顕微鏡の倍率はどう選べば良い?計算方法や種類について解説!
人間の目では確認できないほど小さい物や微生物などを観察できる顕微鏡ですが、顕微鏡にはいくつかの種類が存在します。
使用する用途や観察する対象物によって、適切な顕微鏡の種類を選択しなければなりません。
また、本体以外にも、顕微鏡に使用するレンズの倍率によっても観察物の見え方は変わってきます。
そのため、普段の業務で顕微鏡を使用していて、顕微鏡の倍率の決め方に頭を悩ませている担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、顕微鏡の種類や倍率ごとの違いなどについて解説していきます。
顕微鏡を使用した業務を担当している方や、自社で顕微鏡を製品として扱っている企業の担当者は参考にしてください。
目次
顕微鏡の種類と倍率
顕微鏡にもいくつかの種類があり、種類ごとに使用可能なおおよその倍率が決められていますが、顕微鏡の種類は光学顕微鏡と電子顕微鏡の2つに分けられます。
さらに光学顕微鏡は実体顕微鏡と生物顕微鏡に分けられるのです。
ここでは下記の3種類をそれぞれ解説していきます。
- ・実体顕微鏡
- ・生物顕微鏡
- ・電子顕微鏡
顕微鏡の選択に迷われている方は、ぜひ参考にしてください。
参考記事:デジタル顕微鏡とは?光学顕微鏡との違いや種類・用途など
実体顕微鏡
実体顕微鏡は倍率が5〜50倍と低めに設定されているため、大きめのものを観察する際に使用される顕微鏡です。
観察対象の例としては下記のものが挙げられます。
- ・植物
- ・動物
- ・切手
- ・チップ(基盤)
- ・シルク
- ・岩石
- ・ジュエリー
- ・虫
実体顕微鏡では観察時に上下が反転したり、左右が反転したりせず、倍率も低く極端な拡大がされないことから、より自然な状態の観察を実施できます。
実体顕微鏡では倍率が低めに設定されているため、大きめのものを観察する際に適している顕微鏡である点を覚えておきましょう。
生物顕微鏡
生物顕微鏡の多くは倍率が40〜1,500倍と幅広く、一般的な顕微鏡のひとつです。
学校にも配置されている顕微鏡であり、授業で使用したりしているため、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
具体的には、倍率の違うレンズが顕微鏡についており、レボルバーと呼ばれる台座を回すことで倍率が変更できる顕微鏡です。
実体顕微鏡とは違い、生物顕微鏡を通して見える画像は上下左右が反転しています。
幅広い倍率で観察ができ、理科の実験や医学などの研究において一般的に使用されるのが生物顕微鏡です。
電子顕微鏡
電子顕微鏡は2,000倍から100万倍程度の倍率に対応しており、使用用途が幅広い専門性の高い顕微鏡です。
また、電子顕微鏡は観察可能な倍率が非常に大きいため、下記の研究などに使用されています。
- ・物理学
- ・化学
- ・生物学
- ・工学
- ・医療
その倍率の大きさから、DNAやウィルスなどの非常に細かな物質が観察できる一方で、顕微鏡のサイズが大きかったり、本体の価格が高かったりするなどの側面も持ち合わせています。
顕微鏡の倍率にも種類がある
実は顕微鏡の倍率にも種類があり、単純に倍率が大きければ観察対象が拡大されて観察しやすい訳ではありません。
顕微鏡には対物レンズと接眼レンズがあるため、2つのレンズの組み合わせで観察対象の見え方が異なるのです。
ここでは3つの倍率の種類について解説していきます。
- ・対物倍率
- ・総合倍率
- ・モニタ倍率
それぞれの倍率について解説していくので、顕微鏡を使用する際は、レンズの選択の参考にしてみてください。
対物倍率
対物倍率とは、対物レンズに定められている倍率のことです。
具体的には観察対象側のレンズの倍率を指します。
本来であれば、顕微鏡は対物レンズと接眼レンズを組み合わせて使用しますが、対物倍率は接眼レンズなどの要素を取り除いているため、純粋に対象物の観察において一定の基準として考えられています。
一方で、観察の際には接眼レンズなどと組み合わせて使用されるため、実際には倍率の計算に必要な基準であり、対物倍率のみで観察時の見え方が決められる訳ではないことは理解しておかなければなりません。
総合倍率
総合倍率とは、対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率を掛け合わせたものを指します。
具体的には下記のような計算で総合倍率は求められます。
- ・対物レンズ(40倍)× 接眼レンズ(10倍)= 総合倍率(400倍)
- ・対物レンズ(40倍)× 接眼レンズ(20倍)= 総合倍率(800倍)
しかし、ここで理解しておきたいのは対物レンズの倍率によって観察対象の見え方が変わってくる点です。
下記のケースを用いて解説していきます。
- ・対物レンズ(40倍)× 接眼レンズ(10倍)= 総合倍率(400倍)
- ・対物レンズ(20倍)× 接眼レンズ(20倍)= 総合倍率(400倍)
どちらも総合倍率が400倍ですが、対物レンズの倍率が大きい方が観察時の見え方は大きく見えます。
そのため、総合倍率は対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率を掛け合わせたものだが、実際の見え方は対物レンズの倍率が重要である点を覚えておきましょう。
モニタ倍率
モニタ倍率とは、モニタに映し出されたときに現物の大きさからどのくらい拡大して見られるかを表している倍率です。
例えば、直径1mmの物体をモニタに映し出したとします。
その際にモニタ上では直径が100cmで表示されているとすると、モニタ倍率は100倍とされるのです。
あくまでモニタに映し出された際の大きさが基準になるので、当然モニタ自体の大きさが倍率には関係してきます。
モニタ自体が大きくなればなるほど、モニタ倍率は大きくなり、小さくなればモニタ倍率も小さくなります。
モニタ倍率はモニタに映し出される際の倍率であり、同じ顕微鏡を使用し、モニタだけを違うものに変更したとしてもモニタ自体の大きさに依存する点を覚えておきましょう。
顕微鏡の倍率の計算方法
実際に顕微鏡を業務に使用する際、どの倍率を選択すれば良いか悩む場合も多いのではないでしょうか。
倍率の種類にもあったように、顕微鏡の倍率は主に対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率を掛け合わせた総合倍率で考えます。
そのため、ここでは2つのケースを用いて実際の倍率を求めていきたいと思います。
- ・ミジンコを150倍に拡大したいケース
- ・ミジンコの面積を4倍にして観察したいケース
実際の顕微鏡の利用において倍率の選択に悩まれている方はぜひ参考にしてください。
ミジンコを150倍に拡大したいケース
ミジンコを150倍に拡大したいケースでは、方程式を用いて倍率の計算をします。
例えば、接眼レンズの倍率が10倍のときに対物レンズの倍率をxとすると「10x =150」の方程式が成り立ちます。
方程式を解くとx=15となるため対物レンズの倍率は15倍になります。
反対に、接眼レンズが15倍のときには「15x =150」が成り立つため、方程式を解くとx=10となり、対物レンズは10倍を使用すれば良いとなるのです。
ミジンコの面積を4倍にして観察したいケース
ミジンコの面積を4倍にして観察したいケースでは、使用したレンズの総合倍率によっても異なりますが、ここでは150倍と仮定します。
ミジンコの面積を4倍にして観察するとなると物理的に各辺の長さが2倍になれば良い訳です。
つまり、使用したレンズの総合倍率を2倍にすれば良いので、総合倍率が300倍になるようにしなければなりません。
その上で、再度、方程式に当てはめて計算していきます。
接眼レンズを10倍とするなら、「10x=300」の方程式が成り立ち、x=30となるため、対物レンズの倍率は30倍となります。
顕微鏡の倍率ごとに観察可能なもの
顕微鏡の倍率について解説してきましたが、実際には倍率ごとに観察可能なものが違います。
ここでは顕微鏡の倍率ごとに、使用される顕微鏡の種類や観察可能なものを表にまとめましたので参考にしてください。
倍率 | 種類 | 観察可能なもの |
50倍程度 | 実体顕微鏡 | 虫・植物・動物など比較的大きいもの |
100~400倍 | 生物顕微鏡 | 微生物(ミジンコ・プランクトン) |
200倍程度 | 生物顕微鏡 | 花粉 |
400倍程度 | 生物顕微鏡 | 細胞(形状の判別が可能な状態) |
800~1500倍程度 | 生物顕微鏡 | 細胞(内部の構造)・染色体 |
5万~15万倍 | 電子顕微鏡 | ウィルス |
参考記事:2,000倍のデジタル顕微鏡で見えるものとウイルスが観察できる倍率
スリーアールソリューションでは各種倍率のデジタル顕微鏡で、有線ではなくWi-Fiを使用した無線タイプのデジタル顕微鏡も用意しておりますので、ぜひ参考にしてください。
顕微鏡の倍率による見え方の違い
顕微鏡の倍率は、大きくなれば拡大され、小さくなれば縮小されるだけではありません。
倍率が大きくなれば拡大されるのはもちろんですが、視野は狭まり、視界も暗くなる特性があります。
そもそも、顕微鏡の視野は一定ですが、レンズを用いて倍率を変更することで観察対象を拡大しているので、当然視野は狭くなります。
一方で、倍率が変わっても観察対象へ当たる光の量は変わりません。
そのため、顕微鏡の視野が狭くなるとレンズを通る光の量も少なくなるのです。
顕微鏡の倍率の違いにより、視野が狭くなったり、視界が暗くなることを理解しておきましょう。
スリーアールソリューションでは光の反射を抑えたり、4Kを採用した高解像度の顕微鏡3R-MSUSB390を用意しておりますので、倍率によって見え方が異なる点が気になる方は、まずはお問い合わせください。
まとめ:顕微鏡の倍率は観察対象に合わせた選択をしましょう
顕微鏡の倍率にも種類があり、倍率によっては見え方に違いが生じるため、観察対象に合わせた倍率を選択しなければなりません。
本記事では、顕微鏡の倍率の計算方法についてや倍率ごとに観察可能なものを紹介してきました。
顕微鏡を使用した業務を担当している方や、自社で顕微鏡を製品として扱っている企業の担当者は参考にしてください。
万が一、製品選びにお悩みの方や疑問点がある場合はお気軽にスリーアールソリューションまでお問い合わせください。