プールの水質検査について|遊泳・学校プールの検査の方法も解説!
遊泳用プール・学校用プールを運営するうえで大切な水質管理。
重要な処理だとは理解していても、水質検査の意味や方法がわからなければ対処できませんよね。
この記事では、水質検査の目的やプール水の基準値、基準値を下回った際の対処法を解説します。
加えて、水質が原因でトラブルが起きた際の対処方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
水質検査とは
水質検査とは、水を使用する目的ごとにさまざまな項目が基準に合致しているかを測定することです。
では、水質検査の目的は何なのでしょうか。
目的に加え、水道法についても解説します。
水質検査の目的
水質検査では、水道法によって定められた判定基準に則って、水の色・においや、細菌・微生物の有無を検査します。
基準に合致していない場合には、人体に悪影響を及ぼし足り、感染症などの健康被害が起こったりする可能性があります。
つまり、私たちが安心してプールに入ったり、水を飲んだりするために行うのが水質検査です。
水道法の内容
水道事業者は、水道法に基づいて水質検査を行う必要があります。
以下は、水道法(昭和32年6月15日法律第177号)から引用したものです。
第二十条 水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、定期及び臨時の水質検査を行わなければならない。
2 水道事業者は、前項の規定による水質検査を行つたときは、これに関する記録を作成し、水質検査を行つた日から起算して五年間、これを保存しなければならない。
3 水道事業者は、第一項の規定による水質検査を行うため、必要な検査施設を設けなければならない。ただし、当該水質検査を、厚生労働省令の定めるところにより、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者に委託して行うときは、この限りでない。
プール水基準値と水質検査について
老若男女問わず使用する遊泳用プールや学校用プールには、プール水の基準値が定められており、それに則って水質検査を行う必要があります。
快適かつ衛生的に使用するためには、どのような基準値と水質検査が定められているのでしょうか。
順に解説します。
遊泳用プール
遊泳用プール水の基準値と水質検査については以下の通りです。
項目 | プール水の基準値 | 検査頻度 | 備考 |
濁度 | 2度以下 |
使用日の
積算が 30 日 以内ごとに1回 |
|
遊離残留塩素濃度 | 0.4mg/L以上 ※1.0mg/L以下が望ましい |
毎授業日ごとに、プールの使用前及び使用中 1 時間ごとに 1 回以上測定する。
濃度はどの部分でも 0.4 mg/L 以上保持する。 |
|
pH値 | 5.8 以上 8.6 以下 |
プールの使用前に1回測定し、pH 値が基準程度に保たれてい
ることを確認する。 |
|
大腸菌 | 検出されない | ||
一般細菌 | 1mL中 200コロニー以下 | ||
有機物等 (過マンガン酸カリウム消費量) |
12 mg/L 以下 | ||
総トリハロメタン | 0.2mg/L以下が望ましい | 使用期間中 の適切な時 期に1回以 上 |
プール水を 1 週間に 1 回以上全換水する場合は、
検査を省略可能 |
循環ろ過装置の処理水 | 0.5度以下 ※0.1度以下が望ましい |
毎学年 1 回 |
学校用プール
学校用プール水の基準値と水質検査については以下の通りです。
項目 | プール水の基準値 | 検査頻度 |
水素イオン濃度 | pH値:5.8 以上 8.6 以下 | 毎月1回以上 |
濁度 | 2度以下 | 毎月1回以上 |
過マンガン酸カリウム消費量 | 12mg/L以下 | 毎月1回以上 |
遊離残留塩素濃度 | 0.4mg/L以上 ※1.0mg/L以下が望ましい |
毎日午前中1回以上
午後2回以上 ※1回は遊泳者数のピーク時の測定が望ましい |
二酸化塩素濃度 ※塩素消毒に代わり二酸化塩素を使用する場合 |
0.1mg/L以上 0.4mg/L以下 | |
亜塩素酸濃度 ※塩素消毒に代わり二酸化塩素を使用する場合 |
1.2mg/L以下 | |
大腸菌 | 検出されない | 毎月1回以上 |
一般細菌 | 200CFU/mL以下 | 毎月1回以上 |
総トリハロメタン | おおむね0.2mg/L以下 | 毎年1回以上 ※通年営業・夏季営業の場合は6~9月、 それ以外の時期の営業の場合は水温が高い時期に実施 |
レジオネラ属菌 ※気泡浴槽採暖槽などの設備、 エアロゾルを発生させやすい設備、 水温が比較的高めの設備がある場合 |
検出されない | 毎年1回以上 |
プールの水質検査をする方法
快適・衛生的に利用するために重要なプールの水質検査。
では、その方法はどうなのでしょうか。
順にみていきましょう。
遊泳用プール
水素イオン濃度や濁度、過マンガン酸カリウム消費量、一般細菌、総トリハロメタンを測定する際は、水質基準に関する省令(平成4年厚生省令第69号)に定める検査方法や、日本水道協会の上水試験方法などを用いて行います。
日本水道協会から資料を取り寄せたり、水質検査代行サービスを行う企業に依頼したりして、検査を行いましょう。
また、採水場所は以下の通りです。
採水場所 |
長方形のプール:
原則、プール内の対角線上におけるほぼ等間隔の位置 3 か所以上の水面下 20cmの位置
その他プール(簡易用ミニプール等含む):
上記に準じ、プールの形状に応じた適切な地点及び深さ |
原則、水面下約 20cm 付近の 1 か所 以上 |
5分程度放水を行った後
|
学校用プール
学校用プールの水質検査は、プール本体用採水容器・ろ過装置出口用容器を使用して行います。
1.理化学検査用1Lポリビン
①採水容器をプール水で数回洗う
②軽くふたをおさえて、水面下20cmに沈める
③水中で蓋を開け、満水になったら蓋を閉める
2.細菌検査用減菌ビン
①水面下20cmに沈める
※容器内部や口に触れないように注意する
※採水直前まで採水容器を開けないようにする
※採水容器を洗ってはいけない
②採水容器に8割程度水を入れ、蓋を閉める
3.トリハロメタン測定用ガラス容器
①採水容器をプール水で数回洗う
②軽くふたをおさえて、水面下20cmに沈める
③一旦蓋を開け、添加試薬を容器に入れる
④気泡が入らないように蓋を閉める
⑤容器を2~3回ゆっくりと振って、添加試薬を溶かす
※完全に溶けなくてもよい
4.濁度検査用500mL広口ポリビン
①採水容器をプール水で数回洗う
※採水前に、水を充分に流す
※循環ろ過装置出口付近の採水栓から採取する
②満水になったら蓋を閉める
基準値を下回ったときの対処方法
基準値を下回った場合には、どのように対処すればいいのでしょうか。
順に解説します。
遊泳用プール
遊泳用プール水が基準値を下回ったときの対処法は以下の通りです。
項目 | 基準値が不適合な場合 |
水素イオン濃度 |
補水や換水、循環ろ過の改善を行う。
|
濁度 | |
過マンガン酸カリウム消費量 | |
遊離残留塩素濃度 |
塩素剤を追加投入する。遊離残留塩素濃度が0.4mg/L以上になるまではプールの使用を中止する。
|
二酸化塩素濃度 ※塩素消毒に代わり二酸化塩素を使用する場合 |
二酸化塩素を追加投入する。二酸化塩素濃度が0.1mg/L以上になるまではプールの使用を中止する。
|
亜塩素酸濃度 ※塩素消毒に代わり二酸化塩素を使用する場合 |
二酸化塩素の投入量を調整したり補水したりする。亜塩素酸濃度が1.2mg/L以上になるまではプールの使用を中止する。
|
大腸菌 |
0.4mg/L以下の場合:
遊離残留塩素濃度の方法を行う。 0.4mg/L以上の場合: ろ過の改善を行う。 |
一般細菌 |
補水や換水、循環ろ過の改善を行う。
|
総トリハロメタン |
学校用プール
学校用プール水が基準値を下回ったときの対処法は以下の通りです。
項目 | 基準値が不適合な場合 |
濁度 | |
遊離残留塩素濃度 | 塩素剤を投入する |
pH値 |
補給水や pH 調整剤を投入する
|
大腸菌 |
塩素消毒を強化する。大腸菌が検出される間はプールの使用を中止する。
|
一般細菌 | 塩素消毒を強化する。 |
有機物等 (過マンガン酸カリウム消費量) |
入れ替え式のプール:
プール水の一部または全換水を行う。 循環ろ過装置使用プール: ろ過装置使用時間を延ばす。過マンガン酸カリウム消費量が減らない場合は、補給水を増加する |
総トリハロメタン |
プール水の一部または全換水を行う。
|
循環ろ過装置の処理水 | ろ過水を洗う。 |
プールでトラブルが起きた際の対処法
プール水の影響を受け、トラブルが起きた場合にはどのように対処すればいいのでしょうか。
もしトラブルが起きてしまった際は、以下の内容を参考に対処してください。
遊泳中、目が痛い
pH値が酸性・アルカリ性のどちらかに偏っていると、目に痛みを感じる場合があります。
中和剤を投入し、pH値を中性にするようにしてください。
また、残留塩素濃度が高い場合にも目に痛みを覚えます。
塩素中和剤を投入し、基準値内にするようにしましょう。
さらに、プール水の汚れが原因で目が痛むこともあります。
スーパークロリネーションを行ったり、ろ過を行ったりするようにします。
スーパークロリネーションとは、一時的に残留塩素濃度をあげ、アンモニアを分解する処理のことです。
残留塩素が出ない
塩素剤の溶けにくい場合は、塩素剤量を増やしてみましょう。
スーパークロリネーションを行うことでも解消される場合があります。
また、塩素剤が古かったり、採水後に時間がたっている場合は基準値が低くなったり、出ない場合もあるため注意が必要です。
水が茶色になっている
鉄やマンガンなど金属イオンの影響を受け、水が茶色になる場合があります。
スーパークロリネーションを実施しましょう。
水が白色になっている
水が白く濁る原因は、水垢などの有機物にあります。
スーパークロリネーションを行ったり、ろ過機が正常に動いているかをチェックしたりしましょう。
また、凝集剤を使用した際には一時的に水が白くなる場合があります。
水の入れ替えやろ過機のフル稼働で改善します。
水がぬるぬるしている
pH値がアルカリ性になっている場合、水にぬめりが発生します。
中和剤で中性にしましょう。
藻が繁殖している
残留塩素が不足していたり、紫外線が強かったり、藻の胞子が水に入り込んだりすることで藻が繁殖します。
残留塩素の日常管理を夜間・休日問わずしっかり行うことはもちろん、降雨後の残留塩素管理を徹底することで藻の発生を防止できます。
プール塗料が脱色している
薬を直接投入すると、脱色する場合があります。
スタートリクロンを利用する際には、差圧式塩素供給器を使用するようにしましょう。
プールの塩素消毒で防げる感染病
プールには塩素が使用されています。
塩素を使用することにより、プール熱やはやり目、急性出血結膜炎を防ぐことが可能です。
適切な濃度を保てば感染病を防げますので、しっかり管理することが大切となります。
まとめ:正しく水質検査を行い、常にきれいなプールを保とう!
水質検査を怠れば、水の色が変化したり藻が発生したりするだけでなく、感染病にかかってしまったり、目が痛くなってしまったりなど人体に影響を及ぼす可能性があります。
利用者が快適・安全に泳げるように、遊泳用プール、学校用プールそれぞれの正しい水質検査方法を理解し、徹底的に水質を管理してください。