道路交通法の改正による自転車のヘルメット着用努力義務化と罰則について
私たちの生活において重要な移動手段のひとつとして活躍している自転車ですが、2023年の4月1日からヘルメットの着用が努力義務になりました。
道路交通法の改正により正式にヘルメットの努力義務化が定められたのですが、まだまだ自転車を利用する際のヘルメット着用率は高くありません。
いよいよヘルメットの着用が努力義務化されるとなると、道路交通法の改正内容や違反した場合の罰則について詳しく知りたいと考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、道路交通法の改正に伴う自転車のヘルメット着用の努力義務化について解説するとともに、違反した場合の罰則や、企業担当者に向けてヘルメット着用の努力義務化を普及するためのヒントについて触れています。
道路交通法の改正は、関連する企業のビジネスチャンスになり得る側面も持ち合わせているので、商品開発などにも本記事の内容を参考にしてみてください。
目次
道路交通法改正による自転車のヘルメット着用の努力義務化について
道路交通法の改正に伴い、自転車のヘルメット着用は努力義務化され、努力義務として私たちの生活に密接に関係するようになりました。
改正前の状況の参考として、2020年に自転車活用推進研究会が実施した調査結果では、平均のヘルメットの着用率は11.2%であり、多くの国民が自転車でヘルメットを着用していないことがわかります。
改めて、道路交通法で自転車の利用時にヘルメット着用が努力義務になったことで、今後のヘルメット着用率は少なからず上昇していくのは想像に難くありません。
しかし、今まで自転車でヘルメットの着用をしてこなかった人にとって、今回の道路交通法の改正は大きな話題となるため、まずは道路交通法の改正内容と改正時期について解説していきます。
ぜひ今後、自転車の利用時には道路交通法をより一層意識するようにしましょう。
参考:Cycle Sports「自転車ヘルメットの着用率は全国平均で11.2% 自転車ヘルメット委員会が調査」
改正内容
道路交通法の改正内容のひとつとして、年代や性別などの定めは設けず、自転車を利用するすべての人々を対象に、ヘルメットの着用が努力義務になりました。
改正されたのは道路交通法第63条の11であり、改正の前と後では下記の違いがあります。
改正前 |
児童または幼児を自転車に乗せる際 ヘルメットの着用に努めなければならない |
改正後 |
自転車に乗る全国民はヘルメットの着用に努めなければならない 自転車に乗る他人及び児童または幼児のヘルメット着用に努めなければならない |
改正前では児童または幼児へのヘルメット着用に限定されていたのに対して、改正後は自転車に乗るすべての人に対してヘルメット着用が努力義務になったのがポイントです。
改正時期
今回の道路交通法の改正は2022年4月27日に公布され、2023年4月1日より施行されます。
公布から施行まで約1年間の時間がある中で、各都道府県の警察ではヘルメット着用に向けた普及活動を行ってきました。
しかし、まだまだヘルメットの着用が普及しているとは言えません。
改めて、道路交通法の改正により自転車を利用するすべての人にヘルメットの着用が努力義務になりましたので、事前にしっかり準備をしておくようにしましょう。
自転車に乗る際にヘルメット着用の努力義務化に従わなかった場合の罰則
「もしヘルメットを着用していなかったら罰則があるのではないか」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
道路交通法は法律の1種であるため、前提として法令を遵守しなければなりません。
しかし自転車のヘルメット着用については「努力義務」とされています。
努力義務とはどういうことなのでしょうか。
以下にて、ヘルメット着用義務の違反時の罰則について解説していきます。
基本的には努力義務のため罰則はなし
道路交通法によって定められたヘルメット着用の義務は、あくまで努力義務であるため罰則はありません。
努力義務には強制力や拘束力はなく、あくまでその人の努力に委ねられています。
つまり、自転車に乗る際にヘルメットを着用していないからといって、罰金や懲役などの刑罰があるわけではないのです。
その他にも、自動車の速度違反をしたときのような違反点数などもないため、絶対的な拘束力はないと言えるでしょう。
将来的に罰則が導入される可能性はある
現時点でヘルメット着用の義務に反しても罰則はありませんが、将来的に罰則が導入される可能性は大いにあります。
なぜなら、過去の事例として罰則がなかった道路交通法でも法の整備とともに、罰則が設けられてきたからです。
今でこそ原動機付き自転車と呼ばれる原付バイクはヘルメットの着用が当たり前でしたが、昔は罰則のない努力義務に留まっていました。
努力義務となった年から約10年後に、現代の罰則付きの法律へと変わったのです。
今回の自転車でのヘルメット着用の努力義務化も、原付と同じように、数年後に罰則が導入される可能性があることを覚えておきましょう。
罰則なしではヘルメットの努力義務化が進まないであろう理由
2023年4月1日から道路交通法が改正されヘルメット着用が努力義務化されますが、罰則なしの努力義務ではどうしてもヘルメット着用が普及しないのではと思う方も多いのではないでしょうか。
当然、今まで自転車に乗る際にヘルメットを着用する習慣が無かった部分への道路交通法の改正のため、自転車を利用する人にとっては「不自由だ」と捉えられても仕方ありません。
ヘルメットの着用は自分の身の安全を確保するために必要な点については理解しながらも、やはり罰則がない努力義務では限界があります。
以下にて、努力義務ではヘルメットの着用が普及しないであろう理由を解説していきます。
ヘルメット着用により髪型が崩れるから
ヘルメットを着用すると髪型が崩れるのが理由で、ヘルメットの着用から遠ざかっている人もいます。
髪型を気にするのは若い世代やサラリーマンに多く見られていますが、確かにヘルメットは頭を押さえつけてしまうため、髪型は崩れがちです。
家を出発する前に身支度を済ませ、駅までの移動でヘルメットの着用により髪型が崩れてしまうと、せっかくセットした髪型が台無しになってしまい、外で手直しをしなければ無くなります。
もしヘルメットの非着用に罰則があれば、髪型が崩れてしまうよりも罰則を受ける方が不利益となるため、ヘルメットを着用せざるを得ないでしょう。
ヘルメットを着用しにくい雰囲気があるから
そもそもヘルメットを着用しにくい雰囲気がある点も、ヘルメット着用が普及しない理由になり得ます。
前述したように、道路交通法の改正前はヘルメットを着用しなくても法的に問題無かったため、ヘルメットを着用している人の方が少数派でした。
今回の道路交通法の改正によりヘルメットの着用が努力義務化されたことで、ヘルメットを着用する人は増えてくるでしょう。
しかし、それでもヘルメットを着用する人は少数派である可能性もあり、社会全体としてヘルメットの着用がしにくい雰囲気になっているのではないでしょうか。
罰則がないから
そもそもヘルメット着用は努力義務であり、罰則がないためヘルメットを着用しない人も多いかもしれません。
ヘルメットを着用しないで過ごしてきた改正前の習慣が身についているからです。
確かに、事故などの際はヘルメットを着用していなかったが故に命を落としてしまうリスクが高いのは、データでも示されています。
しかし、自転車に乗っていて事故を起こしてしまった、もしくは事故に遭ってしまった方の方が少ないため、まさか自分が自転車で事故に関与してしまうなどと自分ごととして捉えられている人も少ないはずです。
そのため、罰則がないならヘルメットを着用しなくても問題ないと判断してしまう人が多くなってしまうのも頷けます。
罰則なしでも自転車に乗る際のヘルメット着用の努力義務化を進めるためのヒント
罰則がないからといって、道路交通法の改正によってヘルメットの着用が努力義務化されているのに、ヘルメットを着用しないままで良いのかというと、決してそうではありません。
罰則がなくとも、自分の命を守るためには自転車に乗る際にヘルメットを着用するよう働きかけをしていくべきです。
しかし、いくら努力義務化されたからといって告知をしているだけでは一向にヘルメット着用の普及は進まないでしょう。
ここでは、罰則なしでも自転車に乗る際のヘルメット着用の努力義務化を進めるためのヒントを紹介していきます。
ヘルメット着用による安全性の向上について理解する
ヘルメット着用による安全性の向上について理解してもらうのは非常に重要です。
福岡県警察が公開している資料によると、ヘルメット着用の有無によって自転車事故での致死率に約4倍の差があるとされています。
参照:福岡県警察「全ての自転車利用者のヘルメット着用努力義務化について」
逆に考えるとヘルメットを装着するだけで、自転車事故による致死率は約4分の1に抑えられるということになります。
ヘルメット着用には様々なハードルがあるかもしれませんが、命を落としてしまっては元も子もありません。
そのため、命を守るためにもヘルメット着用が重要な役割を果たしている点は、継続的に伝えていく必要があります。
ヘルメット着用をおしゃれの一部にする
ヘルメット着用をおしゃれの一部にすることで、ヘルメットを着用する人が増えてくれるのではないでしょうか。
ヘルメットを着用したくない人からは、「ヘルメット自体がダサい」といった意見も出ています。
シンプルなデザインで頭部の保護を目的としたヘルメットですが、ヘルメットの着用を普及させるためにはデザインも重要になってきます。
最近では、通常のヘルメットのデザインではなく、普通のキャップのようなデザインをしたヘルメットが登場しており、おしゃれの一部になるような工夫が施されているのです。
ヘルメット非着用で事故に遭った際に賠償額で不利になる
ヘルメット非着用で事故に遭った際には賠償額で不利になる可能性がある点を理解してもらい、ヘルメットを着用してもらうようにしなければなりません。
やはり、道路交通法でヘルメットの着用が努力義務として定められている以上、法律で定められていることに変わりはありません。
罰則こそないものの、万が一、事故などの際に損害賠償の対象となってしまうと努力義務化されているはずのヘルメットの着用が無かったとなると賠償額で不利にる可能性もあります。
そのため、事故で損害賠償の請求を受けた際、不利益を被らないためにもヘルメットを着用するのが賢い選択だと言えます。
まとめ:自転車に乗る際のヘルメットの非着用に罰則はないが努力義務化になった背景の理解が重要
2023年4月1日より、道路交通法の改正により自転車を利用するすべての人はヘルメットの着用が努力義務化されます。
ヘルメットを着用していなくても罰則はありませんが、事故の際に命の危険が大きいことと損害賠償の請求で不利になりやすいことは理解しておかなければなりません。
そもそも、今回の改正の目的は単純にヘルメットを着用してもらうためではなく、自転車での事故から運転者の命を守るためであるといった背景を理解するようにしましょう。
今回の道路交通法の改正に伴って、少なくともヘルメットの需要は多くなるはずです。
スリーアールソリューション社では、様々な製品のOEMにも対応しております。
ヘルメットの製品開発などでヘルメット着用の努力義務化に携わりたい企業の担当者がいらっしゃれば、ぜひ相談ください。
また、道路交通法の改正に関しては、ヘルメット着用以外の内容も含まれており、別記事で解説しているので気になる方はご覧ください。