熱帯魚の元気がない!→水槽のpH管理してますか?測定理由やツールを紹介
水槽内のpHを適切に管理すると、飼育されている魚や水草は元気に過ごせるようになります。
しかし「最近熱帯魚の元気がないけど、どうしてだろう?」「水質管理をうまく行う方法を知りたい」「お客さんに水質管理について指摘された」と、水槽の水質管理にお悩みの人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、水槽の水質管理に大切なpH管理について詳しく解説していきます。
pHを測定すべき理由や測定ツール、さらにpHを安定させるアイテムも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
本記事を読むことで正しい水質管理方法が身につきます。
目次
水槽管理に欠かせないpHとは
pH(ペーハー)とは、水に含まれている水素イオンの濃度を示しており、水素イオン濃度とも呼ばれます。
pHを適切に管理することで、水槽で飼育している魚や水草が健康に育ちます。
そのためpHは、水温や水の硬度と並び、水槽の水質管理において重要な要素の1つです。
pHを測定すると、水の性質が「酸性」に寄っているのか「アルカリ性」に寄っているのかを確認できます。
pHは、0から14の段階にわけられ、真ん中の7を「中性」として考えます。
そして数値が小さくなると、「弱酸性→酸性」と徐々に酸性に寄り、反対に数値が高くなれば「弱アルカリ性→アルカリ性」とその性質が変化するのです。
「弱酸性」という言葉を聞くと、合成洗剤を思い浮かべる人もいるかと思いますが、実は洗剤と水のpHはそれぞれ基準値が異なります。
合成洗剤の基準となっている消費者庁が示す液性は、以下の通りです。
- ・pH値が3.0~6.0……酸性から弱酸性
- ・pH値が6.0~8.0……中性
- ・pH値が8.0~11.0……弱アルカリ性からアルカリ性
一方、アクアリウムでは数値の判定について以下のように考えます。
- ・pH値が5.0~6.5……酸性から弱酸性
- ・pH値が7.0……中性
- ・pH値が7.5~8.5……弱アルカリ性からアルカリ性
よって、合成洗剤などでよく見かける酸性やアルカリ性のpH値は、そのままアクアリウムに適用できません。
基準値を誤って水質管理を行うと、最悪の場合飼育する魚がpHショックに陥る可能性もありますので注意が必要です。
水槽のpHを測定する理由
水槽のpHを測定するのは、主に以下の3つの理由からです。
- ・飼育する魚が好む環境を作ることができる
- ・pHショックを防げる
- ・水草が元気に育つ
それぞれ解説します。
飼育する魚が好む環境を作ることができる
水槽のpHを測定すると、飼育する魚に合わせた最適な飼育環境を構築できます。
例えば、ネオンテトラやエンゼルフィッシュなどの熱帯魚は弱酸性から中性を好みますので、pH値を6.0から7.0くらいに設定します。
グッピーやプラティなどの弱アルカリ性を好む熱帯魚の場合は、pH値を7.0から8.0くらいに設定するのがおすすめです。
生息していた環境とのギャップがあり過ぎると魚にとって大きなストレスになるため、水槽のpHを測定し、飼育している魚が好む環境を作ってあげることが大切です。
pHショックを防げる
pHショックとは、これまで過ごしていた水のpHが急激に変わったことで起こるショック症状です。
お店で魚を購入して自宅の水槽に移し替えるときや、水槽の水換えを行った際に、新しい水のpHが以前と異なるために発生するケースが多くあります。
魚の体力にもよりますが、生体に大きなダメージを負ってしまうことが多く、繰り返しになりますがpHショックによって死んでしまう魚も少なくありません。
そのためpHショックは、ショック後の治療よりもpH値を管理してpHショックを起こさないことが大切です。
ちなみに水温や硬度などの違いによってもショック症状は引き起こされるため、pHだけに注目してもいけません。
pHショックを予防する方法として「水合わせ」を行うのが有効です。
水合わせとは、それまで過ごしていた水と新しい水とを少しずつ混ぜ合わせる方法です。
- 1.生体の入った袋を30分から1時間ほど、新しい水槽に浮かべる
- 2.水を1/3ほど捨てて、捨てた分の水を新しい水槽から袋に入れる
- 3.②を3回、4回繰り返し、新しい環境に馴染ませる
- 4.最後に生体のみを新しい水槽に入れる
水合わせを行って、可能な限り魚への負担を軽減してあげましょう。
水草が元気に育つ
水槽も魚と同様に、生体にあった環境にいると元気に育ちます。
水草を美しく育ててアクアリウムを楽しみたい方は、水草に合ったpHに調整してください。
しかし、水草だけではなく魚も一緒に飼育したい場合、注意が必要です。
魚に合わせたpH値に設定し、飼育する水草に合っていない場合、水草の生育に悪影響が出る可能性があります。
そのため、飼育する魚が好むpH値に合わせた水草を選んだりpH値への適応能力が高い丈夫な水草を選んだりして、両者が生息できる環境を構築することが重要です。
水槽のpHが変化するケース
水槽のpH値は、主にカルシウムやマグネシウムなどの成分によって上昇し、硝酸塩やリン酸などの成分によって下降します。
その原因となる3つのケースを紹介します。
サンゴ砂や石を使用している
水槽の底床に敷くサンゴ砂や石にはミネラル成分が含まれています。
サンゴ砂や石に含まれるミネラル成分が水に溶けだすと、pH値が上昇したり水質を弱アルカリ性に変化させたりします。
また底板材によく使われるソイルには、サンゴ砂や石と反対に、pH値を下げたり水質を弱酸性に傾けたりする効果があります。
水槽内の底板に設置する底板材やサンゴ砂などによってpH値は変化するため、水槽内に新しいアイテムを入れた際は必ずpH値を測定してください。
CO2を追加している
水槽内にCO2(二酸化炭素)を添加すると水草の成長を促すことができます。
しかし、CO2を添加するとpHが下がりやすくなるほか、水中の酸素濃度が変化するため、水質に敏感な魚を飼育している場合は注意が必要です。
またCO2の添加により苔の生育も早まるため、定期的に水槽を清掃する必要もでてきます。
水の入れ替え頻度が低い場合
水の入れ替え頻度が低い場合、魚の排せつ物や食べ残しから硝酸塩が発生しやすくなります。
水中に硝酸塩の成分が多くなると、pHは徐々に酸性に傾きます。
もしも長期間水を入れ替えていないと、水換えの際に入れた新しい水とそれまでの古い水の間のpH値の開きが大きくなるため、魚への負担が増大するのです。
そのため長期間水換えをしていない場合は、新しい水に魚を入れる前にpH値や水温などを確認しておき、飼育する魚への負担軽減とpHショックを予防しましょう。
水槽のpHを測定できるツール
水槽のpHを測定できる3つのツールを紹介します
- ・pHメーター
- ・pH測定試験薬
- ・pH測定試験紙
それぞれみていきましょう。
pHメーター
pHメーターは、付属のアダプターをコンセントに差し込んでpH値を測定するする機械です。
エレクトロ―ドと呼ばれるガラス電極を、水槽から小さな容器に移した水に浸けると測定を開始できます。
pHメーターでは、pH値を数字で確認できるため、他の測定方法に比べて正確なpH値がわかる点が大きな特徴です。
測定の誤差は±0.1ほどと正確な数値を測定できるため、水質に敏感な魚を飼育する際も安心できるでしょう。
また、ホルダーを使用すると水槽にpHメーターを固定できるため、リアルタイムにpH値を確認することも可能です。
ただしpHメーターは、使用年数の経過とともに誤差が大きくなる可能性があります。
誤差が大きくなった際は、付属の校正液を使用して測定値の調整を行いましょう。
また、購入した製品をはじめて使う際やしばらく使用していなかった場合にも校正液を使用すれば、正確な測定が可能になります。
■関連記事:pH計の校正方法は?頻度や重要性、注意点も解説!
pH測定試験薬
pH測定試験薬は、測定したい水に試験薬を垂らして、水の色の変化でpH値を判断します。
pHメーターのようにpH値を数字で確認することはできませんが、その分測定する際に電源が必要ないため、電気のない環境でも気軽に測定できる点はメリットと言えます。
ただしpH値を厳密に確認したい場合は、pHメーターを併用するのがおすすめです。
はじめにpH測定試験薬で大きな異常がないか確認して、気になる点があればpHメーターで数値を確認すれば、トラブルを防止できるでしょう。
pH測定試験紙
pH測定試験紙は、測定したい水にpH測定試験紙を浸し、測定紙の色の変化でpHを確認する方法です。
水槽に直接浸けても測定できるため、測定試験薬よりもさらに簡単に測定できます。
また、これまで紹介した中で最も測定費用を抑えられる測定方法です。
ただし、pH測定試験薬に比べて色の変化がわかりにくいほか、試験紙を濡らさずに保管するという作業が発生するというデメリットもあります。
「pHメーター」「pH測定試験薬」「pH測定試験紙」の中から測定ツールを選ぶ際は、ツールの特性や飼育環境に合わせて、自分が使いやすいと思うツールを選択してください。
水槽のpH値を安定させるアイテムも
水槽のpH値を安定させるアイテムも、水槽の水質管理をサポートしてくれます。
水槽の清掃や水換えを定期的に行いながら、アイテムを活用すると、pH値の管理がさらにやりやすくなるでしょう。
「ろ過材」には、過剰なアルカリ性成分と酸性成分全般を継続的に除去してくれる製品もあるため、そういったものを使用すればpH値を安定させることができます。
また液状タイプの「水質調整剤」は、すぐにpH値を変化させることも可能なため、pH測定が不十分だったときなどの咄嗟のときに役立ちます。
そしてpH値を上昇させたい場合には、「サンゴ砂」や「カキガラ」を水槽内に設置するのがおすすめです。
サンゴ砂やカキガラに含まれているカルシウムやマグネシウムが水中に溶け出すことで、pH値が徐々に上昇します。
サンゴ砂やカキガラを利用すると、徐々に水質環境が変化するため、飼育されている生き物の身体にも負担がかかりにくいのです。
まとめ|水槽のpHを適切に管理して熱帯魚や水草を元気に育成する
水槽のpHを適切に管理できると、飼育する魚や水草が生き生きと過ごせるようになります。
元気に育成できれば、これまで以上にアクアリウムを楽しむことにもつながるのです。
pHの管理に迷ったときは本記事を見直していただき、pHを適切に管理してください。