酸素濃度を正常値に保つのに欠かせない酸素濃度計について
酸素センサーやO2センサーとも呼ばれる酸素濃度計。
密閉された作業空間、トンネル、ガスが噴出する可能性のある場所、実験室など、さまざまな場所で酸素濃度計が使われます。
一番の目的は「酸欠防止」のためです。
では、酸素濃度は何%あれば正常値なのでしょうか。
本記事では、酸素濃度の正常値や、数値がどれくらい低下すると何が起こるか?を解説していきます。
また、酸素濃度計の特徴や測定方法、入手方法についても詳しく解説していますので、酸素濃度計の購入を考えている担当者はぜひ最後までご覧ください。
目次
酸素濃度とは?
酸素濃度とは、空気中に酸素がどのくらい含まれているかを示す数値です。
私たちが普段吸っている空気は、「酸素」「窒素」「二酸化炭素」「アルゴンと呼ばれるガス」などによって構成されています。
空気中の酸素濃度は21%となっており、高度約100kmまではどこへ行っても一定です。
酸素は生物が生きていくために欠かせない気体ですが、酸素濃度が高すぎたり低すぎたりすると体内のガス交換がうまくできないため、体にさまざまな異常をきたしてしまいます。
酸素は色や匂いがない気体のため、酸素濃度が変化してもすぐにはわかりません。
酸素濃度は、基本的にはあまり気にしなくても日常業務に支障はありませんが、閉鎖されている空間では酸欠防止や火災・爆発といった事故防止のために、酸素濃度計を使って酸素濃度を定期的に測定することが必要です。
酸素濃度計で正常値に保つ必要がある理由
酸素濃度計を使用して、酸素濃度の正常値を保つ必要がある理由は、酸素濃度が低いと健康に重大な影響を及ぼすからです。
私たちが体調不良を起こすことなく健康に活動ができる酸素濃度はおよそ21%です。
それ以上低くなると私たちの体にさまざまな不調が表れます。
酸素濃度の低下と起こりうる症状について、以下にまとめました。
酸素濃度 | 起こりうる症状 |
19% | 鉱山保安法による最低酸素濃度。身体に大きな影響はない。 |
18% | 人が正常に作業できる安全範囲の最下限。呼吸用保護具が必要。 |
16%〜12% |
脈拍や呼吸数の増加。集中力や筋力の低下も見られる。 耳鳴りや吐き気、頭痛などの体調不良も。 |
14%〜9% |
意識もうろうとしたり、階段からの転落、水中では溺死の危険性がある。 その他、各種体調不良や、記憶障害も。 |
10%〜6% |
死の危機。 体調不良をはじめ、幻覚や意識喪失、中枢神経障害を引き起こす可能性。 |
6%以下 |
6分程度で死亡に至る危険性。 数回、あえぎ呼吸をした後に失神や昏睡状態、呼吸や心肺停止に。 |
酸素濃度が低下していくと、集中力の低下ではとどまらず、10%を切ると呼吸困難や脳機能に重大な障害が生じて死に至ることもあるのです。
酸素濃度を正常値に保つことで、私たちは安心して仕事や研究などに取り組めるようになります。
そのために、酸素濃度計で作業中の酸素濃度を測定し、酸素濃度が正常値でない場合はその場から離れたり、窓やドアのある室内であれば換気をするなどの対策が推奨されています。
特に脳の酸素消費量は、身体全体の酸素消費量のうち25%も消費するため、通常の酸素濃度より低い中で活動していると酸欠症状が出てくるので注意が必要です。
酸素濃度計の種類
酸素濃度計は、「酸素濃度計」「溶存酸素計」「パルスオキシメーター」の大きく3種類に分けられます。
酸素濃度計
1つ目は、気体に含まれる酸素濃度を測る「酸素濃度計」です。
酸素計やO2メーターなどと呼ばれることもあります。
酸素濃度計は、空気中の酸素濃度の測定が可能です。
密閉された空間に使用すれば、空間にいる人々の酸欠防止に役立ちます。
主な用途して、製品の品質管理・工事や研究時の事故防止・酸欠防止・人や生物の体調管理・汚染状況の確認などさまざまあります。
溶存酸素計
2つ目は、液中に溶け込んだ酸素濃度を測る「溶存酸素計」です。
溶存酸素計は、水中の酸素濃度を計測できるため、川や海などの環境調査や水産養殖場の管理にも利用されています。
野外の場合は、電極を投げこんで測定することが多いため、防水性能や電極ケーブルの長さが十分にあるかどうかが重要視されます。
室内で測定する場合は、取り回しのしやすいスリム型が人気です。
他にも、隔膜式、蛍光式などがあります。
パルスオキシメーター
最後の3つ目は、血中に溶けた酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」です。
人差し指などに装着して、血液中の酸素濃度(動脈血酸素飽和度)を測定します。
病院やクリニック、訪問看護などで使用されているほか、自己管理のために所持している人もいます。
特に近年では、新型コロナウイルスの影響で、パルスオキシメーターの利用シーンが増えています。
酸素濃度計の測定原理
酸素濃度計の測定原理は、「ガルバニ電池式」「ジルコニア式」「磁気式」「光学式」「レーザー分光式」「黄燐発行式」の合計6種類。
どれも馴染みのない言葉かと思いますが、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
ガルバニ電池式
1つ目のガルバニ電池式は、他の測定原理より構造が複雑ではないため携行タイプの酸素系に用いられている測定原理です。
小型で運用できるため携行型の酸素濃度計に用いられていますが、電解液がなくなると交換する必要があります。
微量酸素の測定も可能ですが、測定環境に影響を受けやすいため、測定の際は一般的な環境の下で測定するといった特徴もあります。
ジルコニア式
2つ目のジルコニア式は、酸化ジルコニウムセンサーで測定する方法です。
比較的安価で消耗部品が少ない測定原理ですが、可燃性ガス(窒素など)が含まれていると酸素濃度の数値に誤差が生じることが知られています。
一方、測定レンジの自由度が高いというメリットを持っていて、100%から100万分の1未満(ppmレベル)までの酸素濃度を計測できます。
磁気式
3つ目の磁気式は、酸素計の3分の1のシェアを占めている測定方式です。
磁気式はガルバニ電池式やジルコニア式よりも高価ですが、可燃性ガスが含まれていても測定できるメリットがあります。
一方、衝撃や振動に弱いといった特徴もあります。
また、磁気式の中にも、磁気風式(磁気熱)・磁気力式(磁気圧)・磁気力式(磁気ダンベル)といった3種類の方式にわけられています。
光学式
4つ目の光学式は、酸素分子と有機金属化合物の間に発生する消光現象を利用した測定原理です。
圧力の影響を受けず真空でも使用可能ですが、腐食性ガス、可燃性ガス、刺激性ガスの測定ができないといった側面もあります。
レーザー分光式
5つ目のレーザー分光式は、酸素測定だけでなくガス分析や水分測定にも利用されている測定原理です。腐食性ガスや刺激性ガスを測定できる反面、1台あたりの値段が高価であるという特徴があります。
黄燐(おうりん)発行式
最後は黄燐(おうりん)発行式ですが、こちらで使用されている黄燐には、自然発火性と強い毒性があるため第3危険物に指定されています。
そのため、黄燐を用いた酸素濃度計の取り扱いは、リン製品の取り扱いに長けた一部の製造会社のみが取り扱っているのが現状です。
酸素濃度計を手に入れる方法
工業用酸素濃度計の入手方法を確認しましょう。
- 家電量販店やホームセンターで手に入るか?
- インターネット通販なら入手可能
- 【おすすめ】メーカーや専門店から購入する
それぞれ解説していきます。
家電量販店やホームセンターで手に入るか?
家電量販店やホームセンターの店舗で、酸素濃度計を取り扱っている店舗はほとんどありません。
在庫の問い合わせに対して「酸素濃度計を扱っています」と返答する店舗もありましたが、空気中の酸素濃度を測る酸素濃度計ではなく、血中酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」を指していることもありました。
そのため、在庫の問い合わせをする際には「空気中の酸素濃度を知りたい」と伝えるようにしましょう。
また、取り寄せ対応を行っている店舗も少ないのが現状ですが、将来的に酸素濃度計を取り扱う家電量販店やホームセンターが出てくることもあるかもしれません。
インターネット通販ならすぐにでも入手可能
「AXEL」や「モノタロウ」などのインターネット通販なら、自宅にいながら酸素濃度計を入手できます。
追加料金を支払うことで速達対応してくれるところもあるため、お急ぎの方は注文の際に速達対応を希望しましょう。
また、インターネット通販には、実際に酸素濃度計を利用した人の評価や感想が記載されています。
商品を選ぶ際の参考になるため、目的に沿った工業用酸素濃度計を探すことができるでしょう。
おすすめはメーカーや専門店からの購入
工業用の酸素濃度計を製造販売しているメーカーに問い合わせて購入する方法が一番おすすめです。
メーカーから購入する大きなメリットは、安心して購入できる点になります。
酸素濃度計は一台あたり1万円以上するものも多く、決して安い買い物ではありません。
特に有毒ガスが発生する可能性のある場面では、性能や機能が大事になってきます。
メーカーのホームページを見つけたら、製品紹介などのページから酸素濃度計を閲覧。
気になる酸素濃度計があれば、メールや問い合わせフォームなどで直接メーカーに確認をいれてください。
メーカーによっては見積もりを無料で行ってくれるところもあるため、まずは疑問点などの質問からはじめてみましょう。
まとめ|酸素濃度を正常値に保つことは人命を守ること
酸素濃度計を活用することで、室内や空間中の酸素濃度を正常値の範囲内に収めることができるようになります。
有毒なガスが噴出する危険を伴う作業現場や、トンネル空間のような場所、マンホールから降りて作業するような地下道など、酸素濃度計が必要になるシーンはさまざまあります。
酸素不足による事故が起きてからでは遅いです。
作業場に適した性能の酸素濃度計を取り入れることで、人命を守り、安全に作業ができる環境を作ってください。