屋外作業が多い職業は必見!現場でできる熱中症対策5選
気温や湿度が高まる夏にかけて、熱中症リスクが高い現場では、従業員の命を守るための熱中症対策が欠かせません。
しかし、「熱中症の詳しい症状や原因を教えてほしい」「熱中症が発生しやすい現場を知りたい」「現場でできる熱中症対策を教えてほしい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、熱中症が発生しやすい現場に焦点をあてて、熱中症の概要から効果的な熱中症対策まで解説します。
熱中症が発生したときの対応方法や熱中症対策グッズも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
熱中症とは
熱中症とは、高い気温や湿度などが原因で、体温調整機能の働きが乱れている状態を指します。
体温を適切に調整できないと、体内の水分量や塩分量をコントロールできなくなり、めまい、頭痛、吐き気といった症状が発生します。
厚生労働省が発表した「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、2012年から2021年の10年間に、死傷者数(死亡者および休業4日以上の業務上疾病者を指す)は年平均で639人と高い数値になっていることがわかりました。また、そのうち21人もの方が残念ながら亡くなっています。
作業現場には熱中症リスクを高める要因が複数備わっているため、現場統括者にとって熱中症対策は必須業務といえるでしょう。
参考:厚労省|令和4年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
重症度 | 症状 | 対応方法 |
Ⅰ度 | 立ちくらみ 筋肉痛 こむら返り 大量の発汗 |
現場での応急処置で対応できる |
Ⅱ度 | 頭痛 吐き気(嘔吐) 虚脱感 体のだるさ その他の不快感 |
病院の受診が必要 |
Ⅲ度 | 意識障害 けいれん 運動障害 高体温(体が熱を持っている状態) |
入院・集中治療が必要 |
熱中症の発生リスクを高める要因がこちらです。
- ・高い気温や高い湿度
- ・日光を直接浴びる
- ・風がないまたは弱い
体の状態も発生リスクに大きな影響をあたえます。
- ・激しい運動をしている
- ・二日酔い、寝不足などの体調不良がある
- ・糖尿病などの持病がある
- ・体が暑さに慣れていない
熱中症は、外部の環境と体の状態という2つの要因が重なったときに発生しやすい症状です。
特に気温や湿度の落差が激しい日は要注意。
外側の環境に急激な変化が起こると、体の順応が間に合わず熱中症が起こりやすくなると考えられるからです。
現場経験が長い作業員も例外ではありません。「涼しい日が続いていた後に急激に暑くなった日」「梅雨明けで快晴の日」といった気温や温度の落差が激しい日は注意する必要があります。
熱中症が発生しやすい現場とは
熱中症が発生しやすい現場とは、「高温多湿な環境になりやすい」「筋肉を激しく動かす重労働を伴う」といった現場です。
具体的には、以下のような現場を指します。
- ・建設業
- ・製造業
- ・運送業
- ・警備業
現場の特徴を把握して、あらためて発生原因について見識を深めましょう。
なお、ご紹介する統計の数値は、「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」から抜粋しています。
建設業
建設業は、屋外で作業することの多い現場です。
屋外は高温多湿な環境になりがちで、作業員は安全のために分厚い作業着を着ています。
さらに作業内容の多くは、筋肉を激しく動かす重労働です。そのため、体の内側で発生した熱が内側にこもりやすく熱中症を発症しやすいのです。
熱中症によって亡くなった方を指す「死亡災害」を業種別に確認すると、2022年に発生した28件の死亡災害のうち13件が建設業で発生しています。
2018年から2021年までの統計をみても、建設業は最も熱中症による死傷者が多い現場です。
製造業
製造業は、建設業に次いで死亡災害が発生している現場で、熱中症対策は必要不可欠といえるでしょう。
しかし、製造業は屋内での作業がメインとなりますので、「室内で作業しているのになぜ熱中症になるの?」と疑問を感じる方もいるかもしれません。
その理由は、工場の屋根に直接日光が照射されることで発生する放射熱にあります。工場内に日光が照射されなくても、放射熱によって室内の温度が上昇するのです。
工場内で休みなく稼働している機械から発生する熱も、室内を高温にする原因となります。
また、作業員は立ったまま作業することも多く、機械の動作や製品の品質に気を割く必要もあるため、「気づいたら熱中症になっていた」というケースも考えられるでしょう。
運送業
運送業も熱中症が発生しやすい現場です。
建設業、製造業、警備業の死亡災害数よりも少ないのですが、傷病者が多いという特徴があります。
2021年の統計をみると、警備業が370人(11人の方が死亡)に対して、運送業は561人(7人の方が死亡)となっています。
運送業の現場では、クーラーの効いた車内から30度を超える炎天下を行き来したりすることがあり、体温の調整機能に影響をあたえることが大きな原因と考えられています。
体温調整機能が正常に働かないと汗をかきにくくなるため、水分補給の必要性を感じにくいのです。
また、運送業では水分・塩分を補給するタイミングについてドライバー個々の判断に委ねられることも多いでしょう。適切なタイミングで水分・塩分補給できなかった結果、熱中症リスクが高まる可能性もあります。
警備業
警備業は、建設業、製造業、運送業に次いで熱中症による死傷者数が多い現場です。
警備業は、長時間の屋外勤務が多く環境の影響を受けやすいこと、夜勤もあるため生活リズムが崩れやすいことなどが原因に挙げられます。
自宅から派遣現場へ直接向かう雇用形態も多く、熱中症対策について個々の判断に委ねられることが多い点も、熱中症発生リスクが高まる要因でしょう。
その他
ここまで紹介した現場以外にも、屋外で筋肉を激しく動かす現場は熱中症が発生しやすい現場といえます。
例えば、清掃業は屋外勤務が多く筋肉を激しく動かす現場です。短時間で多くの現場を回る業者も多いため、作業員には大きな負荷がかかっています。
また、林業、農業などの一次産業に従事する方々も、体を使った作業を長時間行うため熱中症になりやすい仕事といえます。
こちらで紹介されていない現場でも、熱中症リスクのある現場では適切な対策が欠かせません。
現場で取り組むべき熱中症対策5選
熱中症が発生しやすい現場では、どのような熱中症対策に取り組むべきなのでしょうか?
効果的な熱中症対策は以下の5つです。
- ・水分・塩分を適切なタイミングで補給する
- ・熱中症になりにくい衣服を着用する
- ・熱中症対策グッズを活用する
- ・現場環境を整備する
- ・作業時間の短縮と休憩時間の拡大
それぞれみていきましょう。
水分・塩分を適切なタイミングで補給する
体内の水分や塩分量が低下すると、熱中症が発生しやすくなります。
経口補水液、スポーツドリンク、塩分補給キャンディーを活用して、水分と塩分をバランスよく補給しましょう。
水分だけ補給していると、体内の塩分濃度が下がってしまい、かえって発生リスクが高まることがあるため要注意です。
塩分補給キャンディーをなめたり食塩水をつくったりして、水分と塩分をバランスよく補給してください。
なお、「喉が渇いた」「体がだるい」と不調を感じたときには、すでに熱中症にかかっている可能性がありますので、水分・塩分はこまめに摂取しましょう。
熱中症になりにくい衣服を着用する
作業現場では、安全性確保のため頑丈な作業服を着用しますよね。
頑丈な作業服には風を通しにくいという特徴があるため、内側に着るインナーウェアを工夫するとよいでしょう。
綿素材の衣服よりも、ポリエステルやエチレンビニルアルコールなどの合成繊維で製造された「スポーツ用のインナーウェア」がおすすめです。
合成繊維で製造された衣服は吸湿速乾にすぐれているため、汗によるべたつきを感じにくく以前より快適な気分で作業にあたれます。また、洗濯してもすぐ乾いてくれるため、衣服の替えを何着も用意する手間を省けるでしょう。
熱中症対策グッズを活用する
熱中症対策グッズとは、暑さ対策に活用できるグッズのことです。
- ・ネッククーラー
- ・冷感タオル
- ・アイスノン
- ・冷却スプレー
- ・アイスベスト
- ・ヘルメットインナー
ネッククーラーは太い血管が集まっている首元を効率的に冷やせるグッズ。肩掛け扇風機と異なり、電動または保冷剤によって首の後ろや横の部分を冷やせるため、体内に熱をこもるのを防止できます。
また、冷感タオルやアイスノンといったグッズを活用すると、体表面の温度を効率的に下げられるため、誰でも爽快感を得られるでしょう。
アイスベストは、ベスト内部に保冷剤を設置できるポケットを設け、脇や背中などに保冷剤をあてるられる作業服。脇の下に通っている太い血管を冷やすことで体を内側から冷却できます。
熱中症対策グッズにはいくつもの種類があり、現場に合わせて導入できるグッズを選べるのが強みです。自社の現場に合ったグッズを導入してみてください。
現場環境を整備する
大型扇風機を導入して風を送ったり散水(水撒き)によって地面を冷却したりと、現場環境を整備する方法も効果的な熱中症対策です。
簡易式テントを設置したり休憩所を仮設したりして、日陰で作業員が休める環境をつくるのもよいでしょう。
作業現場に合わせて導入できる設備がないか検討してみてください。
作業時間の短縮と休憩時間の拡大
現場環境の改善と一緒に取り組みたい対策が、作業時間の短縮と休憩時間の拡大です。
気象予報などを参考にして、日照りの強い日や気温や湿度が高い日は作業時間を短縮すると、熱中症の発生リスクを抑えられるでしょう。
また、休憩をとるタイミングを早めたり、1回の休憩時間を長めに設定したりして、作業員が休む時間や水分・塩分を補給できる時間をつくることも重要です。
休憩時間は、作業員の様子を確かめるチャンスでもあります。声をかけたり様子をチェックしたりして、体調不良になっていないか目視すると、さらに熱中症発生を予防できるでしょう。
現場で熱中症が発生したときの対策について
万が一現場で熱中症が発生した際は、作業員の様子を確認して、必要な応急処置を施さなくてはいけません。
体調不良者が発生したら、まずは様子を確認しましょう。「意識がない」「意識がはっきりしていない」といった症状があれば、すぐに救急車を要請してください。
救急車を要請した上で、本人を直接日差しのあたらない涼しい場所に移して、衣服を脱がせて体を解放。うちわや扇風機などで風を送り体を冷やします。
氷嚢があれば、首の脇や脇下、両足の付け根部分にあてると血液量の多い太い血管を冷やせるため有効です。
救急車を要請しなくてよい軽症の場合でも、作業を直ちに中断し、過ごしやすい環境に移動させた上で、水分・塩分補給してから、医療機関の受診を勧めてください。
現場の熱中症対策を万全にして安全な職場環境を
高温多湿になる夏にかけて、熱中症の発生リスクは大幅に上がります。
しかし、熱中症対策を万全にしておけば、熱中症がピークになる7月から9月の時期を無事乗り越えられるはずです。
本記事を参考に現場の熱中症対策を整備していただき、作業員の安全を確保した現場を構築してください。