適切な水のpH値とは?飲料水や純水での測定方法についても解説
私たちが普段から口にしている水ですが、適切な水のpH値をご存知でしょうか。
水は人間の体内に入るものであるため、適切なpH値でなければ健康を害する恐れがあります。
また、人が口にするのを目的とした飲料水のほかに、様々な検査などに用いられる純水があります。
飲料水と純水のpH値を測定してみると、値が安定しないという経験をされたことがある方もいるはず。
本記事では水のpH値について解説すると共に、飲料水や純水のpH値測定のポイントについても解説します。
ぜひ参考にしてください。
目次
水のpHについて
水のpH値は0.0〜14.0で表され、数値によって酸性なのかアルカリ性なのかがわかります。
酸性やアルカリ性のほかに、中性を合わせた3種類がpH値から判断できます。
ここでは酸性やアルカリ性、中性のpH値とそれぞれの水が及ぼす影響について解説していきます。
中性
中性の水はpH値が7.0であり、純水と呼ばれています。
中性の水はpH値が理論上は7.0であることから、7.0のみを中性の水としているのです。
しかし、厳密に言えばpH値が7.0のみが中性ではありますが、洗剤などが対象になっている家庭用品品質表示法では中性を表すpH値が6.0〜8.0になっています。
参考までに家庭用品品質表示法においては、中性のpH値に幅があることを覚えておくと良いかもしれません。
酸性
酸性の水はpH値が6.9〜0.0を示します。
酸性の中にもpH値による分類があり、pH値が6.9〜3.0までを弱酸性、2.9〜0.0までが酸性になっているのです。
特に、pH値が0.0に近ければ近いほど強い酸性の水となり、金属を溶かしたり皮膚を溶かしたりしてしまいます。
一方で、殺菌作用が強いことから洗浄などの使用に向いている水です。
pH値が6.9〜0.0までは酸性の水であり、強い酸性の水は健康を害する可能性があると覚えておきましょう。
アルカリ性
アルカリ性の水はpH値が7.1〜14.0を示します。
アルカリ性の中にも酸性と同様に分類があり、pH値が7.1〜11.0までを弱アルカリ性と言い、11.1〜14.0までがアルカリ性とされているのです。
pH値が14.0に近ければ近いほど強いアルカリ性の水となり、こちらも酸性と同様に金属を溶かしたり、皮膚を溶かしたりしてしまいます。
一方で、体内への浸透が早かったり、物を柔らかくする作用があったりするので、コーヒーや料理への使用が向いています。。
pH値が7.1〜14.0まではアルカリ性の水であり、強いアルカリ性の水も健康を害する可能性があると覚えておきましょう。
飲料水に最適なpH値とは
私たちが普段から口にする飲料水の最適なpH値は、7.0~8.0とされています。
なぜなら、体液のpH値が7.4程度とされているからです。
しかし、実際の生活において最適な飲料水のpH値はいくつなのでしょうか。
ここでは水道水とミネラルウォーター、それぞれの最適なpH値について解説していきます。
水道水の場合
東京都水道局によると、水道水のpH基準値は5.8〜8.6とされています。
なぜなら、水道管などの水道設備の腐食を防止しなければならないからです。
万が一、基準値を外れてしまっていると水道設備が腐食するだけでなく、健康被害を招いてしまうかもしれません。
現に、東京都八王子市では水道水のpH値が基準を超えていた事例もありました(事例:国立保健医療科学院HP)。
水道水のpH基準値は5.8〜8.6であり、人々の健康を守るために重要なポイントであることを覚えておきましょう。
ミネラルウォーターの場合
ミネラルウォーターの場合でもpHの基準値は水道水と同じ5.8〜8.6とされています。
このpH基準値は厚生労働省の水質基準によって定められているのです。
ミネラルウォーターの種類によってpH値に若干の差はあるかもしれませんが、製造メーカーの出荷の段階で品質検査を実施しているはずですので、pH基準値を外れた製品は世に出回らないと考えて良いでしょう。
食品として扱われるミネラルウォーターですので、厚生労働省によってpH値の基準が5.8〜8.6に設定されていることを覚えておきましょう。
水のpH値を測定するには
水のpH値を測定するには、大きく3つの方法があります。
- ガラス電極を用いた方法
- 半導体センサーを用いた方法
- 指示薬を用いた方法
飲料水に関わらず、さまざまな液体のpH値を測定する方法ですので、ぜひ覚えておきましょう。
それぞれ解説していきます。
ガラス電極を用いた方法
ガラス電極を用いる方法は、ガラス電極のほかにもう一本の比較電極を用い、電極間に生じた電位差によってpH値を測定する方法です。
水に限らず、液体ごとに含まれるさまざまな薬剤の影響を受けづらく、より多くの種類の液体のpH値が測定可能なことから、pH測定で多く用いられている測定方法になります。
2つの電極はガラスでできていることから、取り扱いに注意しなければ割れてしまう恐れがあったり、電極内に標準液を補充して使用しなければならなかったりするなど、使用方法に特徴がある点も覚えておきましょう。
詳しくは「pH計電極の寿命は何倍も延ばせる!長持ちさせるコツと構造・種類など」で解説しているので、参考にしてみてください。
半導体センサーを用いた方法
半導体センサーを用いた方法は、ガラス電極と同じ機能を半導体チップで再現したセンサーを用いたpHの測定方法です。
次世代型半導体(ISFET)とも呼ばれているpHセンサーは、東京大学の大学院理学系研究科でも研究がされているなど、非常に注目を集めている測定方法でもあります。
ガラス電極と比較すると、半導体センサーでは小型化や微小化が可能であり、液体だけでなく固体表面でのpH測定も可能です。
そのため、今までのガラス電極法よりも適用範囲が広がり、様々な分野での活用が期待されています。
指示薬を用いた方法
指示薬を用いた方法は、pH値ごとに色をつけた緩衝液を作成しておき、測定対象となる液体にpH指示薬を加えたときの色の違いからpH値を測定する方法です。
非常に簡便な検査ですが、測定結果に誤差が現れやすいのが欠点となっています。
あくまで色の違いを見るだけであり、数値の測定をしていないので誤差が出るのは当然のことなのかもしれません。
測定したい液体に指示薬を加え、基準となる標準液との色の違いでpH値を測定する方法が指示薬を用いた方法であると覚えておきましょう。
飲料水や純水のpH測定におけるポイント
比較的、中性に近い飲料水に加え、完全なる中性の液体である純水のpH値を測定した際、本来であれば理論値上ではpH値が7.0を示すはずなのに酸性やアルカリ性を示した経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は理論上、pH値が7.0の中性の水であったとしても、必ずしも測定時にpH値が7.0を示すとは限らないのです。
ではどのようにしたら、なるべく7.0に近いpH値の測定結果が得られるのかについて、3つのポイントを解説します。
pH値が安定しにくい
飲料水や純水のpH値は安定しにくいです。
そもそも、飲料水や純水は限りなく中性に近い液体であるため、液体中の不純物が限りなく取り除かれた液体であると言えます。
つまり、逆に言えば空気中の不純物を取り込みやすい状態と言えるのです。
例えば、空気中の二酸化炭素を液体が取り込むと時間の経過によってpH値も変化していくことがわかっています。
極端に言えば、液体が空気に触れた瞬間からpH値は変化していくので、測定結果が安定しにくいのは当たり前の話であると言えるでしょう。
もし、飲料水や純水のpH測定を実施し、測定結果が安定しない場合は、そもそも飲料水や純水のpH測定は安定しにくいことを覚えておきましょう。
正確な測定に必要な導電率の知識
飲料水や純水のpH値をなるべく正確に測定するには、導電率の知識が必要です。
導電率は液体の中において、どのくらい電流が流れやすいかを表しており、単位はS/mで表されています。
もう少し詳しく解説すると、液体中を電流が流れるのは、液体中に含まれる物質が電流を運んでいるからです。
つまり、溶けている物質が多ければ多いほど、導電率は高い状態になります。
一方で、飲料水や純水のように液体中にあまり物質が溶けていない場合は、電流を運ぶ役割を果たす物質が少ないことから、電流は通りづらい状態です。
この状態は、溶けている物質が少ないことから導電率が低い状態です。
飲料水や純水は溶けている物質が少ないため、導電率が低い液体であることは理解できるでしょう。
一般的に利用されるガラス電極を用いたpH測定の場合、2つの電極間の電位差を利用しているので、導電率の低い飲料水や純水では、正確なpH測定がしづらいことを覚えておきましょう。
pH計の選び方も重要
では、どうすれば理論値に近いpH値を測定しやすくなるのでしょうか。
ポイントは使用するpH計の選び方にあります。
導電率の概念はpH値を測定する上で重要なポイントである点は間違いありませんが、pH計の種類によっても対応可能な導電率に差があるのです。
例えば、純水のpH値を測定する際、もともと導電率が低い液体のpH測定を実施する訳ですので、あらかじめ低伝導率に対応したpH計の使用も重要なポイントになります。
pH計の種類によって、低伝導率用のpH計を用意しているメーカーもあるので、飲料水や純水のpH測定を実施する際は、pH計選びにも気を使ってみましょう。
まとめ:水のpH値を測定するには適切なpH計を選びましょう
飲料水や純水など、中性の水のpH測定を実施するには、低伝導率に対応した適切なpH計の選択が重要なポイントです。
万が一、低伝導率に対応していないpH計を使用して飲料水や純水のpH値を測定した場合、正しい結果が得られづらいことは覚えておいてください。
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