最適な温度湿度計データロガーを見つけるおすすめの選び方を解説
「屋内の温湿度を一定に保ちたい」「測定したデータを記録として残したい」そんなときに役立つ装置が温度湿度計データロガー(以下、温湿度ロガー)です。
温湿度ロガーを導入すると、温湿度センサーによって屋内の温湿度を正確に測定できるほか、測定したデータ保存・分析して日常の業務改善もできます。
ただし温湿度ロガーは、使用用途によって選ぶべき製品が異なるため注意が必要です。
本記事では、自社に最適な温湿度ロガーを見つけたい人に向けて、温湿度ロガーの選び方と運用上の注意点について解説します。
はじめに温湿度ロガーの概要を紹介しますので、これから業務管理に温湿度ロガーを利用する予定の方にも役立つ内容です。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
温度湿度計データロガーとは?
はじめに、温湿度ロガーの概要や使用用途、種類と内部構造についてそれぞれ確認しましょう。
温度湿度計データロガーの概要と内部構造
温湿度ロガーとは、「温度や湿度のデータを測定して自動的に記録する装置」です。
温湿度ロガーを活用すれば、作業環境の把握だけでなく、測定データを生かして環境改善にも取り組めます。
従来の温度計との大きな違いは、大規模なデータ集計も可能であること。
以前の集計方法では、温度計のデータ集計は手作業で行う必要がありました。そのため設置した温度計の数が多い場合、データ集計が煩雑になるという問題点があったのです。
しかし、デジタル技術の進歩によって温湿度ロガーが開発されると、正確な測定と同時に大量のデータを短時間で収集できるようになりました。
現在は温湿度の厳格な管理が要求される現場に温湿度ロガーが導入され、さまざまなシーンで活躍しています。
温湿度ロガーの主な構成内容は、以下の通りです。
- ・温湿度センサー
- ・データを保存する機能
- ・電源
- ・ディスプレイ
データを保存する機能には「メモリ内蔵タイプ」「SDカード接続タイプ」の2種類があります。
メモリ内蔵タイプは本体にはじめから保存装置が内蔵されていますが、SDカード接続タイプの場合、SDカードを別途用意しなくてはいけませんので注意しましょう。
電源には、電池を入れて動くタイプとアダプターを差し込んで動くタイプがあります。
ほとんどの温湿度ロガーは手のひらサイズの携帯しやすい大きさとなっており、大きいものでもスマートフォンと同じくらいのサイズです。
種類
温湿度ロガーは、温湿度センサー、ディスプレイ、電源などが一体になっているスタンドアロンタイプが一般的です。
持ち運びが簡単で単独でも使用できるため、多くの現場に導入されています。
中には、使用は1度だけの使い切りタイプである「ワンタイムロガー」やディスプレイのない簡易的なタイプも存在します。
なお、保存したデータをパソコンなどの端末に移す方法もそれぞれ異なりますので確認しておきましょう。
種類 | 特徴 |
USB接続タイプ | USBケーブルをPCやタブレット端末に直接接続することで、保存データを取得する |
無線接続タイプ | 集めたデータをBluetoothなどの無線通信を利用してタブレット端末に移行する |
クラウドタイプ | 集めたデータをクラウドサーバーにアップロードする 別のPCやタブレット端末でクラウドサーバーにアクセスすることで、集めたデータを確認できる |
主な使用用途
温湿度ロガーの主な使用用途は、以下の通りです。
- ・食品工場や製薬工場の品質管理
- ・農業などの生産管理
- ・美術館や研究室などの環境管理
- ・気象観測といった自然環境の計測
食品や薬を製造する現場では、温度や湿度が品質に影響をあたえるおそれがあります。
品質を一定に保つために、環境をモニタリングする必要があるでしょう。
農業などの生産管理や美術館などの環境管理現場でも同様です。
温湿度ロガーを導入すれば温湿度を一定に保ったり適切な環境を構築できたりするため、業務管理に役立つのです。
温度湿度計データロガーを選ぶために知っておきたいおすすめポイント
最適な温度湿度計データロガーを選ぶためのポイントがこちらです。
- ・温度湿度の対応範囲
- ・記録間隔や保存容量
- ・操作性
- ・データの抽出方式
- ・使用環境
それぞれみていきましょう。
温度湿度の対応範囲
温湿度の対応範囲は製品によって異なるため、使用目的に合わせた温湿度ロガーを選ぶことが重要です。
使用目的に応じた温湿度ロガーを選択しないと、正確な測定ができないだけでなく製品の破損につながるおそれもありますので、必ず使用環境に応じたタイプを選択してください。
まずは温度の対応範囲に注目しましょう。
温湿度ロガーが低温環境に対応したタイプなら-40℃から対応していますし、高温環境に対応したタイプなら100℃以上の環境にも対応できます。
湿度の対応範囲ですが、こちらは0%から100%の範囲で対応可能です。ただし機種によっては測定範囲の下限が10%の製品や上限が90%の製品もあります。
製品を選ぶ際は、使用目的に合わせて温湿度の対応範囲もチェックしてください。
記録間隔や保存容量
記録間隔や保存容量も確認すべき項目です。
「記録間隔」とは、一定時間ごとにデータを取得して保存する機能を意味します。記録間隔が短いと、データの保存量が多くなるため注意が必要です。
保存容量に余裕がないタイプを選んでしまうと、調査のたびに保存容量を空ける作業が発生するかもしれません。
記録間隔が短い場合は、保存容量の大きいタイプを選択してください。
操作性
温湿度ロガーを選ぶ際は、使用するスタッフの知識に合わせて操作性のよい製品を選びましょう。
多機能の温湿度ロガーを導入しても、操作に慣れないスタッフが誤って設定を間違えたり測定データを削除してしまったりしては手間だけ増えてしまいます。
ディスプレイの有無もポイントです。
ディスプレイのないタイプは、ディスプレイのあるタイプに比べてリーズナブルな価格が特徴。
しかし「取得したデータをPCなどに接続するまで中身を確認できない」というデメリットが存在します。
一方ディスプレイがある場合、その場で測定している数値をモニタリングできるため、リアルタイムで現場管理したい際に非常に役立ちます。
作業環境や予算に合わせて適切なタイプを選択してください。
データの抽出方式
温湿度ロガーのデータをPCやタブレット端末に移行する(抽出する)方法に、USB、Bluetooth、Wi-Fi方式があります。
自社の環境に合わせた温湿度ロガーを選択できれば、データの収集や分析も効率的に進むでしょう。
例えばUSBタイプでデータを抽出する場合、以下の工程を踏むことになります。
- 1.本体をPCの側に持ち運ぶ
- 2.温湿度ロガーとPCを有線ケーブルでつなぐ
- 3.PCを操作してデータを移行する
もしBluetoothの温湿度ロガーを活用した場合は、上記の 1と2の工程が省略されます。温湿度ロガーから、スマートフォンやタブレット端末にデータを移行できるため、業務の簡略化につながります。
自社の環境に合わせて機能に過不足ない温湿度ロガーを導入することで、予算の浪費を防げるでしょう。
使用環境
温湿度ロガーには、屋内で使用するものや屋外で使用するものがあり、それぞれ防水や防塵加工が施されています。
不適切な環境で温湿度ロガーを使用してしまうと、正確なデータを測定できない可能性が高まるほか本体が故障しやすくなるかもしれません。
使用環境にも注意して温湿度ロガーを選びましょう。
温度湿度計データロガーを運用する際の注意点
温湿度ロガーを効果的に運用するための注意点が以下の内容です。
- ・適切な場所に設置する
- ・精度を維持するために校正する
- ・バッテリーの寿命に注意する
- ・測定データを効率よく収集する
それぞれ具体的に解説します。
適切な場所に設置する
正確なデータと取得するために、温湿度ロガーを適切な設置場所に設置しましょう。
より正確なデータを測定するために、以下のような場所を避けてください。
- ・エアコンやストーブの風があたる場所
- ・加湿器が近くにある場所
- ・乾燥しやすい場所
- ・直射日光のあたる場所
- ・窓やドアの近くといった風通しがよい場所
- ・不安定で振動が発生する場所
上記の項目を避けた上で、ディスプレイが見やすく操作しやすい場所に設置するのがおすすめです。
視認性を高めるとスタッフの作業が効率よく進むでしょう。
精度を維持するために校正する
温湿度ロガーの測定精度を維持するために、定期的に校正してください。
温湿度ロガーの測定精度は、長期間の使用や測定環境の変化などによって、センサー精度が下がってしまうかもしれません。
校正方法には、メーカーや校正機関に校正を依頼する方法と自分で校正する方法があります。
自分で校正する場合、対象の温湿度ロガーと校正用の測定器(湿度発生装置など)を用意して、測定したデータの差異を確認する方法が一般的です。
具体的な校正方法や校正の頻度を温湿度ロガーの製造元に電話やメールで確認しましょう。製造元の指示に従って正しい方法で校正してください。
バッテリーの残量に注意する
バッテリーの残量に気をつけていないと、測定途中にバッテリー切れを起こすかもしれません。
測定途中にバッテリー切れを起こすと、最悪の場合測定のやり直しという膨大な手間が発生する可能性があります。
ほとんどの温湿度ロガーにはバッテリー残量をチェックできる機能が備わっていますので、定期的にバッテリー残量を確認したり予備のバッテリーや充電装置を用意したりして、バッテリー切れに対処できる体制を整えておきましょう。
測定データを効率よく収集する
測定データを効率よく収集できると、コスト削減につながります。
もしも温湿度ロガーの設置台数が多い場合は、時間や労力を節約するために、測定データを自動収集できる仕組みをつくるとよいでしょう。
Bluetoothなどの無線通信に対応している温湿度ロガーを選べば、スマートフォンやタブレット端末へ直接データを移行できます。
温湿度ロガーの設置台数が多くても、同時並行的なデータの収集が可能になるため、作業時間の短縮化に役立つのです。
もしも、温湿度ロガーを一つひとつ集めてデータを個別取得していくと膨大な時間がかかってしまいます。
測定データの収集方法にも注意して、作業効率を高めてください。
温度湿度計データロガーは選ぶポイントや注意点を押さえてから導入するのがおすすめ
温湿度ロガーを導入すると、温湿度の精密な管理が可能になります。
温湿度の精密な管理は製品の品質確保や生産量増加にもつながるため、作業効率を高める上で今後も欠かせない業務と言えるでしょう。
ぜひ本記事を参考にしていただき、自社のプロジェクトに最適な温湿度ロガーを見つけてください。