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【事故を防ぐ】硫化水素濃度の基準値は?測定方法についても解説

硫化水素は無色の水溶性で、腐敗した卵に似た特徴的な強い刺激臭がある気体です。

主な発生源は、火山や温泉地帯の噴気孔からの排出、空気が供給されない汚水管などの環境下など。自然界や人工環境に関わらず、日常的に発生する可能性があります。

温泉好きの人であれば、おなじみの臭いかもしれません。

また、硫化水素は有機合成における還元剤や金属精錬、および農薬や医薬品などの原料としても有効活用されている側面もありますが、濃度によっては死亡事故を招きかねません

万が一の事故を防ぐためにも、硫化水素が発生し得る現場の責任者は、硫化水素濃度の危険な基準値や、空間内の空気の測定方法について知っておく必要があります。

本記事でしっかり知識を深め、現場の安全を保つようにしてください。

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硫化水素の危険性について

硫化水素は、空気中の硫化水素濃度によって軽度の体調不良〜最悪の場合、死亡事故につながる大きな危険性を持っています。

例えば、硫化水素の大きな特徴の一つとして強い刺激臭があります。この強い刺激臭で体調を崩す人も多く、悪臭防止法施行令 第1条では「特定悪臭物質」に指定されています。

また、硫化水素濃度が上昇していくと酸素濃度が減少し、結果、酸素欠乏症で死亡事故に至るケースも。

以下で「硫化水素中毒」と「酸素欠乏症」の二つについて解説していきます。

硫化水素中毒

硫化水素中毒とは、硫化水素濃度が10ppmを超える空気を吸入すると発症する症状です。

嗅覚の麻痺や目の損傷をはじめ、呼吸障害や肺気腫などを引き起こします。100ppmを超える高濃度の場合は、時間の経過による死亡や、即死事故も発生します。

硫化水素中毒に至る濃度の基準および体への影響

硫化水素濃度 症状など
0.3ppm
臭いを感じる濃度。腐った卵のような臭い。
3~5ppm
不快臭に変わる。
10ppm
許容濃度・眼の粘膜刺激下限界。
20~30ppm
嗅覚が麻痺して、臭いがわからなくなる。気管支炎・肺炎・肺水腫を起こすケースも。
100ppm
長時間吸い続けると命を落とす場合も。
700ppm
脳神経に作用し、意識障害や呼吸麻痺。死亡の可能性
5000ppm 即死の危険

硫化水素の許容濃度は10ppmであり、20~30ppmの濃度では嗅覚が麻痺し、臭いがわからなくなっていきます。

また、気管支炎・肺炎・肺水腫などの硫化水素の中毒症状も出てくるケースも。

100ppmを超えると長時間で窒息死してしまう可能性が出てくるほか、700ppmを超えると脳神経に作用し呼吸麻痺で死亡してしまい、5000ppm以上では即死の危険性まであります。

20ppmを超える濃度では嗅覚が麻痺するため、くれぐれも臭いで硫化水素の濃度確認をするということは避けてください。

硫化水素中毒が発生する場所および業種

硫化水素中毒が発生する現場としては、マンホールや汚水タンク、温泉地などがあります。業種は清掃業や機械修理業、食料品製造業など。

例えば箱根の大涌谷のような温泉観光地では、たびたび火山ガスの硫化水素濃度が上昇し、観光客を避難させたり、一定期間侵入禁止や通行止めにする措置を行うことがあります。

大涌谷橋の火山ガスの基準は、2ppm以上で注意喚起がはじまり、10ppm以上で通行止めが発生します。(参考:箱根町ホームページ

過去の事故例としては、工業用汚水管の洗浄および調査を行う業務において、マンホールに侵入し栓の詰まりを解消した際に溜まっていた汚水が流れ込み、発生していた硫化水素により被災したものがあります。

また、汚水タンクに設置された排水ポンプの修理作業を行っていた現場において、排水ポンプのつながっているタンク内に侵入した際に硫化水素が発生していたため意識を失い、死亡した例も。

さらに水産加工業において、プラントから魚滓の血汁が漏れているのを発見し、原因除去のためタンク内部に入ったところ、硫化水素中毒になった例もあります。

また、助けに行った人も硫化水素中毒になってしまう二次被害の危険がありますので、硫化水素中毒が疑われる現場で倒れている人がいてもむやみに助けに行くのは危険です。

なお、労働安全衛生法の施行令別表第6において以下の2項目が硫化水素中毒発生の危険場所として挙げられています。

  1. 汚水や腐敗分解しやすい物質が入っているタンクなどの内部
  2. 海水が滞留している熱交換器などの内部

上記現場作業の可能性がある場合は、硫化水素中毒にならないよう、事前にしっかり対策しておいてください。(防止策は後述します)

酸素欠乏症

酸素欠乏症とは酸素濃度18%未満の空気を吸入すると発症する症状です。

濃度による症状や、発生しやすい現場や業種について解説していきます。

酸素欠乏症に至る濃度の基準および体への影響

酸素濃度 症状など
21% 通常の空気
18%
安全限界。連続換気が必要
16%
集中力の低下やミスの増加。頭痛や吐き気など
12%
目眩や筋力低下など
8%
失神昏倒。7分から8分以内に死亡
6%以下
瞬時に昏倒。呼吸停止・死亡

通常、空気の酸素濃度は21%となっており、酸素濃度18%が安全限界、16%から頭痛や吐き気の症状が見られるようになります。

酸素濃度12%未満になると目眩や筋力低下が見られ、8%を下回ると失神し、7分から8分以内に死亡の可能性。

6%を下回ると、その空間に入った瞬時に昏倒して呼吸が止まり、死亡します。

酸素欠乏症が発生する場所および業種

酸素欠乏症が発生する現場としては、タンク清掃などの清掃業や建設現場、化学工業製品製造業やドライアイスを扱う運輸交通など。

事故例としては、清掃業において汚水槽の汚泥をバキューム車で搬出作業を行った後、 自社駐車場に戻りバキューム車のタンク内に入り洗浄を行っていたところ酸素欠乏症により死亡した例があります。

また、建設現場にて、地下ピット内に溜まった水を排水しようと中に入ったところ、2カ月以上ピット口を閉じたま密閉状態のためにで内部が酸素欠乏状態になっており、酸素欠乏により死亡した事例も。

ほかにもドライアイスで保温されていた冷蔵冷凍車の荷台内に入り、死亡した事例もあります。

また、被災者を助けに行った人も酸素欠乏症になってしまう場合もありますので、酸素欠乏症の起こり得る現場で倒れている人がいても無防備で助けに行くのは危険です。

労働安全衛生法の施行令別表第6において以下の13項目が酸素欠乏症発生の危険場所として挙げられています。

  1. ・特殊な地層に接しているか通じている井戸などの内部 
  2. ・長期間使用されていない井戸などの内部 
  3. ・地下に敷設される管を収容するために設置されているマンホールやピットの内部 
  4. ・雨水などが滞留しているマンホールやピットなどの内部
  5. ・海水が滞留している熱交換器などの内部
  6. ・相当期間、密閉されているもしくは密閉されていた鋼製のボイラーなどの内部
  7. ・石炭などの空気中の酸素を吸収する物質が入っている貯蔵施設の内部
  8. ・乾性油のペイントで内部が塗装された地下室などの通気が不十分可能性のある施設の内部
  9. ・穀物の貯蔵や果菜の熟成などに使用しているサイロなどの内部
  10. ・しょう油や酒類など、発酵するものを入れている(または入れたことのある)タンクや醸造槽などの内部
  11. ・汚水など腐敗分解しやすいものが入っているタンクなどの内部
  12. ・ドライアイスを使用している冷蔵庫や冷凍庫、および船倉などの内部
  13. ・窒素等不活性の気体を入れてあるか入れたことのある施設の内部 

詳しくは労働安全衛生法(別表第六 酸素欠乏危険場所(第六条、第二十一条関係))を参照ください。

法令で決められている硫化水素による事故の防止策

硫化水素による事故防止策として、以下のようなものがあります。

  • ・危険場所を事前に濃度測定する
  • ・危険作業における主任者を選任する
  • ・酸素欠乏・硫化水素危険作業にかかる特別教育を実施する
  • ・立入禁止の表示を行う
  • ・適切な装備で酸素濃度測定を行う
  • ・危険場所では作業時も保護具を使用する
  • ・できるだけ常に換気する
  • ・監視人を配置し、異常時は救急要請を
  • 二次災害の防止

これらは、酸素欠乏症等防止規則で定められているものや、厚生労働省による「酸素欠乏症等災害防止対策の徹底について」および「酸素欠乏症等災害発生防止パンフレット」に記載されているものになります。

一つずつ確認し、守れていないものがあったらすぐにでも実施するようにしてください。

危険場所を事前に濃度測定する

作業する現場の酸素濃度や硫化水素濃度を事前に測定し、安全かどうか確認してください。とくにタンクやピット内作業、そのほか硫化水素中毒や酸素欠乏症になりやすい場所は、事前確認が必要です。

危険作業における主任者を選任する

作業の現場指揮をする主任者の選任は、労働安全衛生法第14条で定められています。

選任対象者は「酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者講習」の受講が必要です。

この講習には、酸素欠乏症や硫化水素中毒、救急蘇生に関する知識や酸素欠乏、硫化水素の発生原因、防止措置に関する知識などの内容があるほか、保護具に関する知識や関係法令などがあります。

主任者はその場の現場長にあたる人が兼任してもいいかもしれません。

酸素欠乏・硫化水素危険作業にかかる特別教育を実施する

酸素欠乏症の危険場所において作業に従事する労働者には、事前に酸素欠乏症や硫化水素中毒の予防に関する知識の講習などの特別教育を受講させてください。

こちらも法令で定められております。

実施する項目は、酸素欠乏等の発生原因や酸素欠乏症等の症状、および空気呼吸器等の使用方法や事故の場合の退避及び救急そ生の方法などです。

実施する頻度は高くある必要はないですが、人員の入れ替えがあった時や年に1度などに行うことで全員が危険性について認識している状態であることが必要です。

立入禁止の表示を行う

危険場所に誤って立ち入ることのないように、その場所の入口などの見やすい場所に立ち入り禁止の表示を行いましょう。

適切な装備で酸素濃度測定を行う

保護具の着用など測定者の安全を確保するための措置を行った上で、酸素濃度や硫化水素濃度の測定を行います。

特に酸素濃度18%未満の環境では自給式呼吸器や送気マスク、および化学防具服などの装備が必要です。

できるだけ常に換気を実施する

常に作業場所の酸素濃度が 18%以上、硫化水素濃度が 10ppm 以下になるよう換気しましょう。

送風機を使用して外から現場内部へ新鮮な空気を取り入れることで、換気になります。

ただし、換気すると同時に酸素欠乏空気や硫化水素の漏えい、流入がないよう注意も必要です。

危険場所では作業時も保護具を使用する

どうしても換気できない作業場所のときや、換気しても酸素濃度が 18%以上、硫化水素濃度が 10ppm 以下にできないときは、送気マスクなどの呼吸用保護具を着用しましょう。

呼吸用保護具には「給気式」と「ろ過式」がありますが、危険場所の場合は必ず空気呼吸器や酸素呼吸器、およびホースマスクやエアラインマスクなどの「給気式」の呼吸用保護具を選びましょう。

また、保護具は同時に作業する作業者の人数と同数を備えておくことが必要です。

監視人を配置し、異常時は救急要請を

酸欠症や硫化水素中毒のおそれがある現場作業では、かならず監視人を配置。作業場所の酸素濃度や作業員自身に異常がないかをつねに監視させるようにしてください。

万が一異常が起こった場合は、すぐに作業員を退避させ、必要に応じて救急要請をしてください。

また、可能なら送風機で外気を送るなどの対処もできます。

二次災害の防止

作業員に異常があった場合、あわてて救助しに行かないよう注意が必要です。

すぐに救助したい気持ちはわかりますが、エアラインマスクや空気呼吸器を装着し、自身に酸素欠乏症や硫化水素中毒の危険が及ばないことを確認してから、救助に向かってください。

無防備で救助に向かうと、救助者まで意識不明や死亡事故につながる可能性があります。

硫化水素濃度を測定する方法と注意点

硫化水素濃度の測定には、硫化水素計を使用します。

持ち運びしやすい小型のタイプや定置タイプ、硫化水素だけでなく酸素やほかのガスを同時測定可能なものまであります。

作業する現場によって、適切な硫化水素計を選んでください。

ただし、どのような現場であっても垂直方向・水平方向それぞれ3点以上計測する必要があります。

測定するのに長さが足りない場合は、延長コードを使用するなど工夫をして、計測をサボらないよう注意が必要です。

また、硫化水素の安全限界10ppmはどこでも共通です。

現場作業に入る前に、必ず硫化水素濃度や酸素濃度を計測し、濃度が10ppmを超える場合は、換気や呼吸器などの装備で事故防止に努めてください。

また、測定器自体も、不具合や故障がないよう、定期的に校正するよう徹底しましょう。

なお、硫化水素濃度の測定は、技能講習を修了した主任者である必要があります。

まとめ:適切な場所やタイミングでの酸素濃度測定で、深刻な事故を未然に防ぐ

硫化水素は硫化水素中毒や酸素欠乏症を発症させ、死亡事故も発生させる可能性があるなど危険な気体です。

一方で適切な場所やタイミングでの酸素濃度測定で、危険な箇所をあらかじめ把握して対策を取ることで深刻な事故を防ぐことも可能です。

自然界や人工環境において、硫化水素の発生や酸素欠乏箇所をなくすことはできません。

そのため、適切な酸素濃度測定によって基準値を超えていないか常にチェックしていきましょう。

また換気を行うことで事故が発生する環境にならないよう意識して行動することで事故を未然に防ぐよう努めてください。

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