長時間記録できる電圧測定方法|データロガーの選び方やメリット、注意点など
電圧・温度・電流などを測定できるデータロガーは比較的安価で購入でき、長期間記録できるため電圧測定時に重宝されている機器です。
電圧測定できる機器は他にもありますが、データロガーを選ぶメリットは何なのでしょうか。
本記事では、データロガーを使うメリットや選び方、測定時の注意点などを解説します。
目次
電圧測定時の記録方法
電圧測定器には、データロガーをはじめ、デジタルマルチメータやオシロスコープ、メモリハイコーダ、汎用レコーダなどさまざまな種類があります。
それぞれの特徴・記録方法は以下の通りです。
特徴 | 記録方法 | |
データロガー |
・電圧や温度を同時に測定できる ・高精度な測定が可能 ・独立して測定できる ・記録を目的とした機器 |
・USBメモリやSDメモリカード ・内部メモリ |
デジタルマルチメータ |
・測定を目的とした機器 ・新しい機器では記録も可能 |
・USBメモリ ・GPIB*1 ・RS-232C*2 |
オシロスコープ |
・電圧や周波数を測定できる ・波形で見ることができる |
・USBメモリ ・通信インターフェイス |
メモリハイコーダ |
・電圧の中低速域で変化する波形の観測、記録ができる |
・紙 |
汎用レコーダ | ・装置やプロセスの温度など低速な波形の変化の観測、記録ができる | ・紙 |
*1:パソコンと計測器を接続するインターフェイス
*2:接続コネクタを使用するインターフェイス
電圧測定でデータロガーを使うメリット・デメリット
電圧測定でデータロガーを使うメリットは何なのでしょうか?デメリットも合わせて解説します。
メリット
メリットは以下のとおりです。
- ・長時間の記録が可能
- ・計測ユニット(計測設備を増やせる)
- ・ノイズの影響が少ない
- ・操作が簡単
- ・電圧以外の測定が可能
順に見ていきましょう。
長時間の記録が可能
データロガーの1番のメリットは長時間の記録ができることです。
1度計測をスタートすれば、数日間・数週間、機器によっては数年間の記録ができます。
また、何百万の記録が可能のため、長期間多くのデータを記録したい場合に非常に大きなメリットだと言えます。
計測ユニット(計測設備)を増やせる
現時点で少数の計測ユニットでまかなえても、将来的に多数の計測ユニットが必要になる場合があります。
データロガー以外の測定器はチャンネルを拡張できないことが多いです。
そのため、拡張時には別の機器を購入しなければいけません。
拡張可能なデータロガーを選べばチャンネルを増やせるだけでなく、コストも削減できます。
ノイズの影響がない
データロガーはノイズの影響がない「チャンネル間絶縁(CH間絶縁)」が搭載されている場合が多いです。
ノイズが入ると計測結果が不正確になってしまうため、非常に重要な機能だと言えるでしょう。
操作が簡単
データロガーのメリットとして、操作が簡単であることもあげられます。
電圧測定は1人だけが行うものではありません。
データロガーは数人で使用するため、難しい操作だと属人化してしまう可能性があります。
操作方法はもちろん、設定方法も簡単なデータロガーであれば、誰でも使用できることに加え、作業効率もアップするでしょう。
また、素早くデータ送信ができることも嬉しいポイントです。
パソコンとの無線通信で遠隔操作できるものや、USBやケーブルで送信できるものなど、さまざまな種類があります。
特に無線通信であれば、作業効率がアップするだけでなく、配線トラブルの心配もなくなります。
電圧以外の測定が可能
電圧だけでなく、他の分野も測定する可能性がある場合もデータロガーが役立ちます。
データロガーの中には、1台で複数の種類のデータを集めることが可能なものがあります。
1台に集約すれば、データ化にかかる時間や手間を削減できたり、トラブル減少できたりなど、さまざまなメリットが生まれるでしょう。
デメリット
デメリットは以下の通りです。
- ・測定機能の数が少なめ
- ・高額機器よりスペックが低め
順に見ていきましょう。
測定機能の数が少なめ
データロガーは記録を目的とした機器です。
そのため、他電圧測定器と比較して測定機能の数は多くありません。
しかし、計測ユニットを組み合わせれば目的に合わせて複数の測定が可能です。
高電圧にも対応できるため、使用方法によってはメリットになる場合もあります。
高額機器よりスペックが低め
高速波形記録計など価格が高めな機器に比べると、どうしてもスペックが低くなってしまいます。
電圧のほか、振動や制御信号など多数の計測が可能なものが多く、電圧以外にもさまざまな測定がしたい方には向いていないかもしれません。
一方、電圧以外に数種類測定を追加したい方にとっては、高額機器はオーバースペックとなるため、注意が必要です。
電圧測定に使うデータロガーの選び方
電圧測定に使うデータロガーは、4つのポイントを抑えて選ぶ必要があります。
簡単な操作・容易なインターフェイスである
前述の通り、データロガーは複数人が使用するものです。
そのため、複雑な設定・操作のものより、誰でも簡単に使用できるものを選ぶといいでしょう。
また、作業効率アップのため、データをすぐに確認できる機能がついているものをおすすめします。
例えば、社内ネットワークがなくてもデータ移行ができる無線LANや、CAN BUS、USB、接続ケーブルなどのインターフェイスが使用できるものを選ぶとよいでしょう。
必要な精度である
データロガーで電圧測定を行う場合には、最小桁数・絶対値を明確にしなければなりません。
データロガーでは、最小桁数を「表示分解能」、絶対値を「絶対精度」と呼びます。
必要な感度である
感度が必要最低限であることも重要です。
データロガーのような計測器では、感度のことを「分解能」とも呼びます。
分解能とは、計測可能なもっとも小さい値のことです。
精度と似たような意味を持ちますが、分解能は測定の細やかさの限界を表し、精度は緻密さを表します。
他機器と比較して低コストである
電圧測定以外に他の分野の測定も行う場合・将来的に行う可能性がある場合には、データロガーを選んだ方が低コストに抑えられます。
他機器で多チャンネルを測定する場合には、多額なコストがかかります。
そのため、電圧測定以外にも測定する場合にはコストの低いデータロガーを選ぶようにしましょう。
データロガーの電圧測定時の注意点
データロガーで電圧を測定する時の注意点は以下の10個です。
順にみていきましょう。
使用前に機器・ケーブルに損傷がないかを確認する
データロガー使用前にまず確認するのは、機器・ケーブルに損傷がないかです。
新しい機器で測定する際には、輸送の時などで損傷が生まれていないかを確認し、保管している際には故障していないかを確認します。
損傷の確認後は動作確認を行う必要があります。
また、ケーブルの点検を行うことも大切です。
ケーブルを覆うものが破れていないか、金属が露出していないかを確認します。
もし損傷している場合は感電事故につながりますので、必ず点検を行うようにしてください。
説明書通りに測定する
データロガーは安全規格にのっとって設計・製造されています。
取扱説明書に記載されていることも、安全規格に従ったものであるため、必ず説明書通りに測定してください。
もし説明書通りの測定ができなかった場合には、機器の故障だけでなく、人身事故が起きる可能性もあります。
停電対策を行う
停電してしまうと、記録が途切れたり記録が削除されてしまう機器もあります。
データロガーを使用する前には、電気復旧後に継続して記録できるよう、仕組みづくりを行う必要があります。
停電防止はできないため、機器で対策をとるようにしましょう。
接続ケーブルをショート(短絡)させない
ケーブルを接続する際には、ショートさせないことが重要です。
長時間コンセントに刺さないようにしたり、折ったり引っ張ったりしないようにしてください。
ショートしてしまうと機器の故障に加え、感電事故が起きる可能性があります。
埃や水滴が機器に入らないようにする
埃や水滴が機器に入ると、故障の原因となります。
場合によっては人身事故が起きる可能性もあります。
機器によっては防塵・防滴となっているものもありますが、完全に防げるものでないことが多いです。
長時間コンセントに刺していれば埃が溜まり、多湿状態の場所では結露で水滴が入ってしまいますので注意してください。
機器に衝撃を与えない
機器は安全性のある状態で発送されます。
しかし、機器を落としたり、激しい振動を与えたりなどの衝撃があれば故障の原因となります。
固定できる機器であれば、強く押して設置してはいけません。
データロガーは丁寧に扱うようにしましょう。
最大定格電圧を超える入力はしない
データロガーは機器ごとに最大定格電圧が定められています。
最大定格電圧を超えてしまうと感電など人身事故や、故障の原因となってしまいます。
データロガー使用前には説明書で最大定格電圧を確認するようにしてください。
ノイズが入らないようにする
データロガーはノイズが混じると正しく測定できない可能性があります。
ノイズが入らないように、接続ケーブルをノイズケーブルとわけると効果的です。
また、ノイズが混じらないデータロガーを選ぶのもいいでしょう。
基準接点を統一する
基準接点を統一しなければ、温度が不安定になってしまいます。
温度の差によって起電力が発生する場合には、端子盤温度を冷却する外部冷接点補償器を使ったり、氷を使ったりすることが大切です。
また、基準接点補償回路に温度センサを組みこむことで温度を統一することも可能です。
1週間使用しない時は電池を抜く
電池で起動するデータロガーを使用する際には電池を抜き、液漏れを防ぐ必要があります。
電池の液漏れは腐食・機器の損傷につながります。
1週間またはそれ以上使用しない時には電池を抜くようにしてください。
まとめ:電圧測定記録にデータロガーが向いているのは
電圧を測定できるデータロガーは、操作が簡単かつ長時間の記録が可能なため、さまざまな方が長期間使用する際に非常に便利な機器です。
また、1つの計測ユニットだけでなく、複数のユニットを追加できるため、将来的にチャンネルの拡張をしたい場合に便利な機器だとも言えます。
なるべくコストを削減して長期間電圧を測定したい場合には、データロガーを選ぶようにしましょう。