運送業者はアルコールチェッカー導入が必須に。種類や選ぶ基準について
アルコールチェックの義務化が2022年4月1日から施行され、対象事業の運転手に対して運転前後の検査が義務づけられました。
検知器の導入費用もかかるため、具体的な道路交通法施行規則の内容や背景が気になっている運送業者の方もいるのではないでしょうか。
アルコールチェッカー義務化に反する行為は法律違反に該当するため、内容を詳しく理解しないと大きな損失につながりかねません。
今回は、運送業者にアルコールチェッカーが必須な理由や、検知器の種類、選択基準について解説します。
法律を遵守しながら適正な事業運営を行うためにも、今回の内容を参考にしてください。
目次
アルコールチェッカーが運送業者にも必要な理由とは
平成23年5月1日より、運送業者の運転手に対してのアルコールチェッカーによる運転前後の検査が実施されています。
運送業者などが起こす飲酒運転の撲滅を目的に、アルコール検知器により酒気帯び運転の有無を確認するために導入された制度です。
道路交通法により改正された内容であり、運送業者などの対象事業者は各営業所にアルコールチェッカーを備え付けなければいけません。また、正確な検査を行うためにも、常に正常な状態に保持しておく必要もあります。なお以下は、平成22年4月28日、平成23年3月31日にそれぞれ公布された「アルコールチェッカーの使用に関する内容」ですので、ぜひ参考にしてください。
国土交通省:「平成22年4月28日公布のアルコールチェッカーに関する改正」
国土交通省:「平成23年3月31日公布のアルコールチェッカーに関する改正」
また、2022年4月1日より施行されている新たな道路交通法施行規則の内容では、以下の作業が義務化されています。
- 安全運転管理者などの監督義務のある職員が、該当運転手の運転前後に目視確認で飲酒運転チェックする
- 酒気帯び運転の有無についての確認を行い、記録を1年間保管する
2022年10月1日より施行される内容には、以下の確認作業が追加されます(※)。
- 運転手による酒気帯び運転の有無を「アルコールチェッカーを使用して検査」する
- いつでも正常な検査を行えるように「アルコールチェッカーを常時メンテナンス」しておく
※10月以降の義務化の予定が当分延期となりました(2022年7月14日警察庁発表)。
法律に触れないためにも、上記の内容を正しく理解することが重要です。そのほか、運転手が運転前後のアルコール検査をスムーズに検査を行えるように、アルコールチェッカー製造メーカーの取扱説明書に基づいた検知器の維持・管理も徹底しましょう。
アルコールチェッカーの使用が義務付けられた運送業者の対象範囲
アルコールチェックについては、2022年4月1日以前までは緑ナンバーの事業者が対象でしたが、新たに改正された道路交通法施行規則では白ナンバーの事業者もアルコールチェックの義務化に該当するようになりました。
そして2022年10月には、アルコールチェッカーを用いてのアルコールチェックが義務化と発表されています。※10月以降の義務化の予定が当分延期となりました(2022年7月14日警察庁発表)。
緑ナンバーとは、料金をいただいて自社で所有している物品以外のモノを運搬する車両を運転する事業者です。白ナンバーとは、自社で所有する物品のみを運搬する車両を運転する事業者を指します。
2022年4月1日より改正された道路交通法施行規則では、以下の事業者も新たに対象となりました。
- 「乗車定員数が11人以上のマイクロバスなどの自動車」を1台以上保有している事業者
- 「5台以上の社用車」を保有している事業者
- 原動機付自転車を除く自動二輪車は、1台を0.5台として計算したうえで上記に該当する事業者
2022年4月1日以降より、白ナンバーの車を保有する運送業者もアルコールチェックの義務対象となりました。
運送業者が把握すべき2022年改正のアルコールチェック義務化の内容
2022年4月1日に施行された内容では、以下の安全運転管理者による運転手の運転前後のアルコールチェック作業が義務化されています。
- 該当する運転手の運転前後の状態を目視等で確認することにより、酒気帯び運転の有無を把握
- アルコールチェックの記録を1年間保存する
2022年10月1日以降に改正予定の内容は、以下のとおりです(※)。
- 運転手の運転前後における酒気帯びの有無を、アルコールチェッカーを使用して確認する
- アルコールチェッカーを常に有効に保持する必要がある
※10月以降の義務化の予定が当分延期となりました(2022年7月14日警察庁発表)。
また上記以外にも、
- ・自動車を使用する営業所ごとに、安全運行に欠かせない業務を取りまとめる「安全運転管理者」を選任。
- ・一定期間内に管轄の警察署への必要書類の届出作業。
- ・交通安全教育、運転者の適正チェック、運行計画の作成、交代運転者の配置などの諸業務
などの業務が、管理者に求められます。
詳しくは、以下に添付した警察庁・都道府県警察より公表されている「アルコールチェックの義務化」に関する資料をご確認ください。
警察庁・都道府県検察:「道路交通法施行規則の改正によるアルコールチェックの義務化」
アルコールチェックが義務化された背景
2022年4月1日に施行された道路交通法施行規則により、アルコールチェックの義務化が実施された背景には、「2021年に千葉県八街市内で発生した事故」が関係しています。
2021年6月28日、当時千葉県八街市の学校から下校中だった小学生らの集団に、飲酒運転による居眠り運転の白ナンバー車が衝突して、児童5人が死傷するという大事故が発生したのです。
国内では2011年以降から飲酒運転による規制を強化してきましたが、トラック、バス、タクシーなどのプロの運送業者による飲酒運転事故は一向に撲滅される気配がない状態が続いていました。
そのなかで発生した千葉県の事故は、加害者の飲酒運転の常習化や、勤務先親会社が安全運転管理責任者の選任を行っていなかったなどの杜撰な管理体制が浮き彫りとなったのです。
当時、大々的に全国で取り上げられた痛ましい事件ということもあり、政府・官邸などの関係各所は迅速に「道路交通法施行規則」の改正に着手。
わずか10ヶ月というスピード対応で、2022年4月1日よりアルコールチェックの義務化が適用されたという背景があります。
運送業者が知っておくべきアルコールチェッカーの主な種類や判断基準
現在販売されているアルコールチェッカーは、持ち運びに便利な携帯性の高いやタイプやPCとリンクさせて使用する高性能タイプなど、バリエーションが豊富です。
以下で解説する内容を参考に、各アルコールチェッカーの種類や特徴などを把握して、自社での運用に適した検知器を選ぶようにしましょう。
センサー別のアルコールチェッカー
アルコールチェッカーを用いた検査は、検知器本体に内蔵されているセンサーが、検査対象者の呼気中アルコール成分を検知して知らせてくれる仕組みです。
アルコールチェッカーには主に、以下の2種類のセンサーが採用されています。
半導体式ガスセンサー
アルコールチェッカー本体に内蔵されている1種類目のセンサーは、「半導体式ガスセンサー」です。
半導体式ガスセンサーは、検知器表面の酸素濃度に反応し、センサー内部の電気抵抗値が変化することで、検査者のアルコール濃度がわかります。
アルコール摂取量が多い場合は、呼気中の酸素濃度が減少してアルコールチェッカーが検知する電気抵抗値が低くなるため「アルコール濃度が高い」と判断できる仕組みです。
逆にアルコールを摂取していなければ、呼気中の酸素濃度も正常量を維持できることから、アルコールチェッカーが示す電気抵抗値は高く表示されて「アルコール濃度は低い」と判断できます。
なお、アルコールチェッカーの電気抵抗値とアルコール摂取量との関係性を示した参考例は、以下のとおりです。
- アルコールチェッカーが示す電気抵抗値(酸素濃度)が高い=「アルコール摂取量が低い」
- アルコールチェッカーが示す電気抵抗値(酸素濃度)が低い=「アルコール摂取量が高い」
また、半導体式ガスセンサーは購入価格が比較的安価な傾向にあり、検査時間も短いのが特徴です。一方、アルコールチェック前後に摂る食事、ガム、タバコ、などのアルコール以外の類似成分に反応することや、周囲の酸素濃度などに検査結果が影響を受けることもあるため注意が必要です。
電気化学式(燃料電池)ガスセンサー
アルコールチェッカー本体に内蔵されている2種類目のセンサーは、「電気化学式(燃料電池式)ガスセンサー」です。
電気化学式(燃料電池式)ガスセンサーとは、検査対象者の呼気中に含まれるアルコール成分に反応して燃料に変換。呼気中のアルコールガスを燃料に電気を発生させてアルコール濃度を測定できる仕組みです。
摂取したアルコール量に比例して、アルコールチェッカーの電気発生量が増減するため、アルコールチェッカーの電気発生量の数値が高い場合は、「アルコール摂取量が多い」と判断できます。
なお、アルコールチェッカーの電気発生量とアルコール摂取量との関係性を示した参考例は、以下のとおりです。
- アルコールチェッカーが示す電気発生量が高い=「アルコール摂取量が高い」
- アルコールチェッカーが示す電気発生量が低い=「アルコール摂取量が低い」
また、電気化学式(燃料電池)センサーは、食事やタバコ、ガムなどに含まれるアルコールに類似した成分に反応しづらかったり、センサー周辺の酸素濃度に影響されにくかったりします。
食事や周辺酸素などの外的要因による影響を受けづらいゆえ高精度な検査が行える反面、アルコールチェッカー本体の購入価格はやや高い傾向です。
使用タイプ別のアルコールチェッカーの主な種類
アルコールチェッカーは、外出先でも検査できる運送業者に最適な持ち運びタイプの検知器や、営業所内の卓上などに据え置いて使用する2タイプに分類されます。
それぞれのタイプのメリット・デメリットを正しく理解して、ご自身の営業所で使用するのに適した検知器を選ぶことで、適正な運送業運営が行えるためぜひ以下の内容を参考にしてください。
設置型タイプのアルコールチェッカー
設置型タイプのアルコールチェッカーは、コンセントなどの主電源を必要とする検知器が一般的であるため、営業所内に設置しながら使用する機器です。
専用コードでPCと接続しながら使用することで、大量の検査結果データを一元管理。検査結果を毎回手書きで記録する必要がなくなるため従業員の作業も減るほか、紙媒体に代わってデータ管理できるため安心です。
検知器のなかには、専用プリンターにつないで検査結果を簡単にプリントアウトできるタイプもあり、高性能な機能が多く備えられています。しかし、持ち運びに不向きなサイズのため、外回りが多い運送業者には向いていません。
一方、設置型タイプは安全運転管理者が在籍する場所で検査を行うため、不正検査を防げるメリットもあることから、多数のドライバーが所属している運送業者に向いているといえます。
携帯型タイプのアルコールチェカー
携帯型タイプのアルコールチェッカーは、スマートフォンのようなコンパクトなサイズの検知器が一般的なため、配送などで外回りを行う際にも気軽に持ち運べる機器です。
アルコールチェック検査を済ませたあとには、記録帳などに手動でデータを残しておく必要があります。運送業務以外の雑務が増えてしまうものの、外回りの際にはカバンやポケット、車の中などに携帯しておけるため業務に支障をきたすこともありません。
設置型と比較すると多機能面でやや劣る点はありますが、アルコール濃度の検査精度に問題はなく、比較的購入価格も安いことから個人のドライバーにも利用されています。
配送などの外回りを頻繁に行い、長距離運転でさまざまなエリアに移動する運送業者に向いているアルコールチェッカーです。
測定方法別のアルコールチェッカーの主な種類
アルコールチェッカーにはセンサーや使用タイプのほかに、測定方法別によっても検知器の種類を分類できます。
主に使い捨てのアタッチメントを使用した「ストロー式」「マウスピース式」と、検知器本体に呼気を吹きかけて検査する「吹きかけ式」の3種類です。
運送業務の内容や検査用途によっても、選ぶべきアルコールチェッカーが異なるため、以下の内容を確認して使いやすさを意識しながら確認してみましょう。
ストロー式のアルコールチェッカー
ストロー式のアルコールチェッカーは、検知器本体のアタッチメント部分に捨てストローを差し、咥えたストロー通じて検知器本体に呼気を送りこんで検査する機器です。
アタッチメント部分は使い捨てストローなので衛生的なほか、直接ストローを通る呼気は周囲の酸素の影響を受けにくいため高精度な検査が行えます。使い捨てアタッチメントの在庫を意識したり在庫発注を依頼したり、雑務が増えてしまうものの、常に正確に検査を行える安心のアルコールチェッカーです。
なお、ストロー式には営業所内で使用する設置型タイプと、持ち運びに便利な携帯型タイプがあります。外出が多い運送業者は携帯式が向いているといえます。
マウスピース式のアルコールチェッカー
マウスピース式のアルコールチェッカーは、ストロー式同様に使い捨てのアタッチメントを使用しながら衛生的に検査を行える機器です。ホイッスルの形状をしたマウスピース式のアタッチメントから、直接検知器に呼気を送りこむため正確な検査が期待できます。
使い捨てのストロー式と同じく、設置型と持ち運びに便利な携帯型が販売されています。設置型もストロータイプ同様に、音声ガイド機能、プリンター内蔵、テンキー搭載、クリーニング機能、災害時電池運用可能などの多機能面が魅力です。
長距離運転や外回りの配送業などが少ない運送業者は、設置型アルコールチェッカーが向いているといえます。なお、マウスピース式もアタッチメントの在庫には注意しながら使用してください。
吹きかけ式のアルコールチェッカー
吹きかけ式のアルコールチェッカーは、検知器本体に内蔵されている吹きこみ口に検査者の呼気を直接吹きかけるタイプの機器です。
ストロー式やマウスピース式と異なり、アタッチメントを使用しないため周囲の酸素に影響を受けやすい傾向にあります。また、アルコールチェッカー本体に直接呼気を吹きかけるため、検査者の口内の唾液や細菌などの飛沫が検知器に付着してしまう点も懸念すべき点です。
検査後前後には、からなず消毒で入念に掃除する必要がありますが、一方でアタッチメントなどの在庫を気にする必要がないため、アルコールチェッカー本体があればいつでも検査できます。
なお、検査前には清掃用の消毒液がしっかりと揮発してからアルコールチェックを行うようにしてください。
データ保管方法別のアルコールチェッカー
アルコールチェッカーにはさまざまなデータ管理方法があり、使用タイプや測定方法などと同様に検知器によって記録方法が異なります。
アルコールチェッカーごとの細かな特性をしっかりと把握してから購入することで、使い勝手の悪い検知器を購入してしまうリスクを下げられるでしょう。
アルコールチェッカーでは具体的に、以下の管理方法がとられています。
- 手書き保存型
機器本体にメモリー機能が内蔵されておらず、PCやスマートフォンとの同期もできないタイプ
- 検知器本体保存型
検知器に内蔵されているメモリーやSDカードに保存して、検査後はPCに転送できる
- PC接続型
設置型、携帯型のアルコールチェッカーとPCをUSBなどで接続してデータをやり取りする
- プリント型
アルコールチェッカー本体に、プリンター専用用紙を内蔵して検査結果をリアルタイムに出力してくれる。別帳簿にプリント用紙をファイリングして保管する
- 専用ソフト型
アルコールチェックの検査結果を管理するための専用ソフトを購入。ソフトをインストールして、アルコールチェッカーと同期させながらPC上で保管
- クラウド型
アルコールチェッカーによる検査結果を直接クラウドに保存してくれて、スマートフォンと同期して使用することも可能
データ保管場所は、紙媒体、PC、クラウドの3種類に分けることができ、なかにはスマートフォンと同期できるアルコールチェッカーもあります。
購入する際は、価格帯や使用方法、メンテナンス内容などを総合的に勘案して選ぶようにしましょう。
運送業者に適しているアルコールチェッカーの平均相場
外回り業務の多い配送業者には、携帯型のアルコールチェッカーが適しているといえます。
携帯型のアルコールチェッカーの平均相場は、使用タイプに応じてピンキリで販売されているため、一様に特定金額で答えることはできません。
1,000円台〜5,000円台で販売されているアルコールチェッカーが比較的多い傾向ですが、なかには10,000円台を超える携帯型検知器があったり、さらに高い検知器になると50,000円近くするハイエンドモデルも販売されているのです。
また、携帯型よりも設置型のアルコールチェッカーが適している運送業者の場合だと購入価格はさらに高くなるでしょう。設置型アルコールチェッカーは、携帯型に比べて高性能な検知器が多く流通しており、50,000円以上するタイプも珍しくありません。
現在販売されているアルコールチェッカーはさまざまな特徴を備えているため、購入前後は入念にリサーチしたり検討したり、納得した状態になってから購入すると失敗が少なくなります。
運送業者がアルコールチェックをしなかった場合の罰則
2022年4月1日に施行されたアルコールチェック義務化の時点では、運転前後の検査を行わなかったとしても直接的な罰則がありません。
しかし、飲酒運転が発覚した場合は、道路交通法第117条により「飲酒運転(酒気帯び運転)」として罰せられます。
飲酒運転による行政処分の内容や罰則を改めて営業所内に周知することで、社内全体でアルコールチェッカー使用の義務化への理解をさらに深めることができるでしょう。
飲酒運転が発覚した際の行政処分
運送業者に限らず飲酒運転が発覚した場合に受ける行政処分は、以下のとおりです。
- 車両の正常運転ができない酒酔い運転
=基礎点数「35点(免許停止の場合:運転免許が受けられない期間が3年)」 - 酒気帯び運転で呼気中のアルコール濃度が「0.25mg/l以上」
=基礎得点「25点(免許停止の場合:運転免許が受けられない期間が90日)」 - 酒気帯び運転で呼気中のアルコール濃度が「0.15mg/l以上0.25mg/l未満」
=基礎得点「13点(前歴などがない場合:90日間の免許停止)」
業務時間以外のプライベート時に飲酒運転が発覚した際は、主に飲酒運転を行なった運転手が行政処分を受ける対象になるため、運送事業者まで罰則を受ける心配はありません。
しかしプライベートであっても、従業員の飲酒運転による重大な事故が大きな社会問題として取り上げられる可能性もあるでしょう。
その場合、運送事業者としての日頃の管理責任が問われて間接的な損害を被るケースも想定できるため、公私ともに注意喚起しておくことが大切です。
運送業者が飲酒運転して検挙された際の行政処分
運送事業者が業務中に飲酒運転違反を犯して検挙された場合、以下のような行政処分を受けます。
- 飲酒した運転者が事故を発生させた場合
「初違反:100日車(100日間運行できない車)」
「再違反:300日車(300日間運行できない車)」
- 運送業者が飲酒運転などを下命容認した場合
「14日間の即時事業停止」
- 運送業者が飲酒運転などを伴う重大な事故に関する指導監督義務違反した場合
「7日間の即日事業停止」
- 運送事業者が飲酒運転に関する指導監督義務違反をした場合
「3日間の即日事業停止」
- 運送事業停止後も引き続き法令違反の改善が見られない場合
「免許取り消し」
運送業者が飲酒運転による交通事故を起こした場合、非常に重い行政処分を受けることになります。2021年6月28日に、千葉県八街市内の小学生5人が被害に遭遇した飲酒運転では、警察の捜査により運送事業者が安全運転管理責任者を選任していないことが発覚。同時に、アルコールチェッカーの使用も行われていなかったことがわかっています。
運送業界全体の共通認識として、二度と同じような事故を起こさないためにも、日々のドライバーの管理体制やアルコールチェッカーの義務化などには十分に注意することが重要です。
飲酒運転による罰則
飲酒運転による刑罰は、運転手のみならず、お酒を提供した店舗・人物・飲酒運転していた際に車に同乗していた人が対象になるため被害範囲が広いのが特徴です。被害が自分のみで収まらないため、十分に注意する必要があります。
以下、飲酒運転をした際の刑罰の詳細内容です。
- 飲酒運転をした人物
酒酔い運転をした場合:「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」
酒気帯び運転をした場合:「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」
- 車両を提供した人物
運転手が酒酔い運転をした場合:「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」
運転手が酒気帯び運転をした場合:「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」
- お酒を提供した人物または飲酒運転時の車に同乗していた人物
運転手が酒酔い運転をした場合:「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」
運転手が酒気帯び運転をした場合:「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」
上記の行政処分や罰則以外にも、安全運転管理者などを選任せずに運送業務を行なっていることが発覚した場合にも、5万円以下の罰金が課せられます。
金額は低いものの、日常の小さな気の緩みが大きな事故を招く引き金になりかねないため、改めて関係営業所にアルコールチェッカー義務化などの一斉周知を行い対策を取りましょう。
まとめ:運送業者は点呼時のアルコールチェッカー使用に向けて準備を
アルコールチェッカーはさまざまな種類が販売されています。
外回りや長距離移動が多い運送業者は携帯型のアルコールチェッカーを使用し、外回りが少なく運転手が営業所に立ち寄る回数が多い場合は、事務所設置型の高性能なアルコールチェッカーが適しているといえるでしょう。
また、検査方法やデータ管理方法などの特徴によっても選ぶ検知器が変わってくるため、運送業務内容との適合性を検討したうえで購入してください。
2022年10月を予定していたアルコールチェッカーの義務化は、機器の供給不足により延期と発表されましたが、今のうちに十分な準備を済ませておきましょう。