工業用酸素濃度計の種類や使い方をわかりやすく解説!設置時の注意点も
工業用酸素濃度計は、主に空気(ガス)中や液体に含まれる酸素濃度の測定や、酸素が足りない場所で作業するスタッフの安全を守るために用いられます。
例えば、水生生物の生育を適切に管理するために使用されたり、河川や湖、沼などで環境汚染対策に使用されたり、工業熱処理のプロセスで使用されたりします。
また、気体に溶け込んだ酸素濃度を測る酸素濃度計と、液体に溶け込んだ酸素濃度を測る溶存酸素濃度計があり、工業用酸素濃度計にはさまざまな測定方式があります。
本記事では、工業用酸素濃度計の種類や使い方をわかりやすく解説します。
加えて、工業用酸素濃度計を設置する際の注意点も紹介しますので、しっかりチェックしてください。
目次
酸素濃度計について
酸素濃度計は、空気(ガス)中や液体に含まれる酸素濃度を測定したり、酸素が足りない場所で作業するスタッフの安全を守るために測定したりする際に役立ちます。
ほかにも、火災や爆発などの事故防止や、商品の品質維持、水生生物やヒトの体調管理などにも用いられています。
酸素濃度計には大きく3つの種類があります。
- 酸素濃度計
- 溶存酸素計
- パルスオキシメーター
それでは、順にみていきましょう
酸素濃度計
酸素濃度計とは、気体に含まれる酸素濃度を測定する機器のことです。
地球の大気中に含まれる酸素濃度は21%で、生物の呼吸や燃焼に不可欠な元素です。
小型・軽量で邪魔にならない装着できるタイプの酸素濃度計や、マンホールなど狭い場所の安全確認が行える投げ込み式のタイプ酸素濃度計があります。
電解液に酸素を溶解させると発生する電流を測定することで、酸素濃度を知ることができる仕組みです。
溶存酸素計
溶存酸素とは、水中に溶け込んだ酸素のことを言います。
つまり、水中や液中に溶け込んだ酸素濃度を測るときに用いる機器が、溶存酸素計です。
川や海はもちろん、農業や養殖場にて使用されることが増えています。
ほかにも、ワインや食酢内の酸素濃度を測ることもあるなど、さまざまな場所で使用されています。
試薬を使い酸化還元反応を活用する方法と、電極を使用する方法で酸素濃度を測ります。
パルスオキシメーター
パルスオキシメーターとは、血中に溶けた酸素濃度を測る装置のことを言います。
呼吸によって、酸素を身体に十分取り込めているかの目安を知ることができます。
近頃では、新型コロナウイルスに感染した際に都道府県や市区町村から貸し出されることが増えているため、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
ご自身で使用する以外にも、病院やクリニック、訪問介護で使用されています。
工業用酸素濃度計の種類
酸素濃度計には、酸素濃度計、溶存酸素計、パルスオキシメーターの3つがありますが、工業用で使用されるのは酸素濃度計、溶存酸素計の2つです。
では、工業用の酸素濃度計にはどのような違いがあるのでしょうか。
また、測定タイプにはどのような種類があるのでしょうか。
順にみていきましょう。
酸素濃度計
工業用酸素濃度計は、気体(空気やガス)中の酸素濃度を測定する機器のことを言います。
特定の空間やプロセスラインに設置され、装置内のサンプルガスに含む酸素濃度で測定。
主に室内の空気品質の管理や、工業炉の燃焼プロセス、金属の溶接切断用途などで使用されます。
溶存酸素濃度計
工業用溶存酸素濃度計は、液体中に溶け込んだ酸素濃度を測定する機器です。
養殖場や水族館などでの水生生物の管理や、川・湖・沼・海などでの環境汚染の管理、下水処理場での設備の管理のために使用されることが多いです。
測定タイプ
では次に、測定タイプについて見ていきましょう。
測定タイプは、以下の5つです。
- ジルコニア(濃淡電池)式
- 磁気式
- 電気化学(ガルバニ電池)式
- 黄燐発光式
- レーザー分光式
ジルコニア(濃淡電池)式
ジルコニア(濃淡電池)式とは、ジルコニアと呼ばれる素子を高温に加熱し、酸素異音による導電性を表す性質を利用し、酸素の濃度を測る酸素濃度計の一種です。
高温に加熱されたジルコニア素子の両端に設けた電極にガスを流すと、酸素濃度比によって起電力が発生します。
ジルコニア素子の両端に異なる酸素濃度のガスを流すことで、イオン流ができ、電流値に差が表れることで酸素濃度を測れるようになります。
つまり、発生した起電力を検出して、酸素濃度を測定できます。
また、高温状態においてサンプルガスに可燃物が含まれている場合、機器が燃焼反応を起こす可能性があります。
燃焼反応を起こした際に酸素を消費するため、可燃性ガスの測定には向いていません。
一方、高温な場所でも直接取り付けられる側面もあります。
磁気式
磁気式とは、酸素分子が磁界内で磁化(磁石となる現象)した際に生まれる、引き付ける力を利用して、酸素濃度を測る酸素濃度計の一種です。
ジルコニア式では測定できない可燃性ガスを測定できるうえ、腐食性ガスの測定も可能です。
しかし、「装置の値段が高い」「サンプリング装置の設置が必要」といったデメリットもあります。
電気化学(ガルバニ電池)式
電極のアノード側(プラス側)に銀(Ag)、カソード側(マイナス側)に鉛(Pb)の組み合わせで、電解液に水酸化カリウム(KOH)を用いることで電池が作られます。
作られた電池には、酸素量に応じて電流が流れる仕組みです。
その電流内の酸素濃度を測るのが電気化学(ガルバニ電池)式で、酸素濃度計の一種です。
どのタイプよりも携帯しやすいため、気軽に使用することができます。
しかし、測定環境の影響を受けやすい点と、使用している水酸化カリウムには毒性があることがデメリットとも言えます。
黄燐(おうりん)発光式
黄燐(おうりん)とは、 暗い所でりん光を発する猛毒のろう状固体です。
- りん光・・・物質がなんらかの原因で光を発する現象、またはその光そのもの。
黄燐は常温大気圧下で平衡した際に、蒸気を放出します。
発生した蒸気は酸素と反応して、三酸化燐となります。
このプロセス中に発生した光エネルギーの量を測定することで、酸素濃度を測ることができるのです。
黄燐は猛毒で第3危険物に指定されているため、測定器の取り扱いや測定環境には十分な注意が必要です。
レーザー分光式
レーザー分光式は、黄燐発光式と少し仕組みが似ています。
レーザーが測定対象のガス濃度を測り、近赤外線レーザーをサンプルガスに照射して光の波長を検出します。
検出された光の波長を信号に変換することで酸素濃度を測る酸素濃度計の一種です。
高圧、高温環境下でも測定が可能なうえ、腐食性ガスおよび刺激性ガスの測定もできます。
一方、測定できるレンジが狭いというデメリットもあります。
工業用酸素濃度計の使い方
工業用酸素濃度計を使う際には、酸素を採取する必要があります。
採取する方法として、吸引タイプと拡散タイプの大きく2つのタイプに分けることができます。
順にみていきましょう。
吸引タイプ
吸引タイプでは、工業用酸素濃度計に接続されたチューブから気体を採取します。
空間全体の酸素ではなく、チューブに入り込んだ気体を測定する方法です。
配管内やタンクの内部など、狭い場所でも測定できることがメリットです。
拡散タイプ
拡散タイプは、自然に漂っている気体を長時間かけて測定します。
吸引タイプのように、気体の採取は行いません。
配管内などの狭い場所での採取は向いていませんが、工場や実験室など広い場所での採取が得意です。
また、トンネルやマンホール内で工事をする作業員の安全確保のために使用されることもあります。
工業用酸素濃度計を設置する際の注意点
工業用酸素濃度計を設置する際には、注意点があります。
廊下側等から見えない位置に、単純な警告音を鳴らすタイプの工業用酸素濃度計を設置しないことです。
なぜなら、トラブルが発生した際にさらなるトラブルや危険を招く可能性があるからです。
大阪大学低温センターは、想定される事故内容を発表しています。
(Step1)無人の実験室内で装置等のトラブルにより液体窒素等の大量蒸発が起きる。
(Step2)酸欠状態になり、酸素濃度計がそれを検知して、警告音が鳴る。
(Step3)廊下等を通りかかった人が警告音を聞き、確認のため実験室へ入室。
(Step4)室内が酸欠状態のため、そのまま酸欠事故へ。
引用:低温センター、安全衛生管理部「酸素濃度計の設置における注意点 」
トラブルや異常が起きない限り、警告音は鳴らないはずです。
そのため、突然警告音が鳴ると、「何が起きたんだろう」と原因を調べようと実験室内に入ってしまう可能性があります。
原因探しのために酸欠状態の実験室に入ってしまうと、酸欠事故につながってしまいます。
過去には酸素濃度が下がった部屋に入ってしまった事例もあるようです。
このような危険を防ぐためにも、
- 室外からも酸素濃度が確認できる場所に酸素濃度計を設置
- 室外に酸素濃度がわかる表示計を設置
- 室外から酸素濃度が下がっていると分かる警報機を設置
- 携帯用酸素濃度計を常に持ち、酸素濃度を確認してから入室
などの対策をとる必要があります。
また、以下の行動をとれるように設置する必要もあると言えます。
- 実験室等の中にいる人に、酸素濃の低下を警告して退室を促す
- 実験室等の外にいる人に、室内が酸欠状態になっていることを警告して入室を抑止する
万が一建物の構造上、廊下側から見えにくい位置に設置せざるを得ない場合は、設置部屋の入り口扉に「酸素濃度計の警告音が鳴った際の注意書き」を明示しておくと良いでしょう。
まとめ:使い方や注意点を理解して、正しく活用しよう!
工業用酸素濃度計には気体に含まれる酸素濃度を計る酸素濃度計と、液体中の酸素濃度を計る溶存酸素濃度計の2種類。
酸素濃度を計る方法として、チューブから気体を得る吸引タイプと、浮遊する気体を長時間かけて採取する拡散タイプの2つのタイプがあることがわかりました。
また、測定タイプには5つのタイプがあり、酸素濃度計や溶存酸素濃度計など種類によって変化することを本記事で説明しました。
水質環境をチェックしたり、実験や研究、工事中に使用したりなどさまざまな場面で使用される工業用酸素濃度計ですが、正しく活用しないと人命に関わる事故が発生する可能性もあります。
酸素濃度計を使用する際には、十分に安全を確保するようにしましょう。