pH計とは?測定原理や測定方式、形態の種類についても解説
酸性やアルカリ性といったpHを調べるpH計は、水質や土壌の測定などに活用されており、私たちがより安全に生活するのに欠かせない数値のひとつです。
pH計にはさまざまな測定方式や種類があるのをご存知でしょうか。
本記事では、pH計の測定原理や測定方式、形態の種類について解説します。
pH計をこれから導入しようとしている担当者は、どのタイプを導入すれば良いか本記事で事前に知識を深めてください。
目次
pHとは?
pH(Potential Hydrogen)とは「ペーハー」や「ピーエッチ」と呼ばれる水素イオン濃度の略称を指します。
日本語では「水素イオン指数」と呼ばれることが一般的で、pHは、その液体が酸性なのかアルカリ性なのかを示す値をいいます。
酸性とアルカリ性を示す数値
pHは0から14の数値で示され、1にいくほど酸性が強く、14にいくほどアルカリ性が強いことを表しています。
pH7は中性であると定義をされており、pHが7より小さいと酸性を表し、7より大きいとアルカリ性を示します。
例えば、厚生労働省によって定められている飲料水の水質基準は、pH5.8以上〜8.6以下(弱酸~弱アルカリ)です。
この基準は重要な指標のひとつで、水質を調べることによって、水源の汚染状況や、浄水場で薬品をどれくらい使用するかなどの判断基準となります。
水道水やプール、または河川放流においても上記のpHが定められている身近な例です。
また、pHを測定できるリトマス紙というものも、実験に使用されることがあります。
リトマス試験紙とは、リトマス溶液を濾紙(ろし)に染み込ませて乾燥させたもので、青色の試験紙はpH4.5以下を下回る酸性の溶液で赤になり、赤色の試験紙はpH8.3を上回るアルカリ性の溶液で青に変化する性質があります。
しかし現代においては、リトマス紙でpHをはかるのではなくpH計という便利な測定器を用いることがほとんどです。
pHの値について
pH7は中性、pHが7より小さいと酸性を示し、7より大きいとアルカリ性を示しています。
酸性の水溶液は、舐めたときに酸っぱいと感じる特徴を持っているのに対し、アルカリ性はなめたときに苦く感じる特徴を持っています。
例えばレモンのしぼり汁はpH0の酸性で、石けん水はアルカリ性のph14。
このような数値は、水中に含まれているイオンの比率によって変化するのです。
また、pHの値を決める要素は「水素イオン濃度」で、水溶液にどのくらいの割合で水素イオン濃度が「電離」をしているかを表しています。
電離とは、電気的に中性な物質が、H+やOH-の電荷をもつ原子や分子に変化することをいいます。
水はH2Oという分子式で表されていますが、水中にはごくわずかに水素イオン(H+)と、水酸化イオン(OH-)に電離したものが存在しています。
水素イオン濃度は、水素イオンH-と水酸化イオンOH-が、水中にどれくらいの比率で存在しているかで決まります。
水素イオンが多いと酸性となり、水酸化イオンの方が比重が高いとアルカリ性を示します。
pH計とは?
pHを測定するための、pH計という測定器をご紹介します。
pH計とは、水溶液の酸性やアルカリ性を正確に計ることができ、非常に多くの分野で使用されている計測器です。
例えば、植物は品種によって育ちやすいpHの値が異なってくるため、土壌のpH値を調べるために使用されます。
工場排水や河川放流などの分野では、公害が起きないよう、国が定めた基準値を超えないように水質調査で使用されることもあります。
計上や形、使用できる環境やスペックなどもさまざまなので、使用用途に応じて、器具を選択することが大切です。
pH測定方式の改訂
そもそも、pH7が中性であると定義をしたのは、デンマークの化学者セーレンセンでした。
セーレンセンは、酸性度の指標として、水素イオン指数pHという概念を初めて導入した化学者です。
当時、セーレンセンはpH=log10[H+]であると水素イオン濃度を示し、中性溶液のときは[H+]=10-7となってpHが7になると定義付けました。
その後もpHに関する研究は進み、1920年、セーレンセンの定義した尺度が変更され、これまでpH=-log10 aH+であったのが、aH+ = f ×[H+]であると定義の見直しが行われることとなりました。
pHは水素イオンの濃度だけでなく、イオンの活量によって変化することがわかったため、測定方式が改訂されました。
変更されたのはJIS Z 8802規格のpH測定法と、JIS規格 K 0018~0023のpH標準液についてです。
これによってpHはpH標準液によって定義をされた数値と考えて良いことになり、pHの測定方法はガラス電極法に限定されることとなったのです。
pH計の測定原理(ガラス電極法)
つづいて、pHを測る一つの測定方法である、ガラス電極法の測定原理について、見ていきましょう。
ガラス電極法とはpHガラス電極と比較電極の二つの電極を用いて、それぞれの電極の間に生じた電圧を図ることで、溶液のpHを測定できるという方法です。
薄膜の内側と外側にpHの異なる溶液があることによって、薄膜部分にpHの差に比例した電圧が発生します。
この薄膜を、pHガラス応答膜と呼んでいます。
一般的な測定方法として、pHガラス電極の内部液にはpH7の液体を使用。
溶液が25℃のとき、2つの溶液のpHが1違うと、約59mVの起電力が生じる原理です。
この起電力を測定することで、対象液のpHがわかります。
加えて、pHガラス応答膜に生じた電圧を図るためには、もう一本電極が必要です。
pHガラス電極とは別になっているもう一本の電極は、比例電極と呼ばれており、値を測る上では重要な役割を担っています。
ガラス電極で発生する電位差を測定するため、溶液の組成や濃度に関係なく、一定の電位を示す必要があるのです。
そのため、液脈部といった、比較電極の内部液と試料溶液が接触するこれらの部分では液間の電圧差を小さくするため、比較電極内部液に含まれる塩化カリウムを試料溶液内に少しずつ放出をしています。
これによって、カリウムイオンと電荷物イオンによる電位差で、液間の電圧が決まります。
ガラス電極は、様々な用途に適合した形状のものが市販されていますが、より安定した測定を行うためには、ガラス応答膜が試料溶液に完全に浸せることと、液脈部からの内部液の流出が安定することなど、各場面に応じたもののチョイスが必要です。
pH計各部の名称と役割
ここまで、ガラス電極法の測定原理などをお伝えしてきました。
ガラス電極のpH測定器は、検出部、指示部、標準液といった構成に分けることができます。
本段落では、それぞれの構成要素について解説を行っていきますので、下記で各名称についてポイントを抑えましょう。
検出部
検出部は、さらにガラス電極、比較電極、温度補償電極の3つにわけることが可能です。
ガラス電極
ガラス電極は、pHを測定するガラス管と高絶縁の支持菅、ガラス電極内部液、内部電極、リード線とガラス電極端子から作られています。
pH応答性のガラス膜は、ガラス電極において最重要の箇所でしょう。
ガラス電極を使用する上では、下記の点が重視されます。
- 水溶液のpHに対応した電位を発生すること
- pHに反応すると当タイミングで、酸とアルカリには浸食されてはならない
- 膜の電気抵抗が大きすぎてはいけない
- 内部液と同じ液の中に電極を浸すとき、液と液の間で大きな電極差を生んではいけない(大きな電極差を、非対称電位差と呼ぶ。)
- 衝撃や薬品に対する耐性があるか
などがポイントとしてあげられます。
内部液は中性に近いpH7前後で使用されることが多く、pHの緩衝力を付加した、塩化カリウム水溶液で計測が行われることが一般的です。
比較電極
比較電極は、ガラス電極に発生した電圧を測定するため、ガラス電極と併用されるもののことをいいます。
水溶液のpHと無関係に、一定の電位を示します。
比較電力は、液脈部、内部液、補充口、比較電極支持菅、比較電極内部液、内部電極やリード線から成り立っていることが一般的です。
温度複合機
温度複合機とはは、ガラス電極に発生する水溶液の温度で変化をした電圧を測定するもののことです。
ガラス電極に発生をする起電力は、水溶液の温度によって変化するものです。
温度補償という名前は、温度による起電力の変化を補償するものであり、温度によるpH値の変化と、温度補償は関係ないということに注意しましょう。
指示部
指示部とは、正確な電圧の差分を測定するため、様々な調整用の抵抗などを加えたものをいいます。
ガラス電極と比較電極を組み合わせると、内部の抵抗が非常に強い電池であると考えられます。
これをそのまま電圧を測る装置=電圧計とつないでも、電位差がぶれてしまい、正確に測るのは困難です。
そのような場合、高入力のインピーダンスの増幅器が必要となるので、注意が必要です。
標準液
pH測定を行う場合は、標準液によるpH計の校正が必要となります。
標準液としては緩衝液という、pHが変化しにくい溶液を用います。
pH計の種類
ここまででpH計の原理についてお伝えしてきました。
水は様々なところに存在をしていますが、pH計はどのような種類があり、種類によってどのように活用されているのでしょうか。
pHメーター(コンパクトタイプ)
コンパクトタイプのpHメーターは、脇に挟む体温計ほどのサイズ感をしているものが一般的です。
水溶液の性質である、酸性やアルカリ性を側的できる装置で、コンパクトに持ち歩くことができるため様々な分野で活用されています。
手軽に測定する際に便利ですが、防水加工されていないものも多いため、測定部以外に水がかかってしまう可能性には注意です。
ペンのような形をしていることから、コンパクトタイプではなく、ペンタイプと呼ばれるものもあります。
pHメーター(ハンディタイプ)
ハンディタイプは、長方形の機種からコードが伸びで、コードの先に検出部が付いているタイプです。
コードが長いものを選べば、水の中に直接つけやすいので、川や海などを測定する外部調査に向いています。
土壌を計測するものは、コードでは測りづらいこともあるため、小型の機体に棒がついたものが一般的となっています。
pHメーター(定着タイプ)
研究室などで使用する、置き型タイプのものもあります。
コンパクトタイプやハンディタイプと比べ、大きいものが多く、中にはタッチパネルで操作できるものもあります。
外には持ち出さないが、高機能で正確に測ることができるpHメーターをお探しの方におすすめです。
測定の原理を理解し、pH計測定器を調査に役立てよう
pHとは、私たちやその他生物が安全に暮らすのに重要な指数です。
水道水や、食物を育てる際の土壌、水質調査など、pH計は役立てられています。
本記事ではpH計の原理や測定方式、種類などをお伝えしてきました。
これから導入を検討されている担当者は、使用用途に合わせ適切なpH計を選んでください。