電磁波にはさまざまな基準値が存在!種類別の基準値と測定方法について解説!
※本記事は一般的な内容を元に作成しております、詳しくはご利用のメーカー等にご確認ください
電磁波は目に見えません。
電磁波による身体への影響を心配したとき、どのように対策をしたら良いかと考えると、電磁波の測定を実施して数値化する必要があります。
しかし、電磁波を数値化しても、どのぐらいの数値なら問題ないのかがわからないと対策のしようがありませんよね。
もちろん、電磁波にも安全な基準値は存在しています。
そこで本記事では、電磁波の基準値を種類別に解説していきます。
電磁波の測定を担当している方や、測定に関する問い合わせを受けている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
電磁波の基準値とは?
電磁波の基準値とは、電磁波による身体への影響を出ないように安全に使用できるように定められた数値です。
電磁波による身体への影響は少なからず発生してしまうのは明らかなため、基準値について理解しておく必要があります。
しかし、電磁波の基準値と言っても一概に説明できない部分もあるため、まずは電磁波の基準値について、細かい部分を解説していきます。
主な内容は下記の2点です。
- ・国内基準と国際基準に違いがある場合がある
- ・国内基準とされるのは電波防護方針
参考にしながら、電磁波の基準値について、より理解を深めるようにしてください。
国内基準と国際基準に違いがある場合がある
電磁波の基準値には、国内基準と国際基準に違いがある場合があります。
なぜなら、電磁波による身体への影響を研究した化学的な論文は数多くあり、世界各国で独自の基準を設けているからです。
多くの場合は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が定めたガイドラインを参考にしていますが、完全に統一されている訳ではありません。
また、基準の中にはあくまで基準や指針としてのガイドラインを定めている国もあれば、より強制力の強い規制を定めている国もあります。
しかし、そうは言ってもINCRPは世界保健機構(WHO)が公式に認めている組織のため、基準値を同じにしている国の方が多いのも事実です。
電磁波の基準値を理解する際は、国内基準と国際基準に違いがある点を理解しておきましょう。
国内の基準とされるのは電波防護方針
日本国内における電磁波の基準は、総務省が定める電波防護方針です。
やはり、電波防護方針もINCRPが定めるガイドラインを参考に策定されています。
特徴としては、各種の電磁波が身体へ影響が出ないような基準値が定められているほかに、携帯電話など、非常に身体の近くで使用されるような無線機器についても指針が定められています。
詳しくは電磁波とは?周波数との関係や人体へ及ぼす影響について解説!の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
電磁波に基準を設けなければならない理由
電磁波に基準を設けなければならない理由は主に下記の2つです。
- ・電磁波による身体への悪影響が心配されるから
- ・電磁波の発生を無視した商品開発が進んでしまうから
当然、電磁波が目に見えないからこそ基準値を設けなければならない点も理由のひとつになりますが、ここでは上記の2つについて解説していきます。
電磁波による身体への悪影響が心配されるから
電磁波には身体へ悪影響を及ぼすことが認められており、電磁波による健康被害についても心配されています。
そのため、電磁波への対策を実施する場合に、身体へ影響が出ない数値として基準値を設けなければなりません。
主な影響としては下記の2点があります。
- ・熱作用
- ・刺激作用
主な影響から考えられている健康被害は下記の2点です。
- ・電磁波過敏症
- ・アレルギー性鼻炎
健康被害に関しては、まだまだ関係が研究されている途中ですが、話題になっている時点で電磁波によるものだと考えている人が少なからずいるのでしょう。
上述したように電磁波による身体への悪影響が心配されるからこそ、電磁波の基準値が必要なのです。
電磁波の発生を無視した商品開発が進んでしまうから
電磁波の基準値がなければ、電磁波の発生を無視した商品開発が進んでしまうのも、基準値が設けられている理由です。
電波防護方針において、商品開発について記載されている項目はありませんが、基準値がなければいくら電磁波が発生しても構わないと言った商品開発が進んでしまう可能性もゼロではありません。
例えば、電磁波の対策のひとつにアースを取ると電磁波が低減されることが示されています。
極端に言えば、すべての製品にアース線を取り付けてアースが取れれば電磁波による影響は低減できることになります。
もちろん、基準がなければどこまで低減させれば良いのかわからないため、商品開発にも電磁波の基準値は必要です。
【種類別】電磁波の基準値
日本国内における電磁波の基準値は電波防護方針によって定められていますが、種類によっては国内の別の組織がガイドラインを策定している場合もあります。
そこで本記事では、種類別に電磁波の基準値について解説していきます。
電波:電波防護方針
電波には総務省が定める電波防護方針があります。
この電波ですが、一般的にはテレビやパソコン、電子レンジなどから発せられる電磁波が含まれるカテゴリーです。
非常に生活する上で欠かせない家電ばかりですので、当然、基準値は必要になります。
その基準値は下記の通りです。
- ・管理環境 SARが0.4W/kg
- ・一般環境 SARが0.08W/kg
環境の違いや数値の違い、SARの考え方についても、電磁波とは?周波数との関係や人体へ及ぼす影響について解説!で解説しているので参考にしてください。
紫外線:GLA
紫外線は、国際照明協会であるGLA(Global Lighting Association)がガイドラインを定めています。
紫外線は主に太陽から発せられますが、浴びすぎることで目や皮膚に対する障害が出る恐れがあります。
そのため、下記のようなガイドラインが策定されているのです。
項目
|
リスク危険度 | |||
免除 | 低 | 中 | 高 | |
電力束密度 S W/m2 |
<10の−3乗 | 3×10の−3乗 | 3×10の−2乗 | >3×10の−2乗 |
※放射エネルギー30J/m2以下の紫外線下で8時間作業をした場合
紫外線については基準値が周波数によって定めれられている点については注意しなければなりません。
放射線:環境省
放射線は環境省が管轄している国際放射線防護委員会(ICRP)が基準値を定めています。
放射線の単位であるSv(シーベルト)を年間の上限基準としています。
一般人の年間基準値は1mSvです。
あくまで一般人が浴びる放射線であり、医者や看護師など医療現場で勤務する人々とは上限が違うことを理解しておきましょう。
参考:環境省ホームページ
低周波:ガイドライン
低周波に関して、日本国内では規制ではなくガイドラインが制定されているのみです。
そのガイドラインは電気設備に関する技術基準を定める省令です。
基準に用いられる数値は2つあり、基準値も2つあります。
- ・電界強度 <3.0kV/m
- ・磁界強度 <200μT
上記の2点については国際的なガイドラインとしてICNIRPからも発表されているのです。
しかも、基準値は日本の方が厳しく設定されていることから、日本の方がしっかり管理していると思われがちですが、決してそうではありません。
日本と海外では、そもそも使用している電圧に違いがあるため。一概に日本国内の方が厳しい基準値であると言えないのです。
低周波は日本と海外で基準値に差がある部分であるといった点を覚えておきましょう。
スマートフォン:電波防護のための基準の制度化
スマートフォンでは、総務省が電波防護のための基準の制度化として基準値を定めています。
実はスマートフォンだけが対象ではなく、携帯電話端末の全般に当てはめられることを理解しておいてください。
周波数範囲 | 基準の要件 | 許容値 6分間平均 |
100kHz〜6GHz | 比吸収効率 SAR | 組織10gあたり2W/kg |
6GHz〜30GHz | 電力束密度 S | 体表面4㎠あたり2mW/㎠ |
30GHz〜300GHz | 電力束密度 S | 体表面1㎠あたり2mW/㎠ |
ちなみに、各種携帯通信事業者は機種別のデータをHPで公開しているので、参考にしたい方は調べてみましょう。
家電全般:EMFA
家電全般に関しては日本電磁波協会(EMFA)がセーフティガイドラインを策定しています。
主な基準は電磁波の構成要素である電場と磁場に分かれています。
- ・電場:25V/m以下
- ・磁場:2.5mG以下
もし一般家庭内で電磁波の対策を実施する場合は、上記の基準値を参考にすると良いでしょう。
電磁波の発生を基準値内に納めるポイント
電磁波の発生を基準値内に納めるポイントは下記の2つです。
- ・現状の電磁波の状況を測定する
- ・電磁波が抑制されている製品かどうかを見極める
もし仮の話ですが、万が一、電磁波に対する対策を施しても電磁波の数値が基準値内に納まらない可能性があることも忘れてはなりません。
そのため、電磁波を基準値内に納めるためのポイントについても意識してみましょう。
現状の電磁波の状況を測定する
大前提として、現状の電磁波の状況の測定は非常に重要なポイントです。
なぜなら、繰り返しになりますが、現状の電磁波の状況を把握しなければ有効な電磁波の対策ができないからです。
反対に、電磁波の状況を事前に測定できれば、どのような対策を施せば電磁波の数値が基準値内に納められるかが考えやすくなります。
そのため、現状の電磁波の状況を測定しておくことが重要です。
電磁波が抑制されている製品かどうかを見極める
家電製品を選択する際、電磁波が抑制されている製品かどうかを見極めるのも重要なポイントです。
では、どのようにして見極めるかですが、製品に電磁波抑制マークがついているかどうかを確認しましょう。
電磁波抑制マークはEMCマークとも呼ばれ、日本国内ではVCCI協会が管轄をしています。
VCCIが発行したEMCマークにも一定の基準値が設けられているので、電磁波が抑制されているかどうかの基準として確認するようにしましょう。
電磁波の測定方法
電磁波の基準値を把握した後は、電磁波の測定を実施しなければなりません。
電磁波の測定には電磁波測定器を準備して、正しい手順で測定を開始します。
基本的な測定手順は下記の通りです
- 1.アースを取る
- 2.交流電界の測定
- 3.アースを外す
- 4.交流磁界の測定
より詳しい電磁波の測定方法は【低・高周波別】電磁波測定器の使い方を解説!原理や測定のポイントもで解説しているので参考にしてみてください。
まとめ:種類ごとの電磁波の基準値を理解し、消費者の健康や安全を保つ
電磁波の基準値は、正しい電磁波の対策を施す上で、非常に重要な役割を担っています。
そのため、まずは電磁波の種類ごとの基準値の理解から始めてください。
さらに電磁波の基準値を理解した上で、正しい電磁波の対策を施すとより効果的に電磁波の発生が抑えられます。
まだまだ電磁波による身体への影響として健康被害については研究中ですが、少なからず身体への影響はあるでしょう。
電磁波測定に普段から携わっている人も、電磁波に関する問合せ対応を実施している人などは、ぜひ本記事を参考にしてみてください。