定について定めている法律は放射性同位元素等の規制に関する法律(RI法)です。
この法律は放射性同位元素や放射線発生装置の使用、放射性同位元素によって汚染されたものの廃棄などを規制することで、放射線障害を防止し公共の安全を確保することを目的に制定された法律です。
放射線計測器の校正義務について
放射性同位元素等の規制に関する法律(RI法)に基づき、指定する場所や現場において測定を行うことが許可届出使用者などに義務付けられています。
また、許可届出使用者等は、測定を測定業者に委託する場合や放射線測定器を他者から借りて測定する場合でも、委託先が法に基づき適切に放射線測定を行い、放射線測定器が適切に点検・校正されていることを確認して記帳する必要があります。
放射線計測器の校正の周期や期間
放射性同位元素等の規制に関する法律施⾏規則の第20条にて「放射線測定器については、点検及び校正を 1 年毎に適切に組み合わせて⾏うこと」と明示されています。
これは点検と校正を両方とも1年ごとにすることを義務化している訳ではなく、1年ごとに計画を立て、その中で点検と校正を適切に組み合わせることです。
記録の保管義務が5年間なので、校正は少なくとも5年に1回必要といえます。
また、適切な校正周期については計測機器や企業により差があるのですが、校正有効期限を1年と定めているものが多いです。
日本測量工業会(JSIMA)では放射線計測器を含めた測定機器の校正期限を12ヶ月以内としています。
放射線計測器の校正で必要な道具
放射線計測器は大きく「線量率計」「個人線量計」「汚染検査計」の3種類です。
これらの中にも、検査できる放射線の種類や校正点数に応じてさまざまな種類の計測器があります。
校正点数とは校正における基準にする値の数のことです。
1点校正は1つの値を基準にし、2点校正は2つ、3点校正は3点の値を基準にして校正していきます。
線量率計
放射線計測器のうち、外部被ばく線量を計算する際に必要不可欠な空間放射線量率を正確に計測するための機器です。
時間当たりの放射線量を測定することができます。
各測定場所の放射能測定や、放射線業務従事者の総被曝量の管理などに用いられています。
単位はSv/h(シーベルト/時間)mSv/h(ミリシーベルト/時間)、μSv/h(マイクロシーベルト/時間)nSv/h(ナノシーベルト/時間)など。
例えば、1時間で1ミリシーベルトの被ばくに相当する程度の放射線量当量率は、1mSv/h(1ミリシーベルト/時間)と表します。
汚染検査計
汚染検査計は単位面積あたりの放射能を測定する際に用いられる測定機器です。
放射線施設内の人が常時立ち入る場所の床や物、管理区域外への持出し物品等の表面の放射能密度が規定を超えないように管理するために使用されます。
単位は1分間当たりに数える放射線の数をカウントパーミニッツ(cpm)またはパーミニッツ(min>-1)で表示します。
cpmとmin-1は同じ意味です。
個人線量計
個人の受けた放射線の量を測定するために用いられる測定機器です。
放射線管理区域の作業員など放射線業務従事者が、被ばくした放射線量を測定する際に用いられています。
放射線が与えるエネルギーは組織や臓器ごとに異なり、また位置や深さによっても異なるため、体における放射線影響を測定するには無限に測定点を設ける必要があり、実質不可能です。
そのため実用量である「個人線量当量」が定義され、代表的な人体の深さ(dmm)を考慮することで線量を評価しています。
単位はSv(シーベルト)、mSv(ミリシーベルト)、μSv(マイクロシーベルト)です。
放射線計測器で計測される放射線の種類
放射線計測器で計測される放射線の種類は大きくα(アルファ)線、β(ベータ)線、γ(ガンマ)線、中性子線があります。
α(アルファ)線
α線は透過力が弱く、紙一枚で遮ることができますが、エネルギーが強いのでこれを放出する放射性物質を体内に取り込んでしまった場合人体への影響も大きい放射性物質です。
β(ベータ)線
β線は透過力が弱く、アルミニウムなどの薄い金属板で遮断できます。
よく耳にするヨウ素131やセシウム137が放出するのは、このβ線です。
γ(ガンマ)線
γ線はレントゲン検査に使われるX線の仲間で、非常に透過力が強く、遮断する場合は鉛や鉄の厚い板で遮断する必要があります。
人体に当たると発がん性があり有害な一方で、先ほどのX線検査やジャガイモの発芽を抑制して長期保存を可能にしているなど、有益な使われ方もしています。
中性子線
核分裂時に放出される、電荷を持たない粒子線です。
原子力発電などで、ウラン235を核分裂させるときに使います。
透過性は非常に強く、遮断する場合は水やコンクリートで遮断する必要があります。
放射線計測器の校正に必要な費用
上記で述べたように検査できる放射線の種類や校正点数に応じてさまざまな種類の計測器があり、それぞれ料金も異なります。
放射線計測協会の標準料金を元に、費用感を紹介しますので参考にしてください。
線量率計
γ線量率計・x線量率計
γ線を計測できる線量率計である「GM計数管式サーベイメータ」は校正点数3点で33,000円、「NaIシンチレーション式サーベイメータ」は校正点数2点で47,190円です。
また、γ線とx線を計測できる「電離箱式サーベイメータ」は校正点数1点で48,400円です。
中性子線量率計
中性子を計測できる「中性子サーベイメータ」は校正点数2点で海外製で125,400円、国内製で120,120円です。
汚染検査計
α線汚染検査計・β線汚染検査計
α線を計測できる「α線表面汚染サーベイメータ」は校正点数1点で34,540円、β線を計測できる「β線表面汚染サーベイメータ」は校正点数1点で33300円です。
α線とβ線を計測できる「α/β線表面汚染サーベイメータ」は校正点数2点で43,120円です。
3H線汚染検査計
3H線を計測できる「トリチウム表面汚染サーベイメータ」は校正点数1点で56,540円です。
γ線汚染検査計
γ線を計測できる「125I表面汚染サーベイメータ」は校正点数1点で34,540円です。
個人線量計
x線個人線量計
x線を計測できる個人線量計は校正点数1点で14,190円です。
γ線個人線量計・中性子個人線量計
γ線を計測できる個人線量計は校正点数1点で5,610円、中性子を計測できる個人線量計は校正点数1点で19,030円です。
また警報付の個人線量計もあり、γ線を計測できるものは校正点数1点で9,570円、γ線と中性子を計測できるものは校正点数2点で26,070円です。
まとめ:放射線測定器の校正や点検は法令で定められた周期や期間を守ること。
放射線測定器の正確性をや精度を確保するためには、定期的な保守点検や校正が必要不可欠です。
校正・点検を実施することやその方法・周期も国の法令で指定されています。
放射線の測定には、放射線測定器$の正しい検査方法や校正周期を守り、安全を保つようにしてください。